SHOH's LIVE REPORTS

King's Call(Tribute for Phil Lynott) (Jan 4,1996, Dublin)


Part 9

動がさめやらぬうちに、次なるお楽しみが!

DEF LEPPARD のジョー・エリオットが登場して、サイクシーと抱き合う。

ジョーは「WHEN LOVE & HATE COLLIDE」のビデオクリップで着ていた黒のヘンリーネック・シャツに色の褪せたブルージーンズ、白い運動靴。ものすごくでかい! 彼と並ぶとサイクシーが華奢に見えてしまうほど。

すさまじい歓声の中、きどらない感じで「HELLO!」と挨拶し、ほんの少しの間タイミングをはかっていたかと思うと、一気に「SUICIDE」に!

ステージ両横の床から大きな火花と炎が上がる! 海外のライブビデオを見るたびにうらやましく思っていたけど、とうとうこの目で見られた! う〜ん、も〜最高!

ジョーは、スタンドマイクを振り回してステージを所狭しと跳ね回り、ちょっとジョン・ボンジョヴィ入ってる。しかし、やっぱり華があるなあ。さすがにアリーナクラスのバンドのフロントマン。ついついスコットを見るのを忘れて、ジョーばかり見てしまう。

でも、こうして華やかなヴォーカリストがいてくれると、スコットとサイクシーがギターに専念できて、ステージ前でふたり並んでポーズを決めることもできるし、いかにもツインギターのTHIN LIZZY!という感じになるのがうれしい。

「SUICIDE」が終わると、ジョーの紹介で同じLEPPSのベーシスト、リック・サベージが出てきて、マルコと交替した。マルコはにこにこと手を振りながら退場。

サブは黒っぽいシャツの裾を外に出し、黒いジーンズ。遠目のせいか日本のTVで見たときより細く見えて、昔とまったく変わっていないようだ。

サヴが加わっての次なる曲は、なんと「COWBOY SONG」!

ここで、さまざまな思惑が私の頭の中をかけめぐる。この曲が来るということは、当然次はあの曲で、となるとあの曲もジョーが歌うわけで、ということは、あの曲を歌うと思っていたジョン・ボンジョヴィはひょっとして来ない?

と悩みながらも、ジョーの歌う「COWBOY SONG」 がすてきなもので、「え〜い、もうなるようになれ!」と開き直ってしまう私なのであった。そして、例の「カイヨリカ」では、客席から物凄い歓声が……。

間奏のところで「CLAP YOUR HANDS FOR PHILO!!」とジョーが煽ると、アリーナいっぱいの腕、腕、腕。1万4千本の腕が、まるでひとつの生き物であるかのように動く。

すごい、すごい、すごい!

こんなにすごい光景って今までの人生で見たことがあったかしら? どんなにノリのいいコンサートでも、ここまで会場が一体化した状態って見たことがないような気がする。

回りから押し寄せる熱気と、このあとに来るものへの期待とで、背筋がぞくぞくっとなり、胸が苦しくなってくる、息が詰まる。早く始まってくれないと、心臓が止まるかもしれない……と思っているうちに、それは来た。

「THE BOYS ARE BACK IN TOWN」だっ!

私の近くに座っている人もみんな、まるで狂ったかのように首を振り、手を叩き、そして一緒に歌っている。胸が熱くなってくる。涙が出てくる。ステージで誰が歌っているのかなんて、もうほとんどわかんなくなっている。あの曲をフィルの故郷で、彼を心から愛する数千の人々と一緒に歌っている。その幸福感で体の中がいっぱいになった感じ。ほんとうにここまで来てよかった。


つづく

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