WALKING IN MEXICO



Part 2

ンクーバーだ。

なぜかわからないが、ここではトランジットするだけの客も、税関申告書を書かなければならない。機内で書いた申告書と引き換えにトランジット・カードをもらうと、そこはもうカナダ。自然の楽園をアピールするように、動物と花にちなんだお土産があふれている。

しかし、これからメキシコに行く人間にとって役に立つものは、はっきり言ってない。カウチンセーターなんか買って、どうするというのだ。 メープルシロップはおいしそうなんだけど・・・

ところが、通りがかったカフェテリアで、超巨大なケーキ類を見てしまった私の心は大きく揺れた。飛行機にもどるとすぐにまた食事が出るのはわかっている。しかし、あの大粒のブルーベリーがた〜っぷり入った、厚さ10センチほどもあるパイを見て動じない人間がいるだろうか・・・

「やっぱり買ってくるわ」
決然と席を立ち、カフェテリアに向かう私。
「これ、テイクアウトにしてください」
お姉さんは、ためらいもなくズバッと8センチ幅くらいに切りとり、紙の皿にのせてラップをかけてくれた。

「ぎぇ〜、そんなに大きいの!?」驚くW。
「うん。でも、おいし〜い。食べる?」
「ちょっとだけちょうだい」
「このパイ皮もおいしいのよぉ。あんまり脂っこくなくて、ビスケット生地みたいなタイプでしょ?」
「ブルーベリーが生っぽくておいしいわね。やわらかく煮すぎてないのがいい。日本のはこんなに大粒には育たないわよねえ」
「でも、この糊みたいなところを食べ過ぎると、おなかが苦しくなりそう」
「あ〜ん、食べきれない〜。機内に持ちこんでもいいかなあ」
「テイクアウトにしてくれたくらいだから平気よ」

そう言ってたくせに、再搭乗のときパイの皿を手にした私から逃れるように、さっさと乗りこんだWの後ろ姿を私はしっかり見た。


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