Pretty Maids (Sep 1,2,3,1997, Shinjuku Liquid Room, Tokyo)
不精にも3日分まとめて書いてしまう(^^;)。だって、感想はただひとつなんだもん。
あ〜〜〜〜〜きもちよかった〜〜〜〜〜\(^_^)/。
PRETTY MAIDSの音楽の魅力は、ヘヴィーでいながら疾走感のある演奏にメロディアスな歌メロがのって、どこまでも突っ走るところだと思うんだけど、ひさびさに聴いて、まさにその感を強くした。考えてみると近頃少ないと思う、こういうタイプ。世の中の流れというのもあるし、私自身、けっこう流行に左右されるタイプだったりするのだけれど、どんな時代でも人間が無条件で気持ちよいと感じてしまうものってあるんだと思う。そしてPRETTY MAIDSのライブが、まさにそれ。
しばらくぶりで見るに当たって、いちばん心配だったのは、ロニーの髪だったが、ほとんど変わってなかった。ちょっと短くなったものの(肩にかかるくらい)、ちゃんとヘドバンして振れるくらいあったし、このくらいの短さのほうが、汗で髪のボリュームがなくなったときにも貧相にならず、むしろとってもキュート。前より若く見えるようになったと思う。体形も向こうの人にしては奇跡と思えるくらい変わってなくて、シャツの前をはだけて裸の胸を見せても、こっちがはらはらするような起伏はまったくない。
ま、ここまではミーハーな心配だが、もうひとつの危惧は、喉の弱いロニーが東京公演まで声の調子を保っていられるかどうかだった。
で、こっちも心配は取り越し苦労に終わり、2日目、ちょっと音のバランスが悪くて楽器の音に埋もれてしまうシーンもあるにはあったが、全体を通しては絶好調。中でも最終日のロニーの好調さは、私が今まで見た彼らの来日公演の中では最高だったと思う。彼、バラードでは巧いんだけど、ラウドな曲になると回りの音に負けて音程がふらつくことがあるのだが、この日は最初から最後までしっかりした歌いっぷり。アルバムよりずっとヘヴィーで迫力のあるヴォーカルを聴かせてくれた。
客電が落ちるとステージが青紫の光で照らされる。正面にはアルバム「SPOOKED」のジャケットと同じマーク。床以外はアンプやキーボードまで苔の生えた石のように見えるもので覆われている。何をイメージしているんだろう?
「SPOOKED」の1曲目と同様、SEのイントロから"FREAKSHOW"へと入るオープニングは予想通り。大体があのアルバムを聴いたときから、「今度のライブのオープニングはこれだな」と誰にでもわかってたと思う。
ロニーは1日目は黒の光る素材(すごく風通しが悪そうな生地)の長袖シャツに黒のスパッツ(ゴムみたいな素材)。上も下も汗かいたら気持ち悪そうで、ステージ衣装にはあんまり向いてないと思うんだけど、本人は気に入ってるらしく、下は3日間同じ(うわ、洗濯してるのか(^^;)?)、上は2日目からは前半が素肌に黒(背中側は黒とグレーの縦縞になっていた)のベスト、マイケルのドラムソロをはさんで後半は前日と同じシャツを前ボタン全部はずしてはおってくるというパターンだった。
ハマさんは黒っぽい長袖シャツの腕をまくって黒のパンツ(だったと思う)、それにトレードマークのバンダナをかぶっている。ベースのケンちゃんは黒と白のプリントのシャツに黒の皮パンツ。2日目はなんと黒の短パン姿で、餓鬼大将みたいな姿に私たちは目が点に・・・(^^;)。マイケルは髪を短く切ってしまい、それにベースボールキャップをかぶっているものだから、まるで小学生みたい。サポートのキーボーディストは、今まで一緒に来ていたドミニクではなくて、ヤン・****(忘れてしまった〜)という若くて小柄な人。
"SPOOKED"、"LIVE UNTIL IT HURTS"、"FLY ME OUT"、"TWISTED"、(順不同)と、前半は新譜の曲がめじろ押し。"LIVE UNTIL IT HURTS"の前には、月曜には「きょうは月曜の夜だけど、そんなことかまわずにパーティしようぜ!」というMCが入ってて、火曜は「パーティしようぜ!」だけ。水曜は「きょうは水曜だね。残念ながら日本公演も最後になってしまったけど、パーティしようぜ!」
最終日には新譜からの曲がさらに1曲増えていた。>あれ、あの曲、"NEVER TOO LATE"だったっけ"A LOVE AND A FICTION"だ ったっけ。とにかくポップな曲だったんだけど。
新譜は買ってからあんまり聴き込んでいなかったので心配だったんだけど、こうしてライブでやってもらうと、まるで昔からの曲のようにいきなりなじんでしまう。アルバムで聴いていたときからかっこいいと思っていた"TWISTED" は、ライブで聴いてもやっぱりかっこよかった。"SPOOKED" は、タイトルトラックのわりには印象薄いかなと思ってたんだけど、ライブで聴くと数倍かっこいい!
