SHOH's LIVE REPORTS

Radiohead (June 28,1995 at Club Citta Kawasaki , Kanagawa)


んだかよくわかんなくなっちゃった。

この前の渋公では、椅子のあるホールという制約で身動きもできず、不自由だったと思っていたのだけれど、きょう、いくら暴れても平気なチッタで改めて彼らを見たら、別にそんなに暴れなくてもいいじゃないか、って思ってしまった。

初めのうちはジョニー寄りの前端にいたので、曲が激しい展開になるたびに、目の前で荒れた海のようなうねりが起こり、うーん、やっぱりスタンディングだわね、なんて感心してたんですが、その波がどんどん端のほうまで満ちてきたので危険を感じて後ろに下がったあたりから、ちょっと違う見方をするように。

ソールドアウトを大々的に謳っていたわりには、後ろのほうはけっこうスカスカ。それだけ前のほうの人口密度は密集してたってことなんだけど、そんな中であえて後ろで見ていた人たちというのは、渋公のときと同様、身じろぎもせずにじっと立ち尽くしているのでした。←時々疲れて床に座り込む軟弱者もいたけど

で、私つくづく感じたんですよねえ。座って見たいって。

それはもちろん、立ってると疲れるからじゃなくて(その気がまったくないと言うと嘘になるけど)、どんな場でもどんな轟音の中でも美しい声で歌い上げてしまうトムの性(さが)みたいなものが、聴き手を必然的に縛りつけるんじゃないか、と思ったからなの。どうせなら、その力に思いきり身を任せて、椅子に押しつけられるような形でじーっと聴いてみたい、という気持ちになっちゃったんですねえ。

こんなのって変かしら(^^;)。 ライブのあとで、会場の外に出てくる、汗でぐっしょり濡れた若い子たちを見ていたら、やっぱり違うのかなあ、という気にもなったんですが……

2回目のアンコールで、トムとジョニーだけで歌ったのが、リキッドでもやったという新曲なんでしょうか? 曲名長くて聞きとれなかったんですが、なんて言ってたんでしょう? 日本最後の公演で、アンコールのラストで新曲を、しかもあんなに静かな曲をやるなんて、いかにも彼ららしい趣向ですよね。けっこう長い曲だったと思うんだけど、みんなトムの世界にひきずりこまれたような感じで、しーんと聴き入ってしまいました。ほんと、すごかった。

あと、「CREEP」 で例の女声コーラスが始まったとき、それをねじふせるような形に持っていって、結局大合唱には至らなかったのにはちょっと驚きました。前回の来日のときは、けっこうトムがみんなを煽ってコーラスさせたようなところがあって、それはそれでなかなか感動的ではあったのだけれど、曲の持つ凄みは消滅してしまってた。それが、今回はきちんと自分たちの曲として演奏してたんですよね。

「BLACK STAR」も、渋公で聴いたときよりよかったと思う。前回来日時に聴いたのと同じチッタだった、ってこともあるのでしょうが、なんだか感慨深かったです。あのときに比べてここまで完成されていたのか、って改めて気づいたりして。

きょう聴いた新曲も、きっと次の来日時にはさらに練り上げられているんでしょうね。ライブというと、新譜のプロモーションという意味合いが強い最近の来日公演の中で、来るたびにステージで新曲を披露し、それをしっかり完成させて次のアルバムで聴かせてくれるミュージシャンって、珍しいと思う。そんな彼らがやっぱり好き。


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