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Def Leppard のジョー・エリオット(Vo)とフィル・コリン(G)のサイド・プロジェクト・バンド Cybernauts が日本のみのライヴ・アルバム発売(実際にはインターネットのみの販売で5月に全世界発売の予定)に合わせて4回だけの来日公演を行いました。ミック・ロンソンのトリビュートをきっかけに結成された、David Bowie の Ziggy 時代の曲を演奏するバンドで、他に元 Spiders From Mars のトレヴァー・ボールダー(B) とウッディ・ウッドマンゼイ(Ds)、それに若手のディック・ディーセント(Key)が3年前の英国公演と同様、参加していました。
横浜ベイホールには初めて行ったのですが、前から交通の便の悪さとステージの見にくさは友人たちからさんざん聞かされており、かなり構えて行きました。石川町か桜木町からバスかタクシーでないと行けそうにないですし(歩いている人も見ましたが、かなりあるのではないでしょうか)、倉庫を改造して作ったような外観も内部も、選んで行きたいという所ではなかったです。ステージが低いので、後ろのほうになると何も見えないとも聞いていたのですが、これは整理番号がよくてフィル側最前列をとることができたので問題ありませんでした。また、後ろのほうで見ていた友人も、すいていたので一段高くなったところから余裕で見ることが出来たようです。結局、元々がギュウギュウ詰めになって見ることを予想せずに作ったのでしょうね。
それにしても、ステージはびっくりするほど狭くて、ここに天下の Def Leppard のふたりが登場するなんて信じられません。前回来日時の福岡ではクラブ公演がありましたが、通常はスタンディングで、しかもこんな小さなクラブで連中を見るなんてこと不可能ですからねえ。
ふだんと違っていたのは、ショウが始まる前にツアー・マネージャーのマルヴィンさんが登場。バンドの紹介をしたことです。これもまた、ふだんとは違う親密な雰囲気を醸し出していて○でした。
ステージに登場したメンバーは、左後方にディック、前方にフィル、中央後方がウッディ、正面がジョー、そして右側にトレヴァーという配置でした。6日に渋谷のタワーレコードで行われたプロモ・イヴェントでのアコースティック・ショウでも同じ配置だったので、予想はついていましたが、フィルが左側にいるというのはなんだかとっても新鮮です。おまけにフィルの前にマイク・スタンドがない! プロモのときもなかったのですが、このときは4〜5曲しかやらなかったし、アコースティックだからかと思っていました。が、どうやら今回はフィルはギターに専念するつもりのようです。
ジョーは黒の皮パンツに黒のTシャツ、白黒の幾何学柄のシャツを羽織り、先の四角い銀色の靴を履いていました。前日にロンドンから帰ったばかりという人に聞いた話では、この靴、ロンドンで大流行だったそうです。ふ〜ん、ジョーって流行物に弱いんだ。
フィルはカーキ色の袖なしTシャツ(タンクトップではなくて襟元がもっと詰まっている)にベージュと赤のタータンチェックのパンツ、それに茶色のカジュアルシューズといういでたち。妙に太い銀のチェーンをしているのが目立ちます。例によって途中から上半身裸になるのですが、下がウールの普通のパンツなので、最前で見ていると気恥ずかしくて目のやり場に困りました(^^;)。
ジョーは半分以上の曲で自らもアコースティック・ギターを弾きながら歌いました。上半分が黒で花模様の入ったきれいなギターで、Def Leppard のときのように、余裕で持っているという感じではなく、時々コードを目で確認しながら一生懸命弾いている姿が可愛らしかったです。特に間奏で歌っていない時など、フィルや他のメンバーの演奏に遅れまいと唇を突き出すようにして髪をふり乱しながら必死に弾いているのが暗い中 (そのときはスポットが当たってないからね) でもよく見えて、ソロを弾いてるフィルそっちのけで見てしまいました。
プロモのときに 「3年半ぶりにこのメンバーで集まったので、日本についてからずっと練習し続けなんだ」 と言っていましたが、確かにギターとキーボードのチューニングが微妙に合わなかったり、ジョーのヴォーカルが途中でメロディをどっかになくしちゃったりといった部分がいくつかありました。また、ジョーの声がいつもほどではないものの、後半、かなり出にくくなっていたように思えます。アルバムには入っていなくてプロモのときからやり始めた "Lady Grinning Soul" などは、高音から入る曲なのでキツイものがありました。床に貼ってあったセットリストには、8. New Number (Time or Lady Grinning Soul) と書いてあったので、ひょっとしたら明日はなくなるかな? "Life On Mars" も、途中でメロディがわからなくなってしまったようで、しきりと耳にはめたモニターをいじっていましたが、結局最後まで音がとりもどせなかった。しかし、そういう時に他のミュージシャンだとスタッフに当たったり、言い訳じみた仕種をしたりするものなのですが、 (モニターはいじっていたとはいえ) ジョーの場合は 「ま、こんなもんか、きょうは」 みたいに終わらせちゃうのがいいですね。見ているほうがほっとする。
