(sic) (Aug 29,1997, Shibuya Club Quatro, Tokyo)
この前クアトロに来たのはMAARY BLACKだったかな。あのときもゆったり見られてうれしいと思ったんだけど、今回はそれ以上だった。
リッキーは相変わらずアニキで、髪をほとんどプラチナブロンドみたいに染めて(?)短く刈っているせいか、ゲシュタポみたいでちょっと怖い。黒のパンツに白のタンクトップ。前よりもさらに体格が立派になったように見えた。もちろん、ちゃんとエクササイズして鍛え上げた体なんだけど、向こうの人って、年とともにビールが体にしみこんでいて、厚みがどんどん増えていくのよねえ。ちょっとでも油断すると大変なことになりそう。
刺青も増えているのかな。腕にはもう1センチも空きスペースはなかった。背中のほうはまだ肩にひとつくらいだったから、今後増やすとしたらあのあたりかな。
ベースはモヒカンの髪を赤紫に染めた兄ちゃん(あんちゃんと読んでほしい)で、最初から上半身裸。曲の合間に「うぎゃー」と叫ぶのと「FUCK OFF!」と言うのだけがボキャブラリーのすべてという感じ。途中客席から「おまえ、アホやろ〜」という声がかかったときには、思わず笑ってしまった。断っておくけど、この「アホ」は罵倒というのではなくて、なんというか「頭悪そうだけど気はいい奴」に対する親しみの言葉、みたいな雰囲気だったのよね。
ドラマーは最後に前のほうを通ったときに見たら、これまた髪が短くてガタイがよくて、上半身裸で、なんだか趣味(なんの趣味だ!)のバンドみたい、なんて思っちゃったりして。
そういえば、ローディはひとりで、グレイの髪を縛った年配の人だったんだけど、この人、開演前にはTシャツ売り場にいた。ひょっとしたらマネージャー兼ローディなのだろうか。
客のノリは、前3列くらいが縦ノリぴょんぴょんで、途中からローリングしてるのもけっこういたりして、いわゆる暴れ系というか、ライブに行ったら汗かきまくりたい、というタイプ。残りはフロアに出てはいても、みんなじっと立って見てるだけ、私に至ってはなんと椅子に座って首を振っていたというバチ当たりな態勢だった。
なにしろ最初の3曲くらいはものすごく退屈で(アルバム買ってないので初めて聴いた)、寝ちゃうんじゃないかと思ったもので、立つタイミングを失ってしまったのよね。4曲目くらいから「お、いいじゃない(=^^=)」と思える曲が出てきて、あとはいいのと悪いのが交互に出てくる感じ。全体的に見て、3〜4割はすごくよくて、残りはまったく退屈という、かなりばらつきのある内容だった。これはもう曲の質によるものだと思う。
なんてったって、歌が巧いわけじゃないし、演奏が馬鹿テクなわけでもないんだから、曲がよくないと聴く気になれないものね。私はリッキーが弾く、ちょっとウェットなところがあるギターのリフが、ヘヴィーで速い曲の中に巧く混ぜ込まれているような曲が好きなんだけど、今回聴いた曲のほとんどは、ただ、勢いだけで突っ走るような感じで、みんな同じに聞えてしまった。
いちばん気になったのは、リッキー自身が自分がやってる音楽を好きでやってるように見えなかったこと。楽しそうだったり夢中になってたり、必至になってたり、というような感じがまったく感じられなくて、お仕事してます、という雰囲気が「なんだかなあ」という印象。
途中で(これはかなり気に入った曲だったんだけど)、リッキーがギターの調律が気に入らないとかいう感じでギターを放り出し、曲が途中で止まってしまうというシーンがあった。ローディが走り出してきてギターを直し、もう1度はじめからやり直す、というふうになって、それなりにスリリングだったんだけど、あとからきのうも見た友人に「あの演出はきのうもやってた」と聞かされて、「うげえ(・_・)」 となってしまった。
そういうこと、もちろんステージ演出としてはアリだけど、あのバンドが、しかもあのリッキーがやることじゃないと思う。そういう演出とかフェイクとかと、もっとも遠い部分で、馬鹿みたいに一直線にロックやってる男だと思ってたのよね。私の思い違いなのかしら。
ものすごくかっこいい曲もあっただけに、あのライブはあまりにも惜しいと思う。
リッキーには、あせらずに、自分がやりたい方向をもっと見定めて、自分もファンも納得できるようなことをやろーよね、と言いたいな。