SHOH's LIVE REPORTS

In Flames, The Haunted, Armagedon
( November 16, 2000, Blitz, Akasaka, Tokyo )



I N FLAMES は3度目の来日だということでしたが、私は初めてのライヴ体験でした。あまりにも人気が急上昇しすぎの感があって、ちょっと引いてしまってたんですよね。今回は WITCHERY の長身ギタリスト、イェンセンの別バンド THE HAUNTED が前座に付くと聞いたので行くことにしました。赤坂ブリッツの2階席が買えると知ったことも購買を決めるきっかけとなりましたが。

公演間近になってから、さらに ARMAGEDON も前座に付くと発表され、「1階のスタンディングじゃなくてよかった」 と思った軟弱者は私ひとりではなかったのではないでしょうか。まあ、1枚のチケットでいくつものバンド、それも初来日のバンドを見られるというのはありがたいことではあります。バンドにとってもいいプロモーションになるしね。こういう企画は今後どんどん増やしてほしいな。ただし、前もって教えてもらえるともっとありがたい(^^;)。

開演近くに着いたのであせって入場しようとしていたら、入口でなにやらいつもと違うものが配られています。本能的に手を出して受け取ると、ARMAGEDDON のプロモ用カセット。もらえてよかった。しかし ARMAGEDON のテープなのにクリスがいきなり 「ハ〜イ! ARCH ENEMY のクリス・アモットだよ」 と言うのにはコケました。

席に着き、階下のフロアを眺めると、いるいる、メタルTシャツを着た、いかにも 「暴れるぞ〜」 という意欲満々の方々が。しかも若い。下に行かなくてよかった。

まずは ARMAGEDON 登場。新人とは言いながらも日本では人気のあるクリストファー・アモットがいますので、歓声の大きさはベテラン・バンド並みです。

これは3バンドすべてに共通していたのですが、メンバーがみんな背が高く、しかも黒の上下だったの非常にステージ映えしました。ARMAGEDON のヴォーカリストが出てきて、ガッと足を大きく開いてステージ中央に立ったときは 「おお!」 と思ってしまいました。そのわりには声があまりタフではなく、音程も不安定(微妙にうわずる)だったのが残念でしたが。ステージ慣れしていないのと、当然あがっていたのでしょうが、家に帰ってもらったテープを聞いたら、やっぱりちょっと物足りない感じでした。でもまあ、彼がクリスのインスピレーションをかきたてて今回のようなアルバムに仕上がったそうですから(テープの中でクリスがそう言ってました)、しばらくは忍耐して上達を待つことにしましょう。

クリスはいつもと同じ右側に立って、いつもと同様、見た目にはちっとも派手じゃないんだけどその実すごく派手なパフォーマンスを聴かせてくれていました。ベーシストは遠目にはジョン・サイクス風で、カールのかかった長い金髪をグルグルと振り回しながら弾く姿はなかなかの見物。しかも巧い! でも、私がいちばん気に入ったのはドラマー。アルバムよりずっといい音出していました。ドラムって、リズムがメインだと思っていたんですが、音色もあるんですね。とにかく気持ちよかった。

クリスがプロモテープの中で言っていたのですが、ARMAGEDON の音楽は彼が長い間やってみたいと思っていた方向だそうで、私は 「 VAN HALEN がヘヴィーになってジャーマン・メタルと合体したみたい」 と思いました。"Panama" みたいなリフの曲があったせいかな? デスではまったくありません。メロディアスだし、ハイトーン・ヴォーカルだし。ですのでむしろ、デスが好きで来てた人はがっかりしたかもしれません。

急遽決まったからか、たった4曲、20分弱で彼らの出番は終わり。これはちょっと物足りなかったです。まあ後半の2組のことを考えると、時間的にも体力的にもこのくらいでないとキツかったとは思うのですが。客席からの反応もとてもよく、バンドもうれしそうでしたから、次にはフルセットで来日できるようになるといいですね。

セットチェンジも手早くすみ、THE HAUNTED の登場です。スペシャルゲストと銘打っているだけあって、ちゃんとバックドロップにはバンドのロゴが掲げられています。暗転した場内に JUDAS PRIEST の "Breaking The Law" が鳴り響き、サビの部分ではフロアから大合唱が起こりました。が、これって一体どういう意味だったんでしょう? あまりにも本人たちの音楽性と違っていて戸惑いました。ルーツなのかな?

