SHOH's LIVE REPORTS

Chieftains (June 4,1997, Gotanda Kani-Hoken Hall, Tokyo)


ーフタンズは、昨年の池袋グローブ座でのライブに続き、2度目でした。前回は正直なところ、前座のロリーナ・マッケニットのインパクトのほうが強くて、「こなれたおじさん達」という印象しかなかったんですが、今回はさすがと脱帽 しました。

スペインのカルロス・ヌネス、矢野顕子、アシュレイ・マックアイザックという多彩なゲストが参加しての構成で、新譜「SANTIAGO」からの曲を中心とした内容でした。私はこの新譜を聴かずに行ってしまったのですが、ライブで聴いたかぎりではとても私好みの曲が多くて、それも好印象につながったのかもしれません。

スペイン・ガリシア地方特有のバグパイプを吹くカルロスさんは、髪が薄くて体も華奢で、一見とっても地味に見えますが、いざ演奏を始めるとエネルギッシュそのもの。足を踏み鳴らしてリズムをとりながらソロを吹きまくる姿は、まるでメタル系のギタリストみたいでした。ひょっとしたら彼、ロックも好きかもしれません。

矢野さんは、相変わらずのあの声とあのピアノで、アイルランドと日本の民謡の融合を思わせる歌いっぷり。ただ、私は昔から彼女の声がどうにも苦手だったもので、正直言ってあれ以上はいらなかったというところです。ちょっとポイントをつけるという点ではよかったのかもしれませんが、個性が強すぎるのと、聴く者に緊張感を強いるのとで、チーフタンズのほのぼのとしたムードには合わないと(個人的には)思いました。>ファンの方、ごめんなさい

特筆すべきはアシュレイ君。私、すっかりファンになってしまいました。彼、つい先日もプロモ来日して話題になったばかりですが、私はアルバムのジャケット写真を見て、熊みたいにごつくてオジさんくさいルックス(それなのにキルトを履いてる〜)にめげて、未チェックでした。ところが、ステージに登場した彼は、黒と金のまだらに染めた髪を黒い野球帽からはみ出させ(最初アライグマのしっぽがついた帽子かと思った)、短めの迷彩っぽいTシャツにカーキ色のアーミーパンツ、サングラス、それに白い豹のぬいぐるみを抱いて登場したんです。とてもトラッドな演奏をするフィドル奏者とは思えません。普通のスーツやポロシャツ、ズボン姿のチーフタンズのおじさま達の中に混ざると、まるで補導された中学生みたいでした。

ところがねえ、演奏が始まるとこれがもうびっくり、なんてもんじゃない。最初はわりとクラシックぽい弾き方で始まったんですが、途中から一転して激しく速くなり、足を踏み鳴らし、体をかがめて、弾きまくり状態。もう神がかり的としか言いようがないような状態でした。ギターの速弾きなんて目じゃありません。LEVELLERSのフィドルもステージでめちゃくちゃ暴れながらフィドルを弾くんですが、アシュレイ君の暴れようはあれ以上だと思いました。最後にはアイリッシュダンスのダンサーのように、足を激しく動かして踊りながらの演奏になり、や んやの喝采を浴びていました。おじさま達もなかばあきれながらも、とても楽しそうに見ているのが印象的。新しい才能を素直に認め、自分たちの刺激にしようという態度には感心させられます。

そうそう、今回、ダンサー2人(男女)も来ていて、要所要所で素晴らしい踊りを見せてくれました。

途中15分の休憩をはさんで、約3時間のライブでした。チーフタンズのメンバーの年齢が高いということもあるんでしょうが、こうしていろいろなお楽しみを交えたステージ構成だったので、あっという間に感じました。はじめのうちは大人しく座って手拍子を叩くくらいだった客(老若男女、外国人も多かった)が、最後にはほとんど総立ちで拍手と歓声を送っていたのも感動的でした。そうさせるだけの内容だったんですよねえ。

アシュレイ君は10月に単独公演が決まったようで、これはもう何がなんでもいかねばなるまい!と今からワクワクしています。


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