SHOH's LIVE REPORTS

Pulp (Jan 31,1996 at Shibuya On Air East,Tokyo)


やもう驚いた。苦節10年バンドとか聞いてはいたが、私自身はなにしろ"DIFFERENT CLASS" から聴き始め、いまだにこの1枚しか聴いていないという不心得者ゆえ、ついていけるのかどうか不安なものがあったんだけど、とりあえず私が行った日のノリは完璧アイドル・ショー。あれはとても10年間ついてきたファンの集まりという感じではなかった。

ジャーヴィスが出てきた途端の「きゃぁ(*^_^*)! じゃーびすぅ!」という黄色い声。それにこたえるようにクネクネと体をよじりながら髪をかきあげる仕草には、かなりナルちゃん入ってた。一瞬、「イギリスの美川憲一」という言葉が脳裏をよぎる私。

んでも、ライブ始まっちゃったら、最初はクサイと思えたフリもごく自然に受け止められてきて、最後のほうには一生懸命客とコミュニケーションをとろうとしているジャーヴィスに、ものすごく好感いだいてしまった。全体の構成は、多分日英共通だとは思うけど、一生懸命日本語を話そうとしたり、英語のMCもゆっくり話してできるだけ理解してもらおうとしている姿勢がとても気持ちよかった。

「ここでみんなに話しかけてみたいと思う」って言うから、てっきり日本語で何か挨拶するのかと思ったら「THE NEXT SONG IS ……ですこ・にせん」と言ったのにはちとコケたけど。

これに限らず、どの曲にも最初にちょっとした仕掛けがあったのも面白かった。ビールらしき液体を飲んで、「イギリスの強い薬なんだ。これを飲んで10秒たつと、君は変身する……」と言ってから始まったのは何の曲だったかな。

"I SPY" のときは、いきなり水鉄砲のようなおもちゃのピストル出してきたり、低予算でステージになんの飾りもなかった代わりに、そういうちょっとした部分で変化をつけようとしているのが健気だと思った。

あと、ピースマークみたいに両手の指を上げておいてからクネッと前に曲げるポーズを何回かしていたけど、あれは一体どういう意味だったんだろう。

音楽的なことを書くと、ギターなしキーボード2台(+変態バイオリン)という編成の曲があったのにはびっくり。私がふだん聴いてる曲って、ギターがいちばん目立つぞ、っていうのが多いので、なんだか新鮮だったなあ。結局 PULPって、ジャーヴィスの声で成り立ってる部分が大きいから、こういう手もありなのね。

なにしろ右側のギターの人なんて、後ろから見るとほとんど見えなくて、最初のうちは左側の人がひとりでギターとバイオリンやってるのかと思ってしまった。あとで聞いたら座ってたんですって、右側のG。

キーボードの女性は、写真で見るよりずっと可愛くて、客席から声がかかると小さく手を振ったりする仕草もキュート。

"COMMON PEOPLE" で終わるのかと思ってたけど、意外や意外、もう1回出てきてくれて、「日本では初めて演奏するんだ」と言って"BAR ITALIA"をやってくれたのもラッキー!

だって"COMMON PEOPLE"では盛り上がりすぎてて、それで帰れと言われたって酷だよねえ。ああいうしっとりした曲で締めてくれると、とてもしっくりしていいと思う。

というわけで、実に楽しく過ごせた一夜でした。


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