Def Leppard Live in Japan (June 16-22,1993)
PART 1 開演前に会場に流れていたのはGUNS N' ROSES の"COMA"。新譜でもないのにどうしてこれを? と思っていたが、最後のほうの心臓の鼓動のようなドラミングが始まると同時に場内が暗くなり、曲が終わっているのにまだあの鼓動音は鳴り続ける。そこにライブビデオでもおなじみの男の声のナレーションがかぶさり、武道館いっぱいの観客から大歓声が上がった。みんなもう待ち切れないという気持ちでいっぱいだったから、いっせいに立ち上がって大騒ぎ。私の隣りでは2人連れの男の子たちが言葉にもならないような奇声を発している。オープニングは"LET'S GET ROCKED"! 最初のためるようなギターの音が聞こえた瞬間から何が始まるのか察したファンたちは"LET'S GET! LET'S GET! LET'S GET" と一緒にコーラスを始める。みんな「ADRENALIZE」を聞き込んできたのねえ。このあとも、ほとんどのパートで歌う人がたくさんいて、なんかもう武道館全体が巨大なカラオケになってしまったよう。でも、みんなの熱い気持ちが痛いほどにわかるから、全然いやな感じではない。それに私だって一緒になって大声で歌いまくってるんだもの。
ジョーは穴の開いたジーンズに前をはだけた黒い薄手のシャツ姿。よく見ると模様はドクロだ。 サヴは黒と白の市松模様にプリントが入ったシャツ、ヴィヴは袖なしのグレーのTシャツに膝までのスパッツ、リックはチェックのシャツ、フィルは裸(もちろん上半身だけね、下は黒のスエットパンツ)。
最初の曲が終わるとMCもなく、すぐに次の"TEAR IT DOWN"に入った。しかし、"LET'S GET ROCK"とはリズムがまったく違う曲なのね、これ。なのに回りのファンはとまどう様子も見せず、あっという間にこの曲のノリに身をまかせる。もうどの曲だって体で覚えてるんだから、どんな順番でもかかってきなさい! って感じ。サビのところで一緒に歌う箇所だって、教わったわけじゃないのにきっちりそろってる。
曲の最後、ジョーの"ALL NIGHT LONG"のあとを他のメンバーが演奏を引っ張って終わらせたもので、みんな大声援を浴びせる。これがライブの醍醐味か、と感動してると、ジョーが「イェ〜イ! イエ〜イ!」と掛け声をかけた。みんながそれに応えると、いきなりあの印象的なギターの音が!
そう、"WOMEN"だ。何度聴いてもこのイントロは背筋がぞくぞくするほどかっこいい。心配していたジョーの声はちゃんと出ている。彼のセクシーにしゃがれた歌声に合わせて「うぃめ〜ん!」と叫ぶ気持ちよさったらない。
いやもう喉がつぶれるかと思うころに曲が終わると、ちょっとだけギターの音合わせが入る。あれ、珍しいなと思ったら、なんと次に始まったのは"ANOTHER HIT AND RUN"。ジョーが何か一生懸命言ってたけど、よくわかんなかった。多分、なつかしい曲をやるよ、とか、みんな覚えてるかい、とかいったことなんだろうと勝手に解釈した。
さすがにこの曲になったら、隣りのお兄さんたちは静かになってしまった。でも、キメの"HIT AND RUN" のとこだけ歌えればなんとなる。それにジョーが気をつかって、みんなに手拍子をするよう促したりするし。
それにしてもまさか「HIGH 'N' DRY」からこの曲を持ってくるとは思わなかった。"BRINGIN' ON THE HEARTBREAK"は、まだあまりにもつらくてできないから、せめてあのアルバムから別の曲を1曲というところなのかも。あと、この中にはけっこう速弾きのギターソロがあるから、ヴィヴのお披露目もかねてやらせてみようということだったのかもしれない。まあ、いずれもファンの勝手な解釈だけどね。
ヴィヴといえば、ステージ横の柱に布製の緑色の魚のぬいぐるみが縛りつけてあって、一体なに?と思ってたんだけど、ライブの途中でヴィヴがその魚の口にキスしてた。あれって、ヴィヴのお人形なのね。よく見れば魚の頭にはチリチリの茶色い髪がくっついてたし。そういえばヴィヴのギターには、アイルランドのシンボルであるクローバーの絵が描いてある。「お、アイリッシュの誇りが・・・」と思ってしまった。
あともうひとつ。途中で客席から投げられたサッカーボールを、サッカー狂のジョーが頭と膝で巧みにさばきながらヴィヴのほうに投げてよこした。ヴィヴはギターを弾きながら近づいて行ったのだけれど、このときの彼の顔がけっこう真剣で、私は内心ドキドキしてしまった。ヴィヴが無事にボールを膝で返したときには、「ああ、よかった」と安堵のため息。なぜか自分の子供の試験を見守る母親みたいな気持ちになってしまったのだわ。これって変?