SHOH's LIVE REPORTS

Donal Lunny Band (Aug 24,1997, Lafore Musium Roppongi, Tokyo)


回も昼夜2公演。前回はHOTHOUSE FLOWERSのリアムが参加ということもあって2回とも見ましたが、今回は夜のみ。←なんてわかりやすりヤツなんだ(^^;)>自分

今回の参加メンバーは以下の通りです。

DONAL LUNNY(ブズーキ)
SHARON SHANNON(アコーディオン)
NALLAIG CASEY(フィドル)
MAIREAD NESBITT(フィドル)
MAIGREAD NI DHOMHNAILL(歌)*
RAY FEAN(ドラム)
JOHN MCSHERRY(イーリアンパイプ)
FIONN O'LOCHLAINN(ベース)
ROY DODDS(パーカッション)*
GRAHAM HENDERSON(キーボード)*

*印の人以外は前回と同じメンバーだと思います。パーカッションとキーボードの2人は元FAIGROUND ATTRACTIONのメンバーだそう。

会場は椅子が並べられていたけれど、うしろで立ったまま見てる人や、両端の床に座ってる人など、さまざまな形で見る人たちがいて、ふつうのコンサートとはひと味ちがう雰囲気。

シャロン・シャノンは、日本での人気を考慮してか、今回はステージ真ん中。前回同様、はにかんだような笑顔がキュートでした。この前のときは確かシャロンのすぐ隣にイーリアンパイプのジョンが座って、この人も大人しくてシャイな感じなので、ふたりで時々目と目を見交わし、微笑みあったりしてるのが、とても可愛くてよかったんですが、今回はジョンはステージの端に行ってしまいました。シャロンには圧倒的に男性ファンが多いから、そのへんを考慮しての配置かしら、なんてよけいなことを考える私。

ブロンドの美人フィドラー2人は相変わらずかっこよくて、髪をふり乱しながら弾きまくる姿は、ビジュアル的にとてもインパクトがあって、会場の熱狂をさらに煽っていたように思います。年上のほうのグレン・クロースみたいなナリグは、今回も優雅な赤いベルベットタイプのロングドレスで、その姿でフィドルの弦を切る勢いで弾きまくるのですから、たまりません。フランス人形みたいなマレードは、透けるブラウスにぴっちりした光る素材のパンツ(ほとんどタイツみたいでしたが)、底の厚いサンダルと渋谷あたりにいる若い女の子そのもののスタイル。あんなに高いアンダルでリズムをとりながらフィドルを弾いて、足をくじいたりしなければいいがと、ちょっと心配してしまいました。ただ、前回みたいにそれぞれの個性をアピールするようなソロタイムがなかったのがちょっと残念でした。

ソロで思い出したけど、リアムやCLANNAD のモイア・ブレナンといったスター性のある人がいなかったせいか、今回はバンドとしてのまとまりがとてもよかったと思います。前回は前回で個性がぶつかり合うのが魅力的だったんだけど、どうしてもそれぞれのミュージシャンだけに目が行ってしまいがちでした。今回は全員が出す音同士はぶつかりあい、溶け合って、それがひとつの世界を創り出しているような、そんな心地よさが味わえました。

マーク・ポートノイ(DREAM THEATER)似のドラマー、レイは前から楽しいキャラクターだとは思っていましたが、今回はめちゃくちゃ陽気でした。あとからもらったチラシによると9月に結婚をひかえてるそうで、そうか、そのせいもあったのか。

それはともかく、この人のドラム、すごくヘヴィーで躍動感があって、ともすると軽く聴きやすいだけ(私にとってということですが)になってしまいがちなトラッド音楽を、もう1歩ロック寄りにしてくれてると思いました。ベースの音も今回はとてもよく聞こえて、それがまたすごくいい感じだったので、このバンドってリズム隊が個性の要なのかも、と再認識したりして。

休憩前の1部はジョン寄りのステージ右側、2部をドーナル寄りの左側の前のほうで立って(踊りながら)聴いていたんですが、そのせいもあってか、シャロンのアコーディオンの音もよく聞こえました。ドーナルが「次の曲はシャロンがてんてこまいになるんだよ」とかいうような紹介をした曲では、彼女の細くて美しい指が目にも止まらぬ速さで弾きまくるのを口を開けて見てしまった。

彼女、前回は少女のような花柄ワンピースに裸足でしたが、今回は黒の袖なしブラウスに黒の細身パンツという、ちょっとおとなびた服装。ただし、黒い靴下をはいた足には靴がありませんでした。アンコールが終わった最後の最後に、椅子の前においてあった靴を手にして帰っていったのがほほえましかった。

ゲストヴォーカルのモレートは、アイルランドの肝っ玉母さんという趣の女性。体格が立派なのにまず驚かされましたが、その体にふさわしい深みのある、魂にしみるような声でした。私は本来、歌で曲を聴くタイプなので、やはり彼女が出てきて、意味が通じる(言葉がわかるという意味ではない)曲をやってくれると、ちょっとほっとしてしまうのでした。

そういえば日本側ゲストとして、ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬、伊丹英子、大熊亘の3人が参加していました。私、前に何かのジョイント・ライブで1度だけ見たことがあると思うんですが、そのときはあまり印象が残ってなかった。

沖縄民謡風の掛け声とか、太鼓、クラリネットの入り方など興味深くはありました、ドーナルのほうのバンドのまとまりがよかっただけに、すんなり溶け合うというまでには至っていませんでしたね。

これは、この前のCHIEFTAINSのときにも書いたんですが、ミュージシャン側としては、お互いにエスニックな魅力というのがあって惹かれ合い、コラボレートするのでしょうが、それが完成品として聴くにたえるものになるまでには、やはりある程度の時間が必要なんじゃないかと思えます。もちろん、今回のこれは、お祭りの彩りみたいなものですから、充分素晴らしかったとは思うんですが。

さて、御大ドーナルですが、終始にこやかに、実に楽しそうに演奏してました。衣装が去年とまったく同じだったのも、なんだからしくていいなあ、なんて思ったりして(そんなこと覚えてるなって)。そういえば、ブズーキの弦、また切れてたかしら? バウロンも叩きましたが、あんまり出番は多くなくて、ちょっとがっかり。あの音好きなんですもの。前回はリアムがバウロンがんばってたからね。

途中までは座ったままのお客さんが多かったんですが、最後のほうはほとんど総立ちで手拍子をしたり踊ったり。まさに熱狂の渦、といった感じの盛り上がりでした。私のそばに、初めて来たらしい人がいて、「すごいなあ」と言いながら一生懸命手を叩いているのを見ていたら、ロックコンサートに初めて行ったときの感動を思い出してしまいました。

ロックからアイルランド音楽に入った人も多いけど、全体的に見ればやはりロックになじみのある人は少ないと思えます。そんな人たちは、こうしてコンサートでみんなで一緒に盛り上がり、体で音楽を吸収する心地よさというのに、まずノックアウトされるのかもしれないなあ、なんて思いました。


1997 I INDEX I TOP PAGE