Queensryche (March 23,1995 at Club Citta Kawasaki , Kanagawa)
ソールド・アウトのチッタは、ものすごい人、人、人。ふだんだったら演奏が始まったとたんにみんなが前のほうに押し寄せるから、Aブロックの後ろのほうにいればラクラク鑑賞できるのだけれど、そんな甘いものじゃなかった。人がすきまなく立ち並び、息も苦しいくらい。腕を振り上げようとすれば隣の人とぶつかるし……。けっこう体力的にはキツイ状況でした。
でも、それだけに観客のテンションはものすごく高くて、ライブそのものはそれほどメタル然としたものじゃなかったにもかかわらず、ステージとの一体感がひしひしと感じられたライブでした。「EMPIRE」でジェフの歌声にかぶせて客が「エンパイア!」と叫ぶところなんて、男性の声が多かったせいか、ものすごく決まってゾクゾクしちゃった。
さて、肝心の中身のほうですが、いやあほんとに驚きました。元々芝居っ気の強い人だとは思ってたけど、ジェフってほんとに役者なのねえ。
ステージ奥のふたつのスクリーンに救急車で運ばれるジェフの姿が写り、やがて「約束の地」らしき砂漠に移動したかと思うと、砂丘をころげ落ちたり砂を飲んだりして、「I AM I」に入っていくというオープニングは、とてもドラマチック。
ジェフは髪を短くして成功ですね。長いときは気になっていた「淋しさ」が気にならなくなったし、髭も似合ってて、もうウルトラマンとは呼べない感じです。まるで映画俳優みたい。上映中の「レオン」に出てくるジャン・レノにちょっと似てるかも。
さて、ステージに登場してきたジェフはスクリーンに映っていたのと同じ黒のスーツ姿で、なんて呼ぶんでしたっけ、マドンナなんかがよく使っている口元のところにもってくるタイプのマイクを使って歌いながら、ステージを動き回ります。
彼の周囲には記者2人とカメラマンがつきまとい、取材をしようとしているパフォーマンスが繰り広げられます。この記者のひとりは女性で、あとでもう1度看護婦になって登場しますが、ライブ終了後にはステージの片付けに出てきていましたからローディなんですね。ちゃんと出演料は別に払われているのだろうか? あとのふたりは日本人で、これはチッタかウドーの関係者でしょうか? けっこう楽しそうな仕事です。
で、ジェフのスーツの背中に変な縫い目があるのがずうっと気になっていたのですが、曲が終わるとそれまでつきまとっていた3人が寄ってたかってその縫い目を引っ張り始め、あっという間にジェフはすっ裸、のわけはなくて、上半身裸にひざ上までの黒いぴったりした短パン、黒いソックスに黒い靴、そして黒いサングラスという姿に「ヘンシ〜ン!」。←やっぱりウルトラマンか
なんというかジェフの背開き(魚をさばいたことがないとわからないかな?)という感じで、けっこう笑えました。
前回の来日時に比べると、かなりシェイプアップしたように思いましたが、向こうの人って元々の作りが違うじゃないですか、だから、余分なお腹のでっぱりはないのだけれど、横から見ると体の厚みが50センチくらいある。その体が全身汗でテラテラしているので、なんというかもう、ステージの上を巨大な白いアシカが動いているような気がしてしまいました。
それに引き換え、クリスは相変わらずスリムでかっこいい! 黒いベレー帽に黒いサングラス、シャツもジーンズも黒という姿で、カラフルなギターを持つ姿は実に絵になりますね。
マイケルはちょっと無精ヒゲが気になりましたが、相変わらずの素直そうな笑顔がキュート。彼って、よく見ると女の子みたいな顔をしているんですよね。ヒゲさえなければ「眺めのいい部屋」のヘレナ・ボナム・カーターそっくり、って誰か彼に伝えてくれないかなあ。
ベースのエディー(?)は無愛想だけれど、ファンにピックをあげるときは投げたりしないで、ちゃんと近付いていって手渡ししてあげる丁寧さが好感もてます。これは他のメンバーにも共通で、いわゆるメタル系のバンドの中ではちょっと珍しいくらい礼儀正しい人たちでした。ドラムのスコットも、最後にスティックを客にあげるとき、遠くに投げるようなポーズは見せていたけど、結局は前のほうの人にそっと渡していたもの。
セットは「PROMISED LAND」を中心に、はずせない「OPERATION MINDCRIME 」をはさんで、その他の曲をちりばめた構成だったんですが、ステージングでは大きく3つに分かれていて、ジェフが上記のような上半身裸で口元マイクで歌うセット―――>黒のTシャツに黒い皮ジャンでハンドマイクで歌う中盤―――>上をジージャンに換えてきて、スタンドマイクで歌う後半といった感じ。
黒のTシャツというのが、会場で「カットソー」と呼ばれて売られていたマーチャンダイズ商品なんですが、これ、ジェフやクリスが着ているのを見ると、袖はちょっと長めとはいえ、ごく普通の長袖のTシャツです。とこらが、自分で買って着てみたら、なんと膝まで届くワンピ ースになるほどの大きさ! う〜ん、ほんとにデカイのね、あの人たちって。
MCがあんまりなくて、しかも落ち着いた喋り(ロック系のライブに多い、声をふりしぼって叫ぶようなのじゃない)だったのも印象的でした。静かに話しかけるように「I HAVE ONE QUESTION TO YOU」と話し始め、最後に「DOES ANYBODY BELIEVE IN LOVE?」と低い声で言ってから「I DON'T BELIEVE IN LOVE 」入るところなんて、渋くてかっこよくて痺れてしまった。
看護婦が押す車椅子に乗って出てきて、鏡を見ながら歌うジェフは凄みがありました。あのときのジェフの狂喜の笑みが夢に出てきそうです。