SHOH's LIVE REPORTS

Ash (Oct 2,1995 at Shibuya Club Quatro, Tokyo)


ングルしかリリースしていなくての来日、ということで、クアトロはガラガラかなあと思っていたら、結構入ってました。メンバーが、18〜19歳ということで予想はしていたけれど、見に来ている子たちも若い! しかも圧倒的に女の子。

開演前にビールなど飲んでいると、あれあれあれ? 後ろを通っていったのはVO & Gのティム君では?

とってもちっちゃい。165cmくらいじゃないかなあ。でもって、顔もちいちゃくて色が白くてピンクのほっぺ。当然ながらお肌はすべすべ。おまけに手に持っている缶は、なんとファンタ・グレープじゃないですか。きゃあ、可愛い。

年増くさく興奮してしまった私ですが、フロアの前のほうで開演を待っている女の子たちは気がつきもしていない。PAのところで、なにやら打ち合わせをしているのか、単に遊んでいるのかは不明だったけれど、やがて、場内が暗くなり、まずはさっきいきなり場内アナウンスがあったオープニング・アクト(KING OF CRAP NOUS SOMME LES CAPITAIN)の登場。

しかし、待ってよ。あの右端にいるのは、確かさっきティムと話していたPAの人ではないだろうか? おまけに演奏が始まってみると1曲目がAC/DC、2曲目がGREEN DAYのカヴァーというとんでもないセットリストで(ひょっとしてASHがGREEN DAYのオープニング・アクトを蹴ったことをジョークにしてる?)、あとの2曲はなんだかわけのわからないロックンロール。あっという間に終わってしまった。どうやら、この間のPAはティムがやってたような感じ。で、次のASH 用のステージの用意をしているスタッフは、さっきのオープニング・アクトの連中。う〜む、どうやら仲間内で遊んだみたいね。

さて、いよいよASH 登場。映画「スター・ウォーズ」のテーマにのって、堂々と、と言いたいところだがぴょこぴょこと出てきた3人は、いきなり「ダダダダダッ」という勢いのあるドラムの音と共に演奏を始めた。

まず驚くのは、ベースのマークがめちゃくちゃに暴れまくること。「ほんとにベース弾いてるのか?」と思うほど、ぐにゃぐにゃに体を振り回し、ステージの上を支離滅裂に走り回る。ティムにぶつかりそうになったり、ドラム台を倒しそうになったり、とにかく危ない奴。 ティムとは対称的に身長190cm以上はありそうな大男だから、そのかさばることったらない。

ティムは、さっきも書いたようにちっちゃくて大人しそうで、髪を頭に張りつくくらいに短く刈り、ちょっと「愛と青春の旅立ち」に出てた頃のリチャード・ギアを思い出させる(古いたとえだなあ)。黒っぽいポロシャツの裾を黒の皮パンツの上にだらしなくて出して、なんかすっごくダサイ。ブルース・スプリングスティーンの若い頃ってこんな感じだったのでは、と思わせるような感じ。

マークは、ウェーブのかかった肩までのワンレン・ヘアで、白い長袖のTシャツにジーンズ。ドラムのリックは、顔しか見えないのだけれど、これまた髪を短くしていて眼鏡をかけ、おでこが広くてキューピーさんみたい。

音のほうは、というと、これが意外なくらい骨太でヘヴィー。実は私が聴いたことがあるのはVOLUMEの2枚組コンピに入っていた新曲だけで、この曲はごくおとなしめのほのぼの系だったから、びっくりしてしまった。帰ってからVOLUMEの本のほうを読んでみたら、パンクって書いてあった。

でもねえ、パンクともちょっと違うように私は感じたな。確かにドラムの疾走感は、この間のSUPERGRASSと同様、パンク・テイストと言えるのだろうけど、ギターの音色や曲の構成はもっと重くておとなっぽい。ティムの声は、低音がちょっと出にくくて弱いけど、高音の張り上げるあたりのバイブレーションがアイリッシュ系の哀愁を帯びた声質で、もろ私の好み。

そういえば、このベースの動きって、THE LEVELLERS の大暴れベーシストに近いものがある。ただ、曲の作りはLEVELLERS までは哀愁メロディアス系ではない。どちらかというと、もっとHM寄りだ。10番会議室#24でも紹介されているように、METALLICAやTHIN LIZZY、BLACK SABBATHに影響されたということがはっきりとわかるヘヴィネスが全体に漂っている。本編最後の「JACK NAMES THE PLANETS」の前にやったインストの曲なんて、もろMETALLICA だったので、思わず笑ってしまったくらい。

その前の前あたり(「UNCLE PAT」? )は、ちょっと他とは一線を画す70年代風の雰囲気さえ漂うグルーヴィーな曲で、ものすごくかっこいい。とても3人とは思えない厚みのある音だという点に関しては、SUPERGRASSをしのいでいたかも。←ヴォーカリストとしての力強さでは、やはりギャズのほうに軍配が上がってしまうけれど。

マークは、最初から暴れ過ぎたのか、途中曲と曲の間ではステージにしゃがみこんでしまったり、弾いてる途中でステージにひっくり返ったなり起き上がらず、スタッフが出てきて背中を支えて起こすなど、どこまで演出でどこまで本気かわからないパフォーマンスも登場した。アンプの上に乗って飛び降りたりもしたのだが、いかんせん狭いクアトロだから、なんかあまり迫力はなかったような。

まだまだステージングはアマチュア学生バンドの域を出ていなくて、女の子たちがキャアキャア言っても(これがほんとにすさまじかった)、どうしていいのか戸惑ってたみたい。客席から渡された手紙をティムが読んで、自分宛てじゃないとわかるとわざわざリックまで渡しにいったりして、ほんと可愛い。MCはほとんどなく、曲が終わると「THANKS A LOT」と丁寧に御挨拶していました。

曲がないということもあり、SUPERGRASSよりも短い45分ほどのライブだったけど、自然に体が動いてしまっていたせいか、終わってみたら汗びっしょりかいて、気持ちよく疲れていました。どんな感じか覗きにいったつもりが、すっかりハマって帰ってきた私です。フルアルバム出るのが待ち遠しいなあ。もちろんミニアルバムも買うぞ。


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