映画・パント・フットボール@英国2005





「ナショナル・トレジャー」
(ネタバレはしていないつもりですが、公開済みの予告編もスチール写真もいっさい目に入れていない、と徹底して情報を遮断している方はお読みにならないほうがいいと思います)


地下鉄の駅のポスター。よ〜く見るとショーンもいます。DVDのカヴァーはこっちのