SHOH's LIVE REPORTS

Ashley Macisaac (Oct 25,1997 at Shibuya Quatro,Tokyo)


ってきました、ぶっ飛びパンク・フィドラー(チラシのたたき文句(^_^;)ゞ)アシュレイ君の単独公演。

この間は CHIEFTAINS のおじさま達の間で、完全に小僧状態でしたが、メインで演奏するとなるとどんな感じになるのか、興味津々でした。

大阪公演はかなり短かったそうで、そのせいか急遽ゲストミュージシャンである MARY JANE LAMOND がまずオープニングアクトとして登場。ベリーショートの髪がよく似合う、清楚な感じの女性で、ゲール語の歌を含む3〜4曲を披露してくれました。最後の曲は「パイプの音を声で表現した曲なのよ」と(多分)言ってたと思うのですが、次第にテンポが激しくなっていって、最後にプツッと終わるところがとてもかっこよくて、客席から大きな拍手と歓声を受けていました。

そこまでは上のほうのフロアで見ていたのですが、すぐに下のフロアに下りていき、人の迷惑も顧みずに前のほうにずりずりと割り込んでいき、前から5列目くらいでアシュレイ君の登場を待ちます。

ステージの上にはなぜか大きな熊のぬいぐるみが。前回、白い豹のぬいぐるみを抱いてきたけれど、今回はこの熊がその代わりかしらと思っていると、やがて現れたアシュレイ君たら、なんとでっかいドラエモンのぬいぐるみを抱いている。しかも、自分は毛皮の耳当て付き帽子をかぶっているという。

長袖のいろんな色の横縞が入ったフード付きパーカのフードをすっぽりかぶり、その上からさらに毛皮の帽子をかぶっているんだから、かなり暑かったんじゃないかな。おまけに頬からあごにかけて髭ぼうぼうにはやして、なんかもうカナダの山奥から連れてきた珍種の動物みたいな雰囲気でした。

彼が登場した瞬間、「なんだスカートじゃないのか」という声が聞こえました。どうやらニュースステーションにはキルトで登場してのパフォーマンスだったようですね。でも、ステージが始まり、音楽が激しくなって、アシュレイ君が足を蹴り上げたりする回数が増えるにつれて、「キルトじゃなくてよかった(^^;)」と思った私でした。

しかし、間近で見るとすごい汗。フィドルを弾く腕のひじのところから汗がしたたり落ちているし、はいていた木綿の作業パンツは、ライブの終盤には汗でぐっしょり濡れていました。毎晩ああやってたら太らないだろうなあ。

バックのメンバーは、ギター、ベース、ドラム、キーボード、それにパイプという面々。ギターは若くてちょっと可愛い子でしたが、胸にGUITARと書いてあるTシャツを着てるのはちょっと〜。おまけに、最初のほうでアシュレイ君をさしおいて、ドラムの前のお立ち台(パンフにあったステージ説明図によると RUNAWAY RISER と呼ぶらしい)でステップダンスを踊ってしまったのにはびっくり。「おいおい、主役をさしおいてそんなことやっていいんかい?」って感じ。でも、彼に限らず、ベースもドラムも若者らしい雰囲気で、いわゆる伝統音楽のミュージシャンとは違うタイプなのがよかった。

曲はほとんどが「HOW ARE YOU TODAY」からのものだったと思うんですが(あいかわらず曲を覚えてないやつ)、どれだったかなあ、ドラムのリズムがすごく効いてて、フィドルとの掛け合いがやたらダイナミックでかっこいい曲があって、足を思いきり踏み鳴らしながら頭を振ってしまった。やっぱり私はロックの人間なのかもしれないと思った瞬間でした。でも、まわりのアイリッシュ音楽愛好家の皆様もみんな、思い思いに体を動かしたり手拍子を叩いたりしていたから、あれって人間の本能のどこかを突き動かすタイプの音なんでしょうね。

アシュレイ君を語るときには、ステップダンスを踊りながらフィドルを弾く人、という形容がお決まりみたいになっていますが、今回見て感じたのは、ステップダンスはあくまでそのときの気分やノリで織り込まれるものであって、メインはフィドルの演奏家であるということ。まあ、当たり前といえば当たり前なんですが、指先に全神経を集中してフィドルを弾いている彼を見ていたら、ステップダンスなんてどうでもよく思えてきました。もちろん、演奏が激しくなってきて、こちらも頭を振ったり足を踏み鳴らしたりしているときに、彼のほうでも同じよ うに暴れているというのは、実になんというか共鳴できて楽しいんですけどね。

それにしても、集中してるときの彼はちょっと神がかり的です。ほとんど目をつぶって弾いてるようなんですが、ときどき白目をむいてしまうのが、なにかが乗り移ってるようでちょっと怖い(^^;)。だから、あんなに暑そうで汗をかいているのにサングラスをかけてるのかもしれない、なんて思いました。

途中、お遊びっぽく "STAIN ALIVE" をやったときには、汗びっしょりかいているのに、ブルーのフェイクファーのコートを左肩にはおり(右はフィドルを乗せるからね)、ポケットから櫛を出して、髪をなでつけてみせたりして、芝居っ気のあるところを見せます。見てるこっちもそれに合わせて腕を突き上げてみせたりして、なかなか遊べました。あそこでライティングももっとディスコ風にしたら面白かったのにね。

途中、他の楽器だけ演奏してるときに、お立ち台に座って煙草を吸いながら(あんなに激しく動くのに煙草なんか吸って、よく体力もつなあ)弓に何かをしきりと塗っていたのですが、これはあとで松ヤニと判明。

アンコールでは、アシュレイ君だけが登場。キーボードを弾き始めます。客席から「パイプ吹きを連れてこいよ」という声がかかると「撃ち殺しちゃったよ」と即座の応答。やっぱりパンク小僧だ、こいつ。

終わって客電がつき、アナウンスが流れてもまだアンコールの拍手が続いていたら、アシュレイ君が小走りに出てきて、客席に向かって何かを投げ、またすぐに走り去っていきました(それがまた背をかがめた隠れるような走り方というのが笑えた)。一体なにを投げてたのかと、前のほうにいた人に聞いたら、キスチョコでした。あれはケイタリングで楽屋に置いてあったものに違いない。

結局、6時に始まって終わったのが8時だったから、オープニングアクトを除くと1時間30分くらいだったのでしょうか。短いという感じは全然ありませんでした。あれ以上やったら、アシュレイ君よりも見てるこっちが倒れてしまってたかもしれない。渋谷クアトロのあのフロアに、ものすごい量のエネルギーがあふれた夜でした。


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