Ozzy Osbourne (March 8,1996, Budokan, Tokyo)
いやもう、ほんっとに楽しかった。オジーのライブを見たのは今回が2度目(前回はオジーの引退ツアー)だったんだけど、こんなに無条件に楽しませてくれるミュージシャンは他にいないのではないだろうか。
うまいとか、かっこいいとか、ヘヴィーだとか、バンドやミュージシャンの魅力はいろいろだけれど、オジーのライブって、まず第一に観客がいい、と思う。みんな積極的に「ライブを楽しむぞー!」という意欲にあふれていて、始まる前から盛大なオジー・コールが始まってしまう。演奏中の手拍子も歌も掛け声もフィストバンギングも、すべてが自然で自発的で、ふと気がつくと自分も一緒になってしっかり拳を振り上げている。あれだけの大会場に集まった人すべてにそうさせてしまう、オジーというキャラクターが発するオーラの強烈さを再確認してしまった。
ステージは初め黒い幕で囲まれていて、中のようすはまったくわからない。近頃では珍しく、開演間際までギターの音合わせをしているのが聞こえてくるだけだ。まだ何も始まっていないというのに、アリーナではなにやら歓声が巻き起こっている。なんだろうと2階から覗き込むと、やっぱりいた! 上半身裸になって、タオルで体をこすってるヤツが。 きょうは格別寒い日だったから、風邪でもひかないかと心配してしまったけれど、係員がそばに行って何やら話しかけていたところを見ると、彼が焼き肉ディナーの約束をもらったのだろうか?
そんなシーンを見ていると会場が暗くなって、大歓声が湧き上がる。が、まだ幕は下がったままだ。ステージ両横に下がったスクリーンに映像が写り出す。マドンナのビデオクリップが写されて、「どうして?」と思っていると、なんとそばで踊っている女性がオジーだった。 次はプレスリー。例の白い服を着て踊りながら歌うエルヴィスのアップ。やがてカメラがひいていくと、予想通り、隣に同じ白い服を着たオジーが同じように踊りながら歌っている。 会場の笑い声と歓声が高まる。
スピーチをするクリントン大統領の横で机の下で服を脱いでいるオジー、世界の4大テノールたちと「雨に歌えば」を朗々と歌い上げるオジー、そしてきわめつけはモノクロの画面でジョン、ポール、ジョージの間に立っておそろいのスーツで歌うオジーだった。変な話だけど、みんなが笑っている中で、思わず涙が出そうになってしまった私。だって、想い出の武道館でいきなりジョンの顔がアップになって出てきたんだもの。
やがて、画面はオジーの昔からのビデオクリップをつなげたものに変わる。ランディ・ローズが「CRAZY TRAIN」 でギターを弾くシーンでは、ひときわ大きな拍手が起こる。
そして、黒い幕がさっと落ち、とうとう本物のオジーが登場!
黒いタンクトップに黒のジャージ、黒い運動靴というラフな服装で現われたオジーは、例によってウロウロとステージの上を歩き回り、客席に向かって手をさしのべて煽る。
ドラムのランディ・カステロは、髪を頭に張りつくくらいの短い金髪にしてしまって、まるで別人のようだ。
助っ人ベースのマイケル・アイネスは、薄いブルーのジーンズに白のホッケージャージ。ちりちりの豊かなロングヘアを振り乱し、ステージ上を右に左に走り回り一瞬もじっとしていない。この人って、ALICE IN CHAINS のときも、こんなにワイルドなステージングなの? それにすっごく可愛い。途中で縁が茶色、トップが黒の帽子をかぶるのだが、これがまたよく似合ってた。
注目の新ギタリスト、ジョー・ホームズは、上半身裸(背骨が浮き出すくらい痩せてる)で、下は膝下までの黒っぽい作業パンツ、編み上げブーツというスタイルで、肩までの髪にはゆるくウェーブがかかっていて、ところどころ金色に染めてある。ビデオクリップで見たときは、なかなかの美形だと思ったのだが、きょうは最初から最後まで下を向き、髪で顔を隠してギターを弾いていたので、とうとう確認できずじまい。
ステージは正面の少し高くなったところにドラム台。その両横には、ステージ横のものより小さめのスクリーンがかかっている。スクリーンの手前には小さなスペースがとってあり、ドラム台横の階段から上がれるようになっている。時々そこにジョーが上がり、スクリーンに写る映像の前でギターを弾くという演出も見られた。ステージの後ろは、天井から床まで皺を寄せたような布が緞帳のように下がり、そこに真紅のライトが当たって、まるで赤いベルベットで囲まれた巨大な部屋のよう。とてもゴージャスな雰囲気だ。