なによりも、こうして新譜からの曲をたくさんやるというところに、彼らの音楽に対する前向きな姿勢が感じられて、とても気分がよかった。
しかし、立場上無理なマイケルとキーボードの人を除いて、残りの3人は実によく動いてたなあ。特にロニーは右に走り、左に走り、膝まずき、ステージから身を乗り出し、ドラム台に上がって客席を煽りと、もう元気いっぱい。ケンちゃんもハマさんのところに走っていって背中合わせに弾いたり、ファンの子にアピールしたりと、思い切り愛想がいい。
ハマさんはといえば、相変わらずの人のよさそうな笑顔満開で、時々ロニーがそばにいって何かひとこと耳打ちすると、そのたびにおかしくてたまらないというふうに大笑いしてみせる。この二人、ほんとうに仲がよくて、どの曲のときだったかシャウトするロニーと10センチくらいの距離で向かい合い、にこにことロニーの顔をみつめながら、そのシャウトに合わせてギターを弾いてみせたときには、なんだか無性に感激してしまった。
"RED HOT AND HEAVY"で、一緒のマイクで低めの声のコーラスをつける演出も、今回初めのものだったと思うけど曲がひきしまってよかったよね。
新譜がひとしきり続いたあとに出てきた旧譜からの1曲目は、なんと意外なことに"WALK AWAY”。確かに95年のライブでは盛り上がった曲ではあるけれど、あのときは一応新譜からの曲という位置だったし、わりとアコースティックっぽい曲だしで、まさか今回やるとは思っていなかった。おまけにロニーってばコーラスを客席に振るんだから〜。「勇気あるよなあ」と、友人が感心して言っていた・・・無謀というか・・・。 それでもびっくりするくらい客席から声が聞こえたのは、さすがコアなファンが付いているバンドならではよね。
"NIGHTMARE IN THE NEIGBORHOOD"から"COME ON TOUGH, COME ON NASTY"と一緒に歌える曲が続き、客席の興奮度がどんどん上がっていくのを感じる。
ドラムソロをはさんで(このドラムソロも、初日はちょっと変わった構成でいくぶん盛り下がっちゃったんだけど、そこはさすがプロ。翌日からはちゃんと客がのりやすいような構成に替えていた>マイケル)メンバー再登場しての1曲めは"RISE"。(大阪、名古屋に行った友人によると、ここが"DIE WITH YOUR DREAMS"だったらしい)。
で、曲が終わるかとみせて次の曲のイントロが聞こえてくると 客席がクライマックスに達した。"BACK TO BACK"だ! 曲と曲の間にほとんど間を入れず、まるでひとつの曲のように雪崩をうって突進するのが彼らのライブの特長でもあり魅力であるんだけど、これはもうほんとにゾクゾクするほど気持ちがいい。チラホラと見られたワイシャツにネクタイ姿の客もみんな腕を振り上げ、叫んでいる。
興奮さめやらぬステージからハマさん、ケンちゃん、マイケルが去り、汗をふき終えたロニーが語りかける。「次の曲では君たちの助けがいるんだ」
キーボードが"SAVAGE HEART"のイントロを静かに弾き始めた。ロニーは暗いステージの中央でマイクスタンドに両腕をのせ、その腕に顔を埋めるようにして歌い出しを待っている。スリムな体に黒い衣装、スポットライトに金髪が映えて、もうめちゃくちゃかっこいい!
切々と歌い上げるロニー。途中のサビでは客席にマイクスタンドをさし出してしまう。ファンを完璧に信頼しきっている。もちろんファンもその信頼に応える。ここのコーラス、けっこう高い声が必要なので、どうしても女性の声が大きくなってしまうのだけれど、ここの部分は(自分も歌っていながら書くのは図々しいというもんだが)実に美しかった。
それにしてもロニーのこの曲での絶唱は、ほんとに涙ものだった。終わってからの周囲の声でも、「ロニー、歌巧くなったよねえ」という声しきり。ひょっとしてデンマークにもカラオケが出来て、練習してきたんじゃないかなんて。
コーラスというか合唱とくれば、忘れてならないのが「ぷりどん」。私、個人的にはこれはもうPRETTY MAIDSのライブではやってほしくないのだが、でもまあ、あれだけ大勢の人間が大声で歌っている様子を見ると、「やっぱり外せないんだろうなあ」と思う。メンバーも、もうさすがに真面目にやるのはあきちゃったみたいで、なんというか全体のノリが軽い。私はなぜか、大きな温泉旅館で歌謡ショーをやってるみたい、と思ってしまった。ハマさんなんか、富士山の模様の派手な和服着たら似合いそう。なんてったって、この曲での彼のギター、コブシが回ってたんだから。
そういえば、2日目にはロニーが途中のコーラスが入るところで歌をやめてしまい、ベースのケンちゃんだけに歌わせるというシーンがあった。どうしてそんなことになったのかは不明だが、そのあとのロニーとハマさんの笑いっぷりが尋常じゃなくて、あとあとまでずーっと大笑いしてたのは、単なる酔っ払いオヤジのようだったなあ。終わってからロニーがケンちゃんを指差して「UNBELIEVABLE!」とか言ってるし。一体あれはなんだったんだろう?
いずれにしろロニーって、徹底して2枚目キメることができないタイプらしい。バラードでスタンドマイクを両手でつかみ、足を開いてちょっとジョー・エリオットみたいなポーズを決めたりしたときでも、間奏部分でついついおどけてみせちゃう。照れるのか落ち着きがないのか・・・でも、そんなところが彼のいいところなのかも。
本編最後は"LOVE GAMES"。この曲、彼らのレパートリーの中ではかなりポップな曲だと思うんだけど、日本人受けするのか会場での反応はとてもよかった。でも、本編最後にもってくるのはちょっと迫力不足かな。個人的には前みたいに怒涛の5曲メドレーなんてので締めてくれたらうれしかった。
アンコール1曲目は"SIN-DECADE"、これはもう文句なしの選曲、おまけに続けて"FUTURE WORLD"がきたから、またまた会場は興奮のるつぼ。2度目のアンコール1曲目は「ひょっとしてやってくれなかったらどうしよう」と私が内心ひそかに心配していた"YELLOW RAIN"。
この曲、元々が私の好きなメタルの要素を全部持っている。いきなりファンにコーラスを歌わせるという意表をついたオープニングから靜かに歌い上げるバラードへ、そして一転して激しいヘッドバンギングの嵐、さらに疾走感のあるメロディアス・ハードロックへとなだれこみ、キメでは腕を振り上げてシャウトし、間には完璧なまでに日本人の心の琴線をふるわすギターソロ。これ以上気持ちのいい構成が世の中にあるものかという感じだ。体じゅうのツボというツボを「ほら、ここ、ここ、ここ」と次々に押されまくって悶絶しそうになる。
最後の最後はもちろん"RED,HOT AND HEAVY"。みんなで腕を振り上げ、「れっほっえんへヴぃー!」と叫んでいると、こういう音楽が好きでいて本当によかった、という幸福感でいっぱいになる。まさにヘヴィーメタル。
最終日はさらにドラマチックだった。1日目と2日目は"YELLOW RAIN"のあとに、ロニーとハマさんが客席に「リクエストある?」とか聞いたけど、結局最初から決まってた"RED,HOT AND HEAVY"へと入っていた。が、3日目は客席からの「THIN LIZZY」という声に応えたのか、最初から予定していたのか、"ROSALIE" をやってくれちゃったのだ。やっぱり私は、「ぷりどん」よりも彼等が純粋にファンとして楽しんでるふうのこっちのほうがずっと素直に楽しめた。演奏はひさしぶりだったせいか、ちょっと荒かったけどね。でも、さすがPRETTY MAIDSファンだけあって、ほとんどの人が一緒に歌えていたのはうれしかったな。(BON JOVIが横浜で"THE BOYS ARE BACK IN TOWN"をやったときには、まわりじゅう棒立ちでかなり悲しかったものなあ)
3日間のリキッド公演、最初の2日は定員の3分の1くらいの入り、最終日にやっと8割といった感じだった。私は3日ともフロア全体が眺めわたせる位置で見ていたのだけれど、その少ない客のほとんどが、ほんとにPRETTY MAIDSが好き、メタルが好き、という人ばかりだというのが手にとるようにわかった。ロニーが煽るとほとんど全員が手を上げていたし、首振ってたし、歌ってたし、すごく反応がよかった。どのライブでも見かけるような、うしろのほうで腕組みしてしらっと立ってるだけ、という人がほとんどいない。
流行ってるバンドじゃないから「よく知らないけど様子を見に行ってみようか」といった客が少なかったからか、不況で財布の紐がかたくなり、よほど行きたいものでないとチケット買わなくなっているからか。そういう意味では、バンドにとっては厳しいけれどやり甲斐のある市場になったんじゃないかという気がする。
今回の来日、興行的には成功とは言えなかったのかもしれない。それでもめげずに、こんなに素晴らしいショウを見せてくれた彼らを誉めてあげたい。次のときには、もっともっと多くの人に見てほしいな。がんばって布教しようっと。
今回見損なった皆さん、ほんとに素晴らしいライブです、次はぜひご一緒しましょう。