SHOH's LIVE REPORTS

Page/Plant (Feb 6,1996, Budokan, Tokyo)


、思いっきりタカをくくってたぁ。

昔有名だった人たちが一時的に再結成しての来日って、最近多いじゃない。でもって、それはそれなりにヒット曲は多いし、なつかしいし、なごめるしで、とりあえず1回くらい行っても損はない、なんて。 ましてやあのZEPPELINの2人が一緒にやるとなれば、これはもうロックファンとしては見とかないと話に乗り遅れちゃうなんて思ってチケット買ったのよね、正直言って。

ところがっ!

もう1曲目で頭の血管ぶち切れちゃって、あとはもうあれよあれというまに興奮のるつぼ。今まで完全にはわかっていなかった、なぜZEPPELINがいつまでも世界じゅうで愛されているのか、その理由が今頃になってようやく体で理解できた。

あの人たちは音楽をやってるんじゃなくて、音楽を生きているんだ、って。

やってる曲はほとんど昔の曲なのに、まったく同じものはひとつとしてない。もちろんそれは、ジミーの指が動かなくなったからとか、ロバートの声が出なくなったからだという言い方もできるのだろうけど、きょう見て、聴いて、私はそんなふうにはまったく受け取れなかった。

「ああ、そうか、こういう歌い方もできるんだ」「なるほど、あのリフはこういうアレンジにしてもかっこいいんだなあ」

昔何かで、ZEPPELINの曲というのはジミーが作ってきたリフにロバートが歌詞とメロディをみつけてきて完成した、というのを読んだ記憶があって、楽器をやらない私には、どうもピンとこなかったんだけれど、きょうのロバートの歌を聴いていて、なるほどこういうことなのかと、まるで目の前でその作業をまざまざと見せつけられているような気持ちになってしまったの。

ロバートは、ほんとに、信じられないくらいかっこよかった。オープニングの最初の頃、ライトが暗く、ちょっとシルエットのようになって現われたとき、「あら、カヴァデールにそっくり」と驚いたのだけれど、明るくなってもまだカヴァデールに見えるものだからよけいにびっくりしてしまった。で、だんだんと見ていくうちに、ようやくわかった。

カヴァデールがロバートを真似していたのね。それも、音楽的な面だけではなくて、髪型、服装、ステージングなどビジュアル面でまで徹底して。だからこそ、一時ロバートがカヴァデールのことをあんなに非難していたんだ。←私はカヴァデールも好きなので複雑な気分

開演前に流れていたのは、最初から最後までボブ・マーレーのレゲエ。一体どういう関係があるのかいまいち不明だけど、まあ、これから始まるものを考えると、そのへんのロックじゃ荷が重いんだろうなあ。

開演時間の7時に遅れること10分ばかりすると、ステージからお香の匂いが漂ってくる。これはライブの間じゅう焚かれていて、帰るころには着ている服にしみついてしまいそう。

ステージの後ろには抽象画のような絵が描かれたバックドロップ(ライブが始まってライトが当たると、ボロ布が垂れ下がる廃墟みたいな雰囲気にも見える)、ステージの横にはスピーカーが積み重なっているし、ステージの上の天井付近にもスピーカーが全方位型にぶらさがってる。そのせいか、始まってみると武道館とは思えないくらい音がよくて、びっくりしてしまう。まあ、東京ドームに慣れちゃったるせいもあるかもしれないけど。

ロバートの衣装は、ピンクがかったオレンジ色の、ジョーゼットみたいな透ける生地に、光るペーズリー柄の刺繍がしてあるブラウス。袖も見頃もゆったりふわっとしていて、とても華奢に見えて素敵。

大体が、ロックミュージシャンのステージ衣装というのは、Tシャツは論外として、お洒落に見えるブラウスやシャツでも、よく見ると「化繊100%で洗濯機洗いOK。すぐに乾いてアイロン不要」タイプが多いものだけれど、あれは違った。「ドライクリーニングか手洗いでお願いします。アイロンは低音で当て布をしてください」タイプなの。

下は黒の革パンツで、ベルトの端っこをだらりと下げているのが昔と同じでにっこり。ジミーは青緑色のサテンのブラウスに黒のパンツ。こっちはあまり変わり映えしない。

ドラマーもベーシストもキーボードも、あとゲストみたいに出てきてソロ演奏も披露したアイルランド人の民族楽器奏者も、みんな若い。でも、技術はしっかりしていて、安心して聴いていられる。さらには新日本フィル(ロバートはALL JAPAN と紹介していたけど)オーケストラと例のエジプト人楽団が参加して、そりゃもうスケールの大きなあの曲とかこの曲とかを聴かせてくれるものだから、まるでびっくり箱をひっくり返したような楽しさ。

そう、何がつらいって、セットリストが書けないことがつらいなあ。 きのうも行った人によると、曲順が大幅に変わっていたうえに(オープニングもアンコールも違う曲だったそう)、きのうはやらなかった曲が今日は3曲もあったとか。こりゃあ、毎日行かなくちゃだめかもねえ。

ロバートのMCもお茶目。「僕たちのショーは毎日曲が変わるんだ。バックのメンバーも変わるんだ。でもって、僕たちも変わるんだよ。じゃあねGOOD BYE!」と手を振って引っ込もうとしたり、「LADYS AND GENTLEMEN、BOYS AND GIRLS、DOGS AND CATS」と呼びかけてみたり。冗談を言おうとして自分が先に吹いちゃったりと、ほんとに楽しそうにしているのが、見ていて微笑ましかったです。

最後の挨拶のとき、ジミーとしっかり抱き合う姿を見て、観客が「わーっ!」って湧いたら、「お?」というような顔をして見せてから、もう1度ジミーに抱きついてみせたりとか。ほんとに可愛いやつだったなあ。

ひそかに感動したのは、「GOOD EVENING JAPAN」とか「THANK YOU」 とか言うときの声のトーンが実に自然で、なおかつセクシーだったこと。よくいるロックバンドのフロントマンのように、叫んだり、語尾を妙に伸ばしたりしない。声のトーンも抑え気味。それなのになぜ? というくらい魅力がビリビリと伝わってくる。これを「洗練」と言うのだろうか?

あ、これから行く方は、くれぐれも席が遠いからといって双眼鏡を持っていったり、ステージ上のスクリーンに写る映像ばかり見たりしないように。なんてったって、年が年なわけだから、大写しになれば皺もすごい。

でもね、ステージに立つ彼を肉眼で見れば、そこには本当のカリスマ、本物のスターがいる。もう彼の動きを見ているだけで、お酒に酔ったような気分になれちゃうんだから。

アンコールのあと、ステージに投げられた赤い薔薇を拾ってやさしく微笑んだ姿に、「ロバート、あなたは薔薇よりも美しいわ」と心の中で叫んでしまったのは、なにを隠そう私です。

そして、「再結成ものなんて」と馬鹿にしているそこのあなた。あれは、そんな安っぽい言葉でくくれるようなものではなかった。極上の素材を天才肌の料理人が思いきりお金をかけて仕上げた、最高に贅沢な料理だと思う。これを食べなかったら、あなたの味覚は永久に原始人のままかもよ。

SET LIST
1BABE I'M GONNA LEAVE YOU 〜 STAIRWAY TO HEAVEN
2.BRING IT ON HOME
3.HEARTBREAKER
4.THANK YOU
5.GALLOWS POLE
6.HURDY GURDY SOLO
7.NOBODY FAULT BUT MINE
8.GONIG TO CALIFORNIA
9.SINCE I'VE BEEN LOVING YOU
10.DANCING DAYS
11.YALLAH
12.FOUR STICKS
13.EGYPTIAN PHARAOHS
14.IN THE EVENING (incl. CAROUSELAMBRA)
15.KASHMIR
- ENCORE 1 -
16.TANGERINE
17.WHOLE LOTTA LOVE 〜 IN THE LIGHT 〜 BREAK ON THROUGH 〜 DAZED AND CONFUSED
- ENCORE 2 -
18.ROCK AND ROLL


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