SHOH's LIVE REPORTS

Arch Enemy with Witchery (November 1,1999, Shinjuku Liquid Room, Tokyo)


間嵐のようだったので新宿リキッドルームまで行けるかどうか危ぶんだのです が、幸い夕方には雨が上がり、いつもの通り7階までの階段を登りました。

客の入りは6割くらいだったでしょうか。土曜の渋谷 ON AIR は満員だったそうで すから、平日で来られない人が多かったってことでしょうね。それだけに来てい る人たちは、なかなか気合の入った人が多かったです。なんてったって、入場す るとすぐに入り口付近にあるロッカーに持ち物すべてをほうり込み、フロア前方 に向かって走ってました。

軟弱者の私は、一段高くなったところに設置された椅子付きカウンターを狙った のですが、整理番号が146番だったにも関わらず、まだ空きがあったことでも、 いかにみんなが前のほうに行っちゃったかわかろうというもの。

最初の頃はそれでもフロアの後方にはほとんど人がいなくて寂しい感じだったの ですが、前座の WITCHERY が登場するころには、間隔が開いているとはいえほぼ全 体に人が散らばっている状態になりました。

で、その前座なんですが、最初に登場したとき、ヴォーカルの人、サングラスを して口の回りに髭を生やしているのかと思いました。おまけにいやに色白で、北 欧の人だからかなあ、なんて思っていたんですが、3曲目くらいになって、実は 顔を白塗りにして目のまわりにはメイクをし、口紅を塗っていることに気づきま した (^^;)。遠くからなのでよくわからなかったんです。

で、サテンのブラウスと黒のパンツの上にケープの付いた長いコートを着て、い かにも暑そう。が、じっと我慢の子でコートは脱がずにいます。どうやらあのコ ートはドラキュラ伯爵を模しているよう。バンド名から言って、そういうコンセ プトで曲作りをしているのでしょう(すみません、私、聴いたことありませんで した)。

他のメンバーはみんな黒っぽい服装ではあるものの、ふつうのメタルバンド風で メイクもしていません。ツインギターの片方とベーシストがめちゃくちゃ大きい! 近くに行ったら2メートルくらいあるんじゃないかしら?

で、肝心の音ですが、これがびっくりするくらいよかったです。ヴォーカルの声 はすごく深くてキモチのいいデス声(?)で、他の楽器の音が大きくて聞こえに くかったのが残念でした。多分、歌詞が聞き取れたらもっと興味深く聞けたんじ ゃないかなと思いますし。

バックの演奏はものすごくタイト。ヴォーカルのなりきりぶりといい、けっこう あちらではライヴをこなしているのかもしれませんね。極東の国にいきなりやっ てきて、自分たちの曲を知らない人のほうが多いオーディエンスを前にしている とは思えないくらい堂々としたプレイを聴かせてくれました。まあ、確かに目で 楽しめる要素が大きかったので、それもプラスになっていたとは思いますが、音 も確かによかったです。あとから出てきた ARCH ENEMY に比べると、さすがにツイ ンギターのハモリはしょぼい部分もありましたが、全体のまとまりはメインアク トよりもよかったと思いました。

途中でインスト(これが凄くよかった!)が入り、ヴォーカリストはいったん奥 に引っ込んだんですが、曲が終わるとコートを脱いで戻ってききました。で、ウ エストのベルトの両側に押し込んであったものを取り出して見せたんですが、こ れが右手にトンカチ(金槌)、左手に長いクサビ。そう、吸血鬼を封じ込めると きに使うアレです。もう、この時点で大笑いしてしまったのですが、そのク サビをマイクの前で叩いては歌うんですからたまりません。お腹が痛くなってし まいました。曲が終わると、「これで彼を墓に埋めることができた・・・」とお ごそかに言うんですが、その後に几帳面にそのトンカチとクサビを元の場所に収 める様子がまるで大工の見習いのようで、ここでまた大笑い。あまり笑っては失 礼かなとも思ったのですが、多分、彼ら自身も半分冗談で楽しみながらやってい るんでしょうから(本気でやってたら怖い)許してくれるでしょう。

最後にメンバー4人が去ったあと、体の大きな、でも顔はまだあどけないギタリ ストだけがステージに残って(彼がリーダーの Jensen だったようです)、マイクに向かってス タッフや聴衆への感謝の言葉を長々と語ったのでびっくりしました。まったくの 「素」で、さっきまでの芝居っ気はみじんもなく、とても素朴で真面目な雰囲気 に好感をもちました。で、「古いドイツの曲をやるよ」と言って、めちゃめちゃ 速い曲(あとで友人に聞いたら ACCEPT の "Fast As A Shark" だったそう)をやっておしまい。いやあ、実に楽し かったです。

ARCH ENEMY が始まると、途端にフロアの人間が半分に減ったように見えました。 帰っちゃったわけではなくて、それまで後方でゆったり見てた人たちがみんな前 に詰めちゃったんですね。あれ、最前近くの人はかなりキツかったんじゃ ないでしょうか。それでも、ステージダイブしたのはひとりだけで、あとはせい ぜい転がる程度。それよりも拳を振り上げて叫んでいる人のほうが多かったよう でした。

演奏そのものは、私が今まで見た彼らのライヴの中ではいちばん点数が低いかも。 リズム隊は素晴らしかったのですが、どうもギターとのバランスが悪いように感 じられて、いまひとつのめりこめませんでした。特にアモット弟のほうが、どの 曲でも音を外しているように聞こえてしまいました。さすがに兄とのキメのツイ ンリードでは、背筋がぞくぞくするような音を聴かせてはくれましたが、それは 最後のほうの2曲程度で、前半はかなり眠かったです。

思うに彼らの曲って割合構成が似ているので、アルバムも何枚か出し、曲数も増 え、ライヴ時間が長くなると、必然的に同じパターンの繰り返しになってしまい、 それが退屈さを呼ぶのかもしれない。演奏が素晴らしければ同じことの繰り返し でも満足なのですが、全体のバランスが崩れるとその問題が出てくるのかもしれ ませんね。でもまあ、単に私の波長が合わなかっただけかもしれませんが。

ヴォーカリストは、前回も感じましたが、完全にフロントマンになりましたね。 CATHEDRALの前座で初来日したときの彼と同一人物とはとても思えません。ただ、 急いで覚えなくてはならなかったためか、手近にいた人たち何人かをお手本にし てさっさとまとめちゃったような感じで、彼の個性が感じられないのが気の毒。 MCにしても母国語でないハンデもあって、丸暗記して使ってる( 例えば「Are you alright?!」と問いかけたあと、聴衆が答えるのを待たず、間髪を入れず に「I can't hear you!」と言ってしまうとか)印象が強かったです。一生懸命 なのはわかるのですが・・・。

終わってから出口に向かっている途中で、すでに着替えてステージを見ていたら しい WITCHERY のメンバーを何人か見かけましたが、やっぱり近くで見たら見上げ るように大きかったです。ヴォーカルの人はメークを落としていましたが(当た り前だ)、元々の顔立ちもはっきりしていて、まったくの別人という感じではあ りませんでした。なかなか知的な雰囲気で、ステージでトンカチ持ってた人とは 思えませんでした。


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