ヴォーカルは短髪で、いまどきのハードコア野郎という雰囲気で、飛び跳ね るようにして歩く感じの動きがよかったです。曲の印象と彼のルックスに合っていました。しかし・・・ヴォーカルの声が全然聞こえない! 最初の頃はマイクが入ってないんじゃないかと思いました。幸いあまり 「歌」 のある曲じゃないから、それほどマイナスにはなりませんでしたが、本人たちには気の毒でした。途中から少しずつ聞こえるようにはなりましたが。

イェンセンは相変わらず大きくて(当たり前)、たまに両手を挙げて客を煽ったりすると3メートルくらいあるように見えました。そのわりに身は軽くて、けっこうステージの上を動きまわってました。

それにしてもリズム隊が巧い! すご〜くタイト! ギターが2本だったせいもあり、音に隙間がありませんでした。あれだけ速くて重い曲をライヴでやると、タイミングが合わないと気持ちが悪くなっちゃうんですが、安心して首を振っていられました。

でも、正直言ってちょっとあきました。演奏してる間はそれなりに首振って楽しいんだけど、あとからあとから同じような曲でメリハリがないんだもの。新譜からの曲というのはちょっとドゥームっぽくて、他とは雰囲気が違ってましたが、それはあまり彼らの個性にあってないように感じたし。曲名を知らないのですが、中盤以降にやったファーストからの曲がすごくかっこよかった。欲を言うならあと2曲少なくして、その分 IN FLAMES が演奏してくれてたら最高だったです。もっと欲を言うと、最後に ARMAGEDON のドラマーとベーシスト、クリス、イェンセン、IN FLAMES のヴォーカルで演奏してくれたら、とってもうれしかったんですが。

前座だというのにアンコールまでやって THE HAUNTED が引っ込んだあと、再びセットチェンジが行われ、お待ちかね、本命の IN FLAMES 登場です。が、この登場の仕方がねえ・・・。SEがなんと映画 『オースチン・パワーズ』 のテーマ曲。あまりにも間抜けすぎる〜。お笑いバンドじゃないんだから。THE HAUNTED の場合はそれでもまだメタルという範疇でしたから納得もできますが、こっちは一体どういう趣旨だったんでしょう?

ステージの後ろにはバックドロップの代わりにスクリーンが用意され、新譜 「CLAYMAN」 のアルバムジャケの磔男(^^;) がぐるぐる回ったり、いろんな模様が写し出されたりしていました。でも、こちらもいまひとつ意味不明だったかな。

初めて見るバンドなのでふだんのステージングがどんなふうだかわからないのですが、THE HAUNTED のときと同様、音があまりよくなく、ギターの音がこもってしまっていました。アイリッシュっぽい音色のツインギターは私の好みだと思うのですが、今日のステージからはその良さがあまり感じられません。

ヴォーカルはよかったです。凄く好みの声。というか、存在感のある、ヴォーカリストになる資格のある声だと思いました。世の中にはただ歌えるというだけでヴォーカリストやってる人もたくさんいますが、そういうのはよほど曲がよくないと何度も聴く気になれませんし、ましてや曲も知らず、初めて見るライヴだとのっけからガックリきちゃいます。そういう意味で、彼の声は二重丸でした。曲に合っているというのもあるかもしれません。彼らの曲って、なん となく MOONSPELL を思い出させました。

それにしても照明は最悪でした。スモークをたきすぎてステージの上が靄っているうえに、メンバーにライトがほとんど当たらないんですから。ステージ全体が暗くてどこに誰がいるのかもよくわかりません。ツインリードを決める時に2人がステージ中央に歩み寄って来ていても、そこで何をやっているのかも見えない。ふだんはヘッドバンギングの合間にステージを見るのですが、きのうは 「これじゃあ見てもしょうがない」 と思って、頭を振ることに専念していました。

とはいうものの、フロアの前のほうは終始大暴れ状態で、彼らにしてみれば別にステージが暗くて見えなくても関係ないのかな、という気もします。やはりこの手のライヴは2階で静観していてはいけないのかも(^^;)。

演奏力とタイトさは THE HAUNTED のほうが上だったと思いました。IN FLAMES はギターもドラムもズレていたように感じられました。それでも私は次に THE HAUNTED と IN FLAMES がそれぞれ単独で同じ日程で来たとしたら、IN FLAMES に行くでしょう。なんといっても曲がどれも素晴らしかったし、バンドとしての存在感というか、ひとつの世界がステージの上にありました。

今回、どのバンドも (まあ IN FLAMES は別かもしれませんが) あれだけの大きさの会場で、あれだけ暴れる観客を前にしたことがないと見えて、みんなすごくうれしそうに何度もお礼を言っていたのが印象的でした。IN FLAMES のヴォーカルなんて、「君たちみんなスウェーデンに連れて帰りたいよ」 なんて可愛いこと言ってました。「僕のお母さんの作ったミートボールを食べさせてあげるから」 というのには大笑いしてしまった。

ところで、開演前にずっとTHE TEA PARTY がかかっていて喜んでいたのですが、一体なぜ? チッタさんが呼んでくれる可能性があるのでしょうか? だったら最高にうれしいのですが・・・。


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