SHOH's LIVE REPORTS

Marilyn Manson (March 11th,1997 at Shibuya Club Quatro,Tokyo)


やもうめっちゃくちゃよかったです!

見せかけのこけおどしなんかじゃなくて、しっかりした演奏力とよく練られた曲と、見るものの目を引きつけて離さないカリスマ性がありました。世紀末の DOORS と呼んでしまおう。

お客さんたちも、ここしばらく見たことがないくらい変な人が多かった。コスプレ(と言うのかな?)のお兄さんもいて、ビデオクリップに出てくるのと同じかっこして、例の歯にはめるあの金属製の器具まで首から下げてました。その連れの人は長い青い髪で、片方だけ金色にした髪を角みたいにとがらせて立てるし。でも、服装が過激なわりには知り合いに会って「あ、こんにちわあ」なんて可愛い声で挨拶してた。

胸を大きく開けたビスチェ姿のお姉さんもいて、その胸の両方に刺青がしてあったのにも驚きました。気合入ってたなあ。

いつもクアトロのライブで見る子たちって、渋谷系の若い子が多いのだけれど、きょうはいわゆるビジュアル系の方たちも多くて、なんともいえないバラエティに富んだ構成でした。ほんとにソールドアウトで、会場外には「余ったチケット売ってくださ〜い」の人たちも。中もぎゅうぎゅう詰めで、後ろのほうにいたので押されはしませんでしたが、音楽に合わせて軽く体を動かすのが精一杯という状態でした。

中世のゴシック音楽のようなSEがしばらく流れたあとに場内が暗くなると、叫び声が上がります。前のほうで聞こえる声は、歓声というよりは悲鳴に近くて、まさに阿鼻叫喚の地獄図という感じ。

やがて現われたメンバーは、全員が顔を白く塗った死人メイク。両端に立ったギターとベースの人たちは髪はメデューサのようだったけど、服装はわりと普通。右端のギターの人の後ろに、軍服を着て短く立ったオレンジの髪の人形が立っていて、それが時々ゆらゆらと動いているなあ、天井からつるしているのかしら、なんて思っていたら、実は人間で、途中からめちゃくちゃ暴れたしたのにはびっくり。この人はキーボードを弾いたり、何て言うのかしら肩から下げた鍵盤楽器を弾いたり、ティンバレスを叩いたりと大活躍。

ヴォーカルの人はビデオクリップや写真とまったく同じ。真っ赤な唇を大きく開けて歯をむき出しては客を威嚇している。手首から二の腕までの黒い網手袋をはめていて、上半身は裸、胃のあたりから白い包帯みたいに見える下着を着ていて、その上から茶色いガーターをぴっちりとはめ、黒いストッキングをそれで吊っている。下半身はよく見えないけど、ストッキングの下の太ももはむきだしの素肌みたい。あれを最前で見た人はかなり強烈だったんじゃないかしら。

MCはほとんどなし。1回だけ「ジャパ〜〜ン!」と叫んだだけじゃないかな。もうとにかくどんどん曲から曲へとたたみかけていく、それがたまらなく快感。なにしろ、アルバムを聴いてていちばん魅力的だったリズム感がとにかく本物なのだ。ドラマーの姿が、私がいたところから全然見えなかったのが残念。

ドラマーとベーシストと、あとギターすらもリズム楽器と化してしまい、そこに鍵盤が不思議な色をつけている。ヴォーカルはほとんど叫びなんだけど、それが決して不快に聞こえないのは声も楽器の一部になってしまってるから? この人たちにメロディは必要ないのかもしれない。そういえば、歌いながらマイクを持った手で胸をドンドンと叩くのだけれど、その音すらも曲の一部になっていたもの。

"THE BEAUTIFUL PEOPLE"のかっこよさはもちろんだったんだけど、"SWEET DREAMS"にも感激。しかし、まさかあの曲で大合唱になるとは思わなかったぞ。ヴォーカルがマイクを客にふると、すかさず返すタイミングもばっちりで、興味本位で来たんんじゃなくて、ちゃんとアルバムを聴きこんできたというのがよーくわかりました。すごいよね。

アンコールは2回。1回目は"MISTER SUPERSTAR"。血を吐くような入魂のヴォーカルに暗いギターの音と美しい鍵盤の音がかぶさり、地獄と天国が一緒になったような、なんともいえない世界にひきずりこまれてしまう。このあたりの表現力は生半可じゃない。「WE HATE LOVE! WE LOVE HATE!」 の掛け声に客席が応えて一緒に叫ぶと、次の曲が始まった。

最後のアンコールでは、真っ暗なステージに赤いライトがマイクスタンドにだけ当たり、そのマイクには赤い花(?)のレイのようなものがかかっている。白いストロボがたかれると、人工雪が降りしきっているのが見えた。まるで蜷川幸雄の芝居を見ているかのようなドラマチックな演出だ。歌っているヴォーカルの姿は最後まで見えず、ただひたすら赤い花と白く舞う雪だけが目に焼き付けられた。そして、曲が終わり、女性の声のSEが繰り返されると、赤い花トマイクだけがステージにぽつんととり残され、ステージには誰もいなくなった。

ほんとに素晴らしいライブでした。演劇的要素が大きいことは大きいし、それが魅力でもあるんだけど、それより何より音楽的にものすごく新しくて、しかもすぐれた才能をもつ連中に出会えたという感じ。ひさびさに「これは本物だ」という感触を得て興奮した夜でした。


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