とはいうものの、ライヴとしての出来は悪くありませんでした。多分それはウッディとトレヴァーのリズム隊が終始息のあった、実にタイトな演奏をしていたからだと思います。さすがに一流のミュージシャンとやってきたキャリアの長い人たちです。"The Width Of A Circle" の途中で入るドラムソロなど、ドラムソロ嫌いの私ですら感動してしまったくらい、タイトで気持ちのいいものでした。
プロモのときに 「この曲ではフィルの、それはそれは美しいギターソロが入るから、ぜひエレクトリック・ヴァージョンを聴いてほしい」 とジョーが言っていた "Moonage Daydream" は、嘘いつわりなく本当に素晴らしい出来でした。正直言ってフィルがあれほどまでに魂をふるわすようなソロを弾くとは思ってもいなかった。最初のほうの、アルバムではツインギターのように聞こえる部分はキーボードとの掛け合いでしたが、後半の情念のこもったソロはもう彼の独壇場。心臓をわしづかみにされてギュッと絞られているような気持ちになり、鳥肌が立ちました。
さて、思いがけない落とし穴(?)はアンコールで訪れました。再登場したジョーが妙にきつそうな黒いTシャツを着ているのを見て、「はて? ファンからのプレゼントなのかな?」 とは思ったものの、ギターで隠れてよく見えなかったので深くは考えませんでした。背中に、
COME BUT
NOT FORGOTTEN
と書いてあるのだけは見えたのですが。そしてジョーのMCが始まりました。
「きょうは奇しくも David Bowie の誕生日なんだよね。(拍手) そして、スティーヴ・クラークの命日でもあるんだ」 そう言ってギターを胸から離すと、そこには笑顔のスティーヴの写真が・・・。「次の曲は彼に捧げたい」
この日がスティーヴの亡くなった日であることはもちろん覚えていましたが、まさか Cybernauts として来日したステージでそのことに触れるとは思わなかったので、まさに不意をつかれたという印象でした。ジョーの後ろ姿をもう一度よく見ると、さっき見えた文字の下に R. I. P. の文字が。あとから友人に聞いた話ですが、3年半前の英国での Cybernauts 公演のときにもこれを着ていたそうです。
そうして始まったのが "Rock 'N' Roll Suicide"。 「君はひとりぼっちじゃない。俺に手助けさせてくれよ」 ジョーがこの歌詞を切々と歌ったとき、こらえていたものが一気にふきだし、涙がおさえられなくなりました。周囲の女性ファンはみんな肩をふるわせています。それまでは絶えず笑顔をふりまいていたフィルも客席よりもギターを見ながら弾いているし、ジョーの真ん前で見ていた友人によると、彼の目もいくぶんうるんでいたそうです。
曲が終わったときはしばらく放心状態で、「こんな状態じゃ残りのショウにのりきれない。どうしてこういう時にスティーヴのことを持ち出したの〜 (涙) 」 と思ったのですが、アップテンポの "Suffragette City" でなんとか持ち直し、2度目のアンコールで "All The Young Dudes" を一緒に歌っているうちに、「そうか、ジョーもフィルもこういう楽しい集まりにスティーヴを参加させたかったんだ。きっと彼もひとときステージに戻って、昔の仲間やファンと楽しい時間を過ごしたに違いない」 という気がしてきました。
このライヴのことを知ったときには 「David Bowie のことはよく知らないし、楽しめるかなあ」 と不安だったのですが、昨年末に発売されたアルバムをまず聴いて 「お、いいじゃないか!」 とすっかりハマってしまい、きょうのライヴを見て、あまりの楽しさに呆然としてしまいました。元曲の素晴らしさとそれを演奏するミュージシャンの熱意が見事に結実した内容だと思います。これから後の3回がどう変わっていくか、とても楽しみになりました。
- Watch That Man
- Hang On To Yourself
- Changes
- The Superman
- Five Years
- Cracked Actor
- Moonage Daydream
- Lady Grinning Soul
- The Jean Genie
- Life On Mars
- The Man Who Sold The World
- Starman
- The Width Of A Circle (Include Ds solo)
- Ziggy Stardust
- Panic In Detroit
- White Light White Heat
- ENCORE 1 -
- Rock 'N' Roll Suicide
- Suffragette City
- ENCORE 2 -
- All The Young Dudes