SHOH'S CD REVIEW

JONNY LANG

LIE TO ME

1. LIE TO ME
2. DARKER SIDE
3. GOOD MORNING LITTLE SCHOOL GIRL
4. STILL WONDER
5. MATCHBOX
6. BACK FOR A TASTE OF YOUR LOVE
7. A QUITTER NEVER WINS
8. HIT THE GROUND RUNNING
9. RACK 'EM UP
10.WHEN I COME TO YOU
11.THERE'S GOTTA BE A CHANGE
12.MISSING YOUR LOVE
13.

A&M RECORDS 31454 0640 2/1996 USA I PRODUCED and ENGENEERED by DAVID Z

L.A.のホテルで、眠れない夜を過ごしたとき、ひと晩じゅうかけていたMTV。OFFSPRINGFOO FIGHTERS かかりまくりだったけど、ある瞬間、ほとんど朝に近い真夜中、いきなりぼーっとした頭をぐらぐらさせるような音が聞こえてきた。画面を見ると、ほっそりして貧乏そうな、 少年のような青年がギターを弾きながら歌っている。曲は「ど」が付くほどのブルース。

ルックスと音とのあまりのアンバランスさに(だって、短い癖のない金髪で、いかにも今どきの音楽をやりそうな子なんだもの)、しばしびっくりして見とれてしまった。でも、曲はものすごくいい。エモーショナルとしか形容のしようのないギターの音色も素晴らしい。翌日、ハリウッドのヴァージンに寄ったとき、迷わずこのアルバムを買ってしまった。

クレジットを見る限りでは、曲はほとんど外部のライターに依頼しているらしい。さすがに若過ぎて、泥々のブルースは書けないのかも。アイク・ターナーとか、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンなんて名前がある。ソニー・ボーイのは有名な GOOD MORNING LITTLE SCHOOL GIRL なんだけど、これはやはり若いだけあって今まで聴いてきたどのヴァージョンとも違って新鮮。

2曲だけ彼が書いた曲があるのだが、とても素直で癖のない音だ。どっちかというとブルースというよりR&Bに近いかもしれない。

彼の歌とギターには閉塞感がない。私はブルースには明るくないので、これが正しい評価なのかどうかわからないが、どこにも逃げ場のない黒人の苦しみやあきらめみたいなものは、当然ながらなくて、どちらかというと若者特有の、世の中すべてに対するじれったさみたいなものが、吹き出しているような感じだ。そこが過去の、いわゆる白人ブルースとはまったく違った感覚で私に迫ってくるのかもしれない。

それを強調しているのが、12曲中3曲を書いて、ピアノを担当している BRUCE MCCABE という人の色なんじゃないかなあ、という気がしてならない。彼のピアノは、ブルースのそれとはまったく違って、あくまでもきらびやかで都会的。そこに泥くさいギターと歌が乗ることで、白人がどんなに苦労しても所詮黒人には勝てないのさ、というブルース世界内階級制度を払拭してしまったような気がするのだ。変かしら。

でも、聴いてて気持ちよければ、それが本物だろうが亜流と呼ばれそうなものだろうが、どうでもいいことなのよね。

ふと思った。BLACK CROWES のクリス・ロビンソンに弟がいなくて、ひとりでギターも弾くようになっていたら、きっとこんなふうになってたんじゃないかな、って。(97/05/25 23:11記)


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