
WALKING ON A HILL OF HEATH
地下鉄ハムステッドの駅を出ると、目の前がヒース・ストリート。とてもわかりやすい。
交差点の端に立って、ぐるっと見回した印象では、落ち着いた高級商店街という雰囲気だ。さて、どっちに行こう・・・
体力のあるうちに、というわけでもないけれど、まずはゆるい坂になったヒース・ストリートを、北に向かって登り始めることにした。道の両側には、小さなレストランやおしゃれなキッチン用品の店、若者向けのファッション雑貨の店、おばさん向け(?)の衣料品店など、ふつうの小さな街と同じように種々雑多な店が並んでいる。
不動産屋のウインドーに貼りついて、カラー写真付きで紹介されている物件をチェックする。大きくて立派な家そのものも魅力的だし、どの家にも手入れのゆき届いた広い庭がついている。「こんな家に住めたらなあ」←ヒトリゴト
でも、やっぱり高い。なにしろ安いので4千万円くらい、超豪華なお屋敷になると1億円を越えている。そりゃあ、日本に比べたらはるかに安いけれど、私なんかには手が届かない(一応買う気はあったのだ)。
夏の平日の昼下がり、ということで街は眠ったような静けさ。通る人もほとんどいないし、店の中にも人の気配は感じられない。
それにしてもきれいな街だ。ロンドンの中心部から来たからよけいにそう感じるのかもしれないけれど、花と緑に囲まれて、家たちがとても幸せそうに見える。古い家もていねいに手入れされていて、この先いつまでも大事に住んでもらえそう。
三角屋根のついた小さな家は、2階のバルコニーと出窓を全部真っ白に塗って、そこにかわいいステンシル風の花を描いている。その近くの大きな煉瓦造りの家は、ちょっとお化け屋敷みたいな雰囲気があるけれど、トンカチトンカチと工事中の音がするところを見ると、もうすぐきれいに生まれ変わるのだろう。
通りのそこかしこに横道がついていて、それがまた緑に囲まれたとてもすてきな小道なもので、つい誘われて曲がってみる。歩いてみると、なんということはない、ただ住んでいる人が家に早く着くために作った私道のようなものなんだけれど、歩いていると自分が旅行者だということも忘れて、お使いから帰る子どものような気分になってしまう。
坂を登りきって、両側に家もなくなってきたころ、道は大きく4つに分かれる。池を中心にして、直角に交わるのがイースト・ヒース・ロード。目の前で二股に分かれているのが、左がノース・エンド・ウェイで、右がハムステッド・レーン。右も左もそれぞれヒースの原っぱを歩ける遊歩道になっていて、左がウエスト・ヒース、右がハムステッド・ヒースだ。「スパニヤード・ロード」と書かれた標識の語感に惹かれて、右側の茂みに入っていった。