SHOH's LIVE REPORTS

Chieftains (Nov 4,1995, Ikebukuro Grove-za, Tokyo)


のうはSYKES、きょうはCHIEFTAINS だなんて、なんてまあアイリッシュにゆかりのある生活なんでしょう。

というわけで、きょうはアイリッシュトラッドを堪能してきました。聴き始めたのは最近で、アルバムも例のSTING なんかと一緒にやってる「LONG BLACK VAIL」 しか持っていないんですが、アイリッシュ音楽って日本人にとってはどこか懐かしくて、心の琴線にふれる音なんですよね。

前座というか、ゲストはカナダのLOREENA McKENNITT。 透き通るように美しい声で、不思議な形(フライングVみたいな)のハープを弾きながら歌います。バックはギターが1本。このギターが今まで聴いたことがないほどおだやかで優しい。ふだん聴いているロックでは、ギターというのはどちらかというと攻撃的な楽器で、いちばん自己主張の強い存在だったのだけれど、きょうの彼は、あくまでもロリーナの歌をひきたてるための楽器にしかすぎませんでした。それでいて美しい音色。

ロリーナが4曲ほどやって休憩が入り、いよいよCHIEFTAINSの登場。なんのきどりもなくバラバラと登場して、ステージに置かれた椅子に座ったのは、ほんとにただのおじさんたち。アイルランドのパブに行ったら、昼間からビールを飲んでおしゃべりしてそうな感じです。

しかし、このおじさんたちが、いったん楽器を手にして演奏を始めると、ひとりひとりが第一人者なんですよねえ。フィドル(バイオリン)2本、イーリアンパイプ、ポーラン、ハープ、フルートという編成で、おどけたMC(しかし悲しいことにアイリッシュ訛りがきつくてよくわからない)をはさみながら次から次へと、美しい旋律と時に激しいリズムを効かせながらステージが進行します。「LONG BLACK VAIL」 からの曲をやったときには、「STING やROLLING STONESのミック・ジャガーも参加したんだよ」と言って、「SATISFACTION」をちょっとだけ演 奏してみせたりと、なかなかのお茶目ぶり。

途中に男女ひとりずつのダンサーがステージ袖のドアから登場し、上半身は固定したままで足だけを激しく打ちつけながら踊るアイリッシュダンスを披露します。この踊り、1年くらい前にヒットしたNYのミュージカル「RIVER DANCE」 のビデオクリップで見たことがある人もいるはず。実にもう人間技とは思えない、すごい動きです。

後半は、再びロリーナとギタリストが登場し、スペイン人のバグパイプ奏者も参加してにぎやかに。本編最後は、それぞれがひとりずつソロをとって、圧巻のバトル。特にハープのおじさんがいきなりピアノに向かって、カーメン・キャバレロ並みのジャズピアノを弾き始めたのにはみんな大爆笑。日本でもおなじみの「はにゅうの宿」も弾いてくれました。

きょうが最終日だったからか、アンコールも終わって会場が完全に明るくなり、BGMまで流れ出したのに拍手がなりやまなかったら、メンバーがまた出てきてもう1曲やってくれました。このときには客席もみんな立ち上がり、ダンサーと一緒に踊り出す騒ぎ。まるでアイルランドのパブで飲みながら楽しんでいるような、そんな夜でした。

ジャンルは違えど、アイリッシュって私にはなじむなあ、と納得した夜でした。


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