1曲目から「PARANOID」で、会場のテンションは一気に全開。私は2階の上のほうだったにも関わらず、回りの人は全員一緒に歌い、叫び、腕を振り上げている。この前同じ武道館で見たPAGE/PLANTも客のノリはよかったと思ったが、これはそんな比ではない。やはり誰でも歌えるメロディ(音域も狭くて歌いやすいというのもあるしね)と、覚えやすい曲調、それに親しみのあるキャラクターというのは強いよねえ。
「I DON'T KNOW」 「FLYING HIGH AGAIN」と立て続けに盛り上げたところへ、少しクールダウンして「GOODBYE TO ROMANCE」。この曲を紹介するときに、ランディ・ローズの名前をあげていたのだが、なんと言っていたのか聞き取れなかった。
4曲目でようやく新譜「OZZIMOSIS」から「PERRY MASON」が演奏される。ここまでは昔の曲ばかりだったせいか、ジョーのギターがほとんど聞こえなかったのだが、さすがにこの曲では前のほうに出てきてソロを弾く場面も。それにしても、ベースとドラムの音はよく聞こえるのに、ギターの音があまり聞こえないという、HM系では珍しい演奏だったのには驚いた。オジーの歌を強調するために音がしぼってあったのか、新人ゆえの遠慮からかわからないけど、物足りなかったのは事実だ。
ザック・ワイルドなんかは、入ったときから自己主張の激しいギターを聴かせてくれていたんだけどなあ。
次の「NO MORE TEARS」 は少しつらかった。実はきょう、オジーは声の調子があまりよくなかったらしく、ここまでの曲でも高音を出す部分にくると声がひっくり返ったりしていたのだが、この曲では高い部分がまったく出ない。ふつう、そういうときってフェイクしてしまうものなのだが、オジーはそんなことまったく気にしないのか、はたまたフェイクができないのか、最後までオリジナル通りに歌った。最後には客席に背中を向け、例のお尻出しポーズ。 まったくのんきなオヤジだなあ。客のほうが気にして、ハラハラしてたというのに。帰りにそばを歩いていたふたり連れの、「オジーってやっぱすげえよなぁ。あれで最後までいっちゃうんだから。さすが帝王だよなぁ」という感想に、深くうなづく私であった。
この次の曲は私が知らない曲。実は「OZZIMOSIS」 を買っていないので、そこからの曲かもしれない。キャッチーなメロディの繰り返しに今風のギターが入って、なかなか楽しめる曲だった。
「I DON'T WANT TO CHANGE THE WORLD」が終わったところで、かんたんなメンバー紹介。「SUICIDE SOLUTION」のラストにはギターソロが少し入る。相変わらずこれといった個性は感じられない。悪くはないのだけれど、弦の上を指がするすると滑りすぎている感じ。ザックの突き刺さるように鋭角的な音が懐かしくなってしまう。
少し引っ込んでいたオジーが登場すると、「BLACK SABBATH の曲が聴きたいかい!?」と叫んで、みんな待ってたサバス・ナンバーが始まる。「IRON MAN」「SWEET LEAF」「CHILDREN OF THE GRAVE」 とおなじみの超有名曲が繰り出され、場内は興奮のるつぼ。お得意の蛙のようなジャンプも飛び出して、オジー絶好調だ。
盛り上がりまくったところにあのギターの音色。そう、待ってましたの「MR.CROWLEY」。この曲を聴かなければ、オジーのライブに来たって気がしないよね(=^^=)。それにしてもなんて美しい曲なんだろう。オジーの声の不調も、もうほとんど気にならない。
曲が終わり、次の曲に行くまでにオジーはステージを端から端まで走っては客席を煽り、なかなか次の曲に入らずにじらしにじらす。そして始まった「WAR PIGS」に引き続いては、オジーの「DO YOU WANNA BE CRAZY?」 という叫びに観客の大歓声がかぶさり、キュイーンというギターの音。
おおっ、出た!「CRAZY TRAIN」!
客席はもう大興奮。しかし、みんなよく歌う。サビのところだけじゃなくて、最初から最後まで、ほとんど全員が歌っているという光景は感動的だ。そしてギターソロ。さすがにランディの弟子だったというだけあって、ここでのジョーのギターソロはなかなかのものだった。ただ、スクリーンにステージの様子と交互にビデオクリップが流れていたもので、ギターソロを弾くジョーの背後にランディの姿が大写しになり、その映像に客席から盛大な拍手と歓声が送られたのには、ちょっとジョーが気の毒な気がしてしまった。
オジーのバンドのギタリストの宿命ではあるけれど、歴代の前任ギタリストと比較され、すでにこの世に存在しないために、超えることが不可能な天才ランディ・ローズの影を背負ってツアーを続けるというのは、ものすごくしんどい事だろうなあ。
曲が終わり、メンバーが引っ込んでも(マイケルはベースを5メートルくらい離れたローディめがけて放り投げ、キャッチさせていた)、客席の興奮は静まらず、すさまじいボリュームのオジー・コールと手拍子、それに足を踏みならす音が武道館を埋めつくす。
アンコール1曲目は「MAMA,I'M COMING HOME」。最近のオジーの曲はあまり真面目に聴いていない私でも、これは体にしみついてしまっているくらいだから、すでにコンサートの定番と化しているようだ。「HOME」と歌うところでは、武道館をゆるがす大合唱が起こった。みんな、すごく楽しそうに歌っている。禁止されているはずのライターの炎があちこちで揺れ、両手を上げて左右に揺らすオジーに合わせてファンも一緒にウェーブを送る。ステージと客席が一体化した幸せな瞬間(=^^=)。
そして最後の最後。これは確か前回私が行った「引退ツアー」のときもラストだった「BARK AT THE MOON」。そりゃもうこれしかないでしょうね。みんなでいっせいに拳を振り上げ、「バカダモーン!」と叫ぶあの楽しさったら(=^^=)バカ。
メンバー全員でステージ前に並び、肩を組んでお辞儀をしたあと、最後まで残っていたオジーは、割れんばかりの拍手と歓声にしばし立ち止まって耳をすますポーズを見せたあと、床にライトを埋め込んだ花道を通ってステージから去って行った。
キャラクターグッズは、半袖Tシャツが3種類(「OZZMOSIS」のジャケット柄、青にオジーのシルエット、白地にいたずら描きみたいなイラストがちりばめてあるもの)、長袖1種類(黒で袖にロゴ入り)にホッケー・ジャージ(黒地に白の横縞とロゴ)が1種類(なんと1万4千円!)、帽子、ペンダント。
ステージで曲と曲の間にスクリーンに写った、オジーをイラスト化したキャラクターが可愛かったので、イラスト付きのを買おうかと迷ったのだけれど、Tシャツのほうはイラストの顔部分だけがプリントされていて、いまいち可愛くないので断念。
しかし、ここで白のTシャツを買っておけば、あとで思わぬ役に立ったのだが……このときの私には知るよしもなかったのだった(・_・)。
興奮さめやらず、誰か話ができる知ってる人はいないかなあ、と思いながら歩いていると、目の前に髪の長い小柄な外人が立ち止まった。別の日本人男性が来て「LET'S WAIT HERE」 と声をかける。そこへ、さらさらのロングヘアに鼻ピアスの背の高い若者とモジャモジャヘアのプロレスラーみたいな男、それに髪を後ろで結んだ地味な男性が合流してきた。私と30センチも離れていない距離だ。
「あれ……ひょっとしてあれは……?」
茫然として横を見ると、同じように茫然としたようすの知らない女性が、「CATHEDRAL、ですよね?」と私に話しかける。
「そーですよねえ。わ、どうしよう! サインしてもらえるもの、何も持っていない」←Tシャツ買っておけばよかった(;_;)
茫然―>惑乱―>興奮しているうちに、気づいた人がどんどん押し寄せてきて回りを取り囲み、押された私はなんとリー・ドリアンの目の前に出ていた。思わず手を出し、握手をしてしまう。 じっとみつめてくれた彼の表情は、ゆうべのライブとはうってかわってジェントルでおだやか。写真で見るよりずーっと素敵。
暗いリキッドルームのステージでは、とうとう顔がはっきり見えなかったレオも、すぐそこにいる。可愛い! サインをもらって私の横を通り抜けようとした女の子の袖を思わずつかみ、「すみません、ペン貸してください」とすがる私。 レオに「サインしていただけませんか?」と声を掛け、人に借りていた本のトビラにサインしてもらう。ううぅ、明日同じ本を買って返さなければ。でも、「どうもありがとう」と言ったときに、にっこりしてくれたレオの笑顔が見られたんだから、本1冊なんて安いものだわ。
きのうのライブでもサバスの曲をやってたくらいだから、きっと今日の武道館にも来るだろうとは思っていたが、まさか目の前で見ることができると思っていなかったので、舞い上がってしまった。せめて「きのうのライブ最高でした」くらいは言ってあげればよかったと、後悔しても後の祭り。とっさに気のきいたセリフが英語で言えない自分が情けない。
でも、いいライブを見たあとに、さらにいい思いができて、とても幸せな週末の夜でした。
1.INTRO (VIDEO)
2.PARANOID
3.I DON'T KNOW
4.FRYING HIGH AGAIN
5.GOODBYE TO ROMANCE
6.PERRY MASON
7.NO MORE TEARS
8.I JUST WANT YOU
9.I DON'T WANT TO CHANGE THE WORLD
10.SUICIDE SOLUTION〜JOE HOLMS GUITAR SOLO
11.BLACK SABBATH MEDLEY : IRON MAN〜SWEET LEAF〜CHILDREN OF THE GRAVE
12.MR.CROWLEY
13.WAR PIGS
14.CRAZY TRAIN
-ENCORE-
15.MAMA I'M COMING HOME
16.BARK AT THE MOON