Philip Lewis & The Liberators (July 24,1999, Club Citta Kawasaki, Kawasaki)
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ひさしぶりにいいライヴを見た気がした。先週の悪夢のBURNING RAINのあとだったから余計にそう感じたのかも。
元 LA GUNSのヴォーカリスト、フィリップ・ルイスと元 FASTER PUSHY CAT のギタリスト、ブレント・マスカットが参加しているバンドの初来日公演だった。ケリー・ニケルスが来るという噂を聞いて行く気になったのだが、彼は出国できなかったとかで不参加。
PHIL LEWIS 名義の「MORE PURPLE THAN BLACK」というアルバムを米国 DEADLINEレーベルから出していたそうだが、未聴だったので、どんな感じのライヴになるのか見当もつかない状態で臨んだ。日本に遊びに来て、ちょっと昔の曲をやってお小遣いをかせいで、みたいな内容なのかなあ、でもまあフィルの歌は好きだし、昔の LA GUNSの曲も好きだから、それでもいいや、程度の気分だったのだが、見事に裏切られた。
もちろん LA GUNSの曲も何曲かやって、それはそれで盛り上がったのだが、ほとんどは今のバンドの曲、中には次のアルバム(日本から帰ったらLAでレコーディングに入る予定だそう)に入れるつもりだという新曲(これ、間にBEATLESの"Let It Be"をはさみこんだ楽しいアレンジだった)までもやってくれた。どの曲もよく練れていて、初めて聴いても100%楽しめるパフォーマンスだった。本国でどのくらいライヴをしているのか知らないが、あれだけタイトにバンドとしてまとまっているとは予想外だった。(その後LAに住む知人に聞いたところ、ハリウッド近辺でかなり頻繁にライヴをしているという話だった)
フィリップとブレント以外は知らない人ばかりだったが、短い金髪をSTINGみたいに刈り込んだベーシスト、カーリーヘアのドラマー、ぴかぴか頭のキーボーディスト兼サクソフォン・プレイヤー、みんな上手だった。特にドラマーは若いがメリハリとパワーのあるプレイで演奏を引き締めていた。
フィリップの歌は相変わらずそんなに上手というのではないのだが、なんとも表現しにくい魅力がある。声そのものの魅力もあるのだろうが、それ以上に彼のカリスマ性というのもが大きいと思う。立ち居振舞いのすべてがロックスター。ちょっとした手の動き、一瞬の微笑みだけでオーディエンスの目を自然に惹きつけてしまう物を持っている。外見もほとんど変わっていない。40をとうに過ぎていると思われる彼の年齢を考えると奇跡的とも言える。最初は遠目に見ているせいかと思ったのだが、間近に見ても若いので驚いた。赤紫のレースのシャツの前をはだけ、細身のベルボトムをはいた姿がちゃんと似合うなんて、どこかの誰かさん(複数)にも見習ってほしい(^^;)。
相変わらず女性ファンをキャアキャア言わせるような媚態も随所に見せ、これが決してわざとらしくもいやらしくもないのは天性のものだからなのだろう。それと同時に、 LA GUNS 時代は女の子っぽい雰囲気が強調されていたのが、彼よりもっとお人形みたいなブレントが隣りにいるせいか、バンドリーダーとしての自覚がなせるわざか、真剣にギターを弾く横顔に男くささも感じたりもした。でも、彼はやっぱりギターを持たずにマイクに向かってくれたほうが100倍もかっこいい(=^^=)。
ブレントは髪が肩くらいまでに短くなってはいたものの、これまたほとんど変わっていず、キャラクターも天然ボケというのか、なんともほのぼのした雰囲気を醸し出していてGOOD。ピョンピョン飛びながらギターを弾いている姿はあやつり人形みたい。日本語がとても上手で、MCでもかなり複雑な事を言ったりしていたが、途中でなんと日本語の歌詞の歌を歌った。歌う前に「僕の歌はへたくそですが、一生懸命やりますのでぜひ聴いてください」(全部日本語)と断っていただけあって、確かに上手ではなかったし、歌詞の内容もけっこう甘々なラヴソングだったので、聴いててちょっと恥ずかしかった。後半、歌詞が英語になってほっとしたのは私だけではなかったろう。
宣伝があまりされていなかったせいか、1000人は入るクラブチッタに100人程度の聴衆。いつもだったらオールスタンディングのフロアなのだが、それではあまりに空間が目立ちすぎるので、丸テーブルと椅子が6〜8組くらい出ていて、後方では座って見る客が多かった。
それにも関わらず、フィリップを始めとして、決してがっかりしたり、ふてくされたりした様子を見せず、全員がとても楽しそうにはりきってプレイしてくれていたのが好印象だった。昔雑誌でフィリップは若い頃からとても苦労してきたという記事を読んだことがあるが、その後も苦労は続いているようだから、もう何があっても動じないようになっているんだろうな。好きな音楽さえやっていられればハッピー、というような。
ライヴ終了後、全員がロビーに現れ、彼らのCDとTシャツを買った人たちにサインをするというサービスもあった。フィリップなどは女性ファン全員とハグするサービスぶり。他のメンバーもとてもフレンドリーで感じのいい人ばかりだった。私の前の人のとき、ベーシストが持っていた缶ビールをこぼしてしまい、机の上がビールびたし。その人がサインをしてもらっていたライナーもびしょ濡れになってしまったのだが、スタッフがあわててティッシュなどでふいているところにキーボーディストがおしぼりタオルを持って登場、丁寧に机の上をふき、ライナーもちゃんと裏表ふいてあげていた。
ドラマーは近くで見るととても若くて純真そう。「素晴らしいプレイでしたね」と言うと、「いい音してた? 僕もそう思った」と素直に喜びを表現していた。さらに「日本に来たの初めてでしょう?」と聞くと、「ううん、2度目」というので、驚いて「え、どのバンドで来たの?」って聞いたら、「1回目はバケーションで来たんだ」(^^;)。
最後になったが、前座についた日本のバンド BEFORE CHRIST BUTTERFLY もよかった。チラシの写真がヴィジュアル系のヘア・メイクで極悪な KISS みたいだったので全く期待していなかったのだが、登場してみたら全然違うタイプ。FEAR FACTORY、SLAYER、MARILYN MANSONをミックスしたような音で、しかも上手だった。会場の音自体は THE LIBERATORS のときも含めてあまりよくなかったのだが、それにも関わらずとてもタイトで迫力のある演奏だった。特にドラマーがものすごくパワフルでびっくり。ステージ・パフォーマンスもなかなか考えてあって、左端では背の高いギタリストが高いマイク、右端では坊主刈りのベーシストが背をかがめて低いマイクでコーラスをつけるというような演出もあって、ビジュアル的にも楽しめた。最近は本当に日本のバンドも実力のある人たちが増えているんだなあと実感した次第。