SHOH's LIVE REPORTS

Arch Enemy with Cathedral (April 13,1997, On Air East, Tokyo)


ルバムを聴いて一発で気に入ってしまい、この1週間というもの、かなり楽しみにしていた。

元々はカップリングのCATHEDARAL目当てに買ったチケットなのに、あっという間に逆転。というわけで、いつもなら待たされるのがいやでギリギリに入場するのに、きょうはちゃんと開場前に集合、しかも荷物はすべてコインロッカーに預けて手ぶらで入る。人の情けにすがってなんとか2列目に入る。アモット弟の立ち位置のせいか、最前は女の子ばかり(CATHEDRALのときもレオ側だしね)。

後ろのほうでは「やっぱり始まったら叫ばなあかんのかなあ」「あんまり冷静でいたらまずいんちゃうか」などという、いかにもこの春新入学で都会に出てきて、初めてメタル系のライブに来てみました、という会話が聞こえる。ほのぼのしてはいるが、逆に素人が後ろにいるかと思うとかなり怖い。

ステージの上はほとんど何もないシンプルなセット。ドラム台の後ろの黒いカーテンに1メートル×80センチくらいの白い布が透明のガムテープで留めてある。CATHEDRAL のロゴがプリントされているところを見ると、どうやらこれがバックドロップのつもりのようだ。うーむ、なんだかちょっとなあ。

サウンドチェックがなかなかすまなくて、開場が30分くらい押したのだが、開演はそれほど待たされなかった。客電が落ち、暗くなったステージにメンバーが登場する。なにしろ初めて見る人たちだから、最初のうちは誰が誰だかわからない。とりあえずマイクスタンドの前に立ったのがヴォーカルだろう。黒のジーンズの上に黒い長袖シャツの裾を出してきたシンプルな服装で、黒くて丸いサングラスをかけている。髪は肩くらいまでなんだと思うが、後ろでしばっていて、最後までそのまま。あんまりこの手のバンドのヴォーカルらしくなくて、クールな感じで想像していたよりかっこいい。

ヴォーカルの右、私が立っている前あたりには髭をはやして長髪のベーシストがこれまた黒っぽいシャツに黒の革パンツで立っている。その横にはさらさらの長い金髪にあずき色っぽいシャツ、黒の革パンツのアモット弟。色が白くて童顔で、めちゃくちゃ可愛い。こっちにきてよかったぁ(実はあまりよくなかったことがあとで判明したのだが)。

アモット兄はヴォーカルの向こうになってしまって、ほとんど見えなかった。ドラマーは最初から上半身裸で髪をうしろで束ねていたのか、元々あまりないのかよくわからなかったが、どの曲だったか、ドラム台の向こうでニコニコしながら叩いていたのがすごく印象的だった。一列に並んだ歯がシンバルの向こうにしっかり見えるんだもの。

私が持っているアルバム「BLACK EARTH」 には、メンバーって4人しか出てなかったんだけど、一体どの人が新しく増えた人なんだろう? いずれにしてもライナーに載ってる写真からは判別不能だった。

1曲目が始まった途端に、ものすごい圧迫。頭の上を人が跳ぶ跳ぶ。1曲の間に3、4人は前にかつぎだされ、横から出ていくのだけれど、またすぐに別の人がころがっていく。

しかし、無理もない。だってもうほんとにかっこいいんだもの。予想外によかったのがヴォーカルの声。アルバムでも迫力があって、うまいと思っていたけれど、ライブではさらにさらに底力のある深い声で、お腹のほうに響いてくるような気持ちよさがある。1曲目が始まって声が聞こえたとたんに、背筋がゾクゾクッとしてしまった。

そこに馬鹿テクのツインギター(これがもうほんとに巧い!)がからんで、ヘヴィーだけど叙情的な音の連なりが耳いっぱいに広がっていく。頭を振りながら陶然としてしまう。しかし、圧迫感はさらにさらに強まっていった。いまや、両肩に他人の腕がのっかって首がはさまれ、獄門さらし首のような状態。おまけにその腕で耳までふさがれてしまったので、音が聞こえなくなってしまう。

アモット弟が時々ファンサービスで前のほうに来てソロを弾いてくれたりするもので、そのときなんてもう後ろから突き出される腕でどつかれ放題。美しい金髪を振り乱しながら、ひとつのミスもなくとてつもなく難しいフレーズを弾きこなす彼をうっとり眺めたいのだけれど、状況がそれを許さない。

ヴォーカルは、MCらしいMCもなしに、淡々と曲を紹介していく。2曲おきくらいに「DO YOU WANT ONE MORE?」 とか聞くので、「それは普通アンコールで言うんだってば」などとステージングを教えたくなってしまう。ひょっとしてこの人たち、あんまりライブ慣れしていないのだろうか? ヴォーカルがサングラスをしているのは、恥ずかしいから(^^;)マサカ? でも、それにしては演奏はたまらなくタイトだ。

あっというまに本編が終わり、前座だからひょっとしてアンコールはないかも? と危惧していたのだが、ちゃんとやってくれた。しかも、最後の最後は、私が彼らのアルバムを買うきっかけになった「IRON MAIDEN TRIBUTE」 に収録されていた曲。このときの客の反応はすさまじかったなあ。元々の曲もいいんだけど、ツインギターのハモリなんて本家より完璧ってな具合で、なんかもう死ぬほど気持ちよかった。ただ、後半、マイクの調子が悪くなったのか、ヴォーカルの声が聞こえにくくなってしまったのが、残念だったけどね。

曲が終わり、ステージを去る前に、メンバーが前に出てきて握手を始めたもので、前のほうは狂乱状態に陥った。嵐の海の小舟のように翻弄される私の体は、あっというまに中央からはじき出され、気がついたら5列目くらいの端のほうまで流されていた。

いやあ、しかし、ひさびさにヘヴィメタルらしいライブを堪能したなあ。

あ、そういえば、ARCH ENEMYというバンド名、ヴォーカルの人(ということはメンバー全員がだと思うけど)はアーチ・エネミーと発音していた。そのあと出てきたCATHEDRAL のリー・ドリアンもアーチ・エネミーと発音していたから、きっとそれが正しい読み方なのでしょう。なんでまたアーク・エネミーになっちゃったんでしょうね、日本では? クイーンズライクの失敗で「CH」の発音に過敏になってたのかしら。


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