Leslie Keye (March 22,1997, Shinjuku Dubliners, Tokyo)
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新新宿のアイリッシュパブ、ダブリナーズでWILDE OSCARSのヴォーカリスト兼ギタリストであるレズリー・キィのプロモーションライブが行われると聞いて、行ってきました。8時からと9時半からの2回、どちらも30分程度のライブでした。
オレンジっぽい黄色のパーカー(2回目にはアイリッシュカラーである緑色の半袖Tシャツに着替えてきた)を着たレズリーは、アルバムジャケットの写真よりずっと若く、純朴な少年のように見える。はにかんだような笑顔がとっても素直でチャーミング。
開演前に座ってスタッフとビールを飲んでいるところに近づき、サインをもらおうと声をかけると、ぴょこんと立ち上がって、しっかり握手をしてくれた。サインを頼むと、私の名前を聞いて 「TO SHOH THANKS 22/3/97!! LESLIE」と書いてくれた。でも、これってよく見ると、いわゆるサインの部分が凄く少ないような。
このとき、思ってもみなかったニュースを聞いてしまう。
「あなたのアルバム、すごく気に入ってます」
「どうもありがとう。どこで知ったの?」
「HMVでみかけて買ったの。元々アイリッシュの音楽が好きだったから。U2とかHOTHOUSE FLOWERSとか」
「HOTHOUSE FLOWERSがアルバム出すの、知ってる?」
「えっ! ほんと?! いつ出るの?」←頭の中真っ白(^^;)
「うん。また一緒にやることになったみたいだよ。確か9月あたりだって」
「うぅぅぅ。教えてくれてありがとう」
「どういたしまして。君を幸せにできてよかったよ」
なんか、よく考えるとレズリーにはすごく失礼なことをしてしまったとけど、全然気にしないで気持ちよく接してくれた。いい青年だ。
さて、お待ちかねのライブが始まった。1回目は7曲、2回目はアンコールも入れて10曲もやってくれたのだが、なんと全部曲が違った。意外なことにアルバム「FISH」からの曲は半分以下。そういえばライナーにはレズリーひとりでのプロジェクトではアコースティックな部分を強調した別のタイプの曲が多いようなことが書いてあったが、それにしてもアルバムのプロモで来日してるのに、これまたずいぶん商売っ気のないこと。
アルバムの曲は女性ヴォーカルの効果がすごく大きくて、ひとりで歌うのはつらいだろうし、ギター1本じゃ再現しづらいのかもしれない。でも、これこそアコースティック向きだと思って楽しみにしていた"MOMENT OF VALUE"をやらなかったのには、ちょっとがっかり。
でもねえ、やらなかった理由もわかるような気がする。なにしろうるさい! パブだからうるさいのは普通だし、レズリー目当てに来てる人は数えるほどしかいないから仕方がないとは言えるけど、それにしたってマナーってものがあるんじゃないだろうか。
音楽に負けまいとして大声を張り上げて喋る人ばかりなものだから、店内がワンワンしてる。2回目のときなんて、奥のほうで奇声を発する酔っ払いグループまでいたりして・・・それでも、いやな顔はまったく見せずに淡々と歌い続けるレズリー。よく路上やパブで鍛えられたとかいう話を聴くけれど、確かにこういう時代を過ごしてきたミュジシャンというのは強いだろうな。
とまあ、まわりの客にはかなり頭にきながら聴いていたのだが、そんなこと吹き飛ばすくらいに感動的だったのが1回目にやってくれた"LOVE SONG"。 激しい感情を静かに爆発させるような歌い方に、心が吸い取られるようで、ほとんど泣きそうになった。このときばかりは周囲の喧騒はバリヤーの外にはじきだされてしまい、この世には私とレズリーだけみたいな感じ。
1回目最後の"ISOLATION" もかっこよかった。はりきりすぎてギターの弦を切ってしまい、自分でもおかしくて吹き出しながら弾いているレズリーと一緒に私までニコニコしてしまった。この曲、WILDE OSCARSでショウをするときには、客にも歌わせる曲になるんじゃないかな。
2回目のほうは最後に大好きな"DON'T WORRY"。 これアルバムでは女性ヴォーカルが効果的に使われているから、今回はやらないだろうと思ってたので意外だったし、うれしかった。掛け合いみたいなところもひとりで歌って、ちょっと大変そうではあったけど、すごくいい感じのアレンジ。
2回目本編が終わると客席から「ONE MORE! ONE MORE!」 の掛け声と拍手が上がり、すぐにレズリー登場。←というか、マイクの横に席があってそこにいるから、すぐに出ないとかっこがつかない(^^;)
短い曲のあと、WATERBOYS の曲だと言って"LOVE WILL WIN" というフレーズの入る曲(なんという曲なんだろうなあ)をやってくれた。途中からいろんな曲のメドレーがはさまれていたんだけど、U2の"I WILL FOLLOW" と"WHERE THE STREETS HAVE NO NAME" が入っていたのには大感激。
客にはアイリッシュが多かったはずだが、ここでは私以外だれも反応せず。次の"COUNTRY ROAD"(ジョン・デンバーでしたっけ?)で大合唱になったのはヘンだった。でもまあ、この日はじめて客席との一体感が味わえて、レズリーもようやくほっとしたかもしれない。
ライブのあいだ、私はずっと立って踊ってたし、私の友人たちは靴を縫いで椅子の上に立ち上がり、衝立ごしに手を振ったりしていた。前のほうの椅子席の客は座って静かに聴いてるだけだし、立って聴いている客も微動だにしないでいる人ばかり。だから、私たちのところだけ異様に動きが目立ったんだと思う。最初はマイクスタンドの正面に向かって歌っていたレズリーが、だんだん体の向きをこっちに視線を固定して歌うようになってしまった。
ライブが終わったあと、アイリッシュのおじさまが、「すごくのって踊ってたねえ。ダンスが好きなんだね」と声をかけてきた。彼が座ってるすぐうしろでずっと立って踊っていたもので、ライブの間も何度も振り返って見られてしまったのだ。
「ダンスが好きなんじゃなくて、彼の歌が好きなの」と言うと、「じゃあ、彼にそう言いにいこう。友達なんだ」(ほんとか?)と言って、いきなり私の腕を引っ張って前方に。
スタッフと話をしているレズリーに「おい、レズリー!」。ありゃ、ほんとに友達だったのね。 「この人、君の歌が凄く気に入ったみたいだぞ」。レズリーもすぐさま握手の手をさしのべてくれ、「うん、ずっと踊ってくれてたよね。どうもありがとう」と言ってくれた。やっぱり誰も耳を傾けていないかのように見えた中で、曲に反応してくれる人間がいたのがうれしかったんだろうなあ。少しでも応援できてよかった。
初めて聴いたのにすっかりハマってアルバムをその場で買い、サインもしてもらった友人たちと、「来てよかったねえ」と言い合いながら気持ちよく帰りました。
今年じゅうにWILEDE OSCARS で来日してくれることを祈っています。