SHOH's LIVE REPORTS

Ramones (Oct 16,1995 at Nakano Sun Plaza, Tokyo)


ンプル・イズ・ザ・ベスト!

こんなにわかりやすいロックンロールを聴くのはひさしぶりだ。むずかしいことなんて一切抜きで、体の反応するままに跳びはねてしまう。一体何曲やったんだろう?

正直言って、RAMONES のこと、よく知らない。恐竜のジャケに一目惚れして新譜を買ったのが、彼らのCDを買った最初だったというアリサマだが、そんな不心得者にも彼らはきっちりノンストップで大暴れさせてくれた。もうわかりやすいったら、これ以上わかりやすい音もないくらい。回りを見ると、客のノリも千差万別。頭をぶんぶん振ってる人、両腕を前に突き出してる人、座席の中でモッシュしてる人、エアロビダンスをしてる人。なんか、みんな自分のココロがつかまえた音にカラダをゆだねて、好き勝手に楽しんでる。

ステージの上は右に髪を短く刈ったC.J.、左にギターのジョニー(ミッキー・マウスのTシャツ!)。出てきていきなりくらいに、ステージ両横に置かれたお立ち台にふたりが上がって演奏したときは、うわーっと盛り上がったが、その後1回くらいしかこの演出はなし。せっかく台を用意したのにもったいないような気もするけど、そのへんもこの人達らしいよね。ああいうスタイリッシュな演出って、なんとなく彼らになじまない気がするし。

ジョーイは、黒いTシャツ(MOTORHEAD)、 黒いジーンズ、黒い皮のライダースジャケット、サングラス。足を前後にガッと開いて、マイクを斜めに倒し、そこに覆いかぶさるようにして歌う姿がサマになっている。さぞかし暑いだろうと思うのだが、中盤までジャケットを脱がず、それでいて暑そうな素振りもみせずクールに歌っている。声はちょっとしゃがれ気味で、よく出ているとはいいがたいのだが、なんとも言えず味のあるヴォーカル。

いちばん動きが激しくて元気なのが、若いだけあってC.J.ぴょんぴょん跳びはねながらベースを弾き、ジョーイの歌が終わろうとする頃にマイクの前にやってきて、「1,2,3,4!」と掛け声をかける。とにかくこの掛け声があとからあとから襲いかかってくる感じで、いつまでたっても休憩がない。ふつうのライブだと、曲と曲の間に楽器の交換なんかがあって、ヴォーカルのMCでつないだりするものだけれど、そんなものどこにもない! 終わるかな、と思うと「1,2,3,4!」で次の曲、もう跳べないとへたりかけたところへ追い打ちをかけるように「1,2,3,4!」。いやもうほんとにバテました。多分、ライブ前とライブ後では体重が2キロくらい違ってたんじゃないかなあ。(でも、あとでおいしくビールをいただいてしまったので元の木阿弥だけど)

で、時々ジョーイと交替して歌うのだが、彼が歌うとぴょんぴょん跳ねたくなるタイプで、ジョーイになると独特のうねりのある横揺れ系になるのが興味深い。この混ざり具合が、単調になりそうな彼らのライブにコントラストをつけているのかも。

ドラムのマーキーはとにかくデカイ! まるでおもちゃのドラムセットに座ってるみたいで、動きがみょうにちんまりしている(お相撲さんがノートパソコンを使ってる姿を想像していただくといいかも)。

彼のドラミングは、HM/HRのようなお腹にずんずん響くタイプじゃなくて、後ろからお尻を蹴り上げられるような、自然に体がぴょんぴょんしてしまうノリ。曲の間にベースとギターを交換するときでも、彼だけはドラムを叩き続けていて、最初の30分くらいは休みが彼だけなかったと思う。あの体力は並じゃないね。

意外というか当然というか、聴いていると知ってる曲が多くて、「あ、これもRAMONES だったのか!」なんて今さらながらに気がついた。いろんなバンドのライブでカヴァーされているのを聴いていたから、自然に頭ん中に入っちゃってんだなあ。

それにしても、タイトな演奏だった。たたみかけるような曲構成がとぎれることなく続いていくキモチよさは、一種麻薬のような陶酔感。そんなにうまい、ってバンドではないと思うんだけど、あれはやっぱりライブを何万回も繰り返してきた強さなんでしょう。

ほんとにこれがラストツアーになるんでしょうか? そのへんも関係してか、マーチャンの数が異様に多く、また、それを買おうと押し寄せるファンの波で暴動が起こりそうな会場風景を見ながら、なんとなく寂しくなってしまった。

しかし、あのバンドはホールではなくてクラブで見たかった。


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