Altan (March 27,1997, Lafore Harajuku, Tokyo)
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東京2日間公演の2日目、「ダンシングナイト」のほうに行ってきました。本当にダンスチューンばっかりだと体力がもたないんじゃんないかと心配でしたが、実際にはしっとり聴かせる曲を間にはさみ、変化に富んだセットリストでした。
第一部のほうは、みんな床に座って聴いていて、第二部でようやく本来の形のオールスタンディングになったので、気分的にはむしろ「踊り足りない」だったかも。
例によってアルバム持ってないし、詳しいことはわからないのでノリだけで聴いていましたが、すごく緊密なユニットだなあ、という感じ。
ドーナル・ラニーのときは、ひとりひとりがソロミュージシャンとして一流の人ばかりだったせいか、ひとつずつの楽器が順にクローズアップされ、それぞれを楽しむという雰囲気でしたが、きょうはどの楽器がどうというより、全員の息がぴったり合ったアンサンブルの妙を堪能しました。
そんな中でもヴォーカルのマレードの存在は格別でした。あの声はまさに天からの贈り物ですね。彼女自身にというよりむしろ、私たち人類への、という意味で。微妙に震えるような歌い方は不安定になりそうなのに、まったくそんなことはなくて、初めての曲なのに昔からずっと聴いてきたかのような安らぎを与えてくれます。
スコットランドの詩人の詩を使ったという紹介のあったスローナンバーで、歌詞の一部に「TOKYO」を織り込んで歌ったあと、自分でおかしくなったのか声をあげて笑ってしまったのですが、その笑い声までも音楽的で美しくて、なんだか感動してしまいました。あんな女性がいつもそばにいて、あの声で話しかけたり、あの笑い声を聴かせてくれるなら、とても幸せな一生が送れそう、なんて思ってしまいました。
もうひとつ印象的だったのが、中年になると一気にお化粧が厚くなるアイルランドの女性ミュージシャンにしては珍しく、ほとんど素顔だったこと。とても素敵でした。←でも、だからといってアンコールで持って出てきたおしぼりで顔をふくオヤジのりはやめてくれ〜
さっき書いたスローな曲もそうだったのですが、この次のアルバムに入る予定の曲というのをずいぶんやってくれて、それがまたどれも素晴らしいものですから、古いアルバムも持っていないくせに、次のアルバムがとっても楽しみになってしまった私です。
ステージでのメンバーは和気藹々。みんな楽しみながら音楽をやっているのがよーくわかります。あとお酒も。特にギターの人はとっても楽しい性格で、お酒にまつわるメンバーの失敗談をばらしたり、マレードのMCに茶々を入れたりと、私たちを思い切り笑わせてくれました。アコーディオンの人だけソロタイムがありましたが、あれはソロアルバムを出したということに関係してたんでしょうか? 彼はアンコールのときにバイオリンを忘れてきたマレードのために、わざわざ自分のアコーディオンを床に置き、楽屋までバイオリンをとりに行ってあげてました。やさしい。
バウランの人だけサポートメンバーらしくて若い男性でしたが、なかなか甘いマスクだったためか、前のほうの若い女性の視線が集中してました。でも、彼のほうはあまり客席には興味がないようすで、いろんな種類のバウランを一心に叩いておりました。
アンコールでだったか、全員が持てる力のすべてを出しきったかのようなバトルを繰り広げた曲、凄かったですね。これでもかこれでもかと攻めてこられているようで、迎えうつこちらも汗びっしょりになってしまいました。
ギターとバイオリンが並んで弾いたところなんて、ロックっぽいメロディを奏でるギターとあくまでもトラッドでいくバイオリンとのなんともいえないコンビネーションが最高でした。
あと、ギターだけを伴奏に歌うマレードの歌も素敵だった。
アイリッシュミュージックのコンサートのときにいつも感じるのですが、「予習しなくては」なんてプレッシャーはまったく感じなくてすんで、実際に何も知らなくても十二分に楽しませてくれて、終わったときに爽快感に満ちている音楽だなあと思います。そして、それこそが音楽の原点なんだと思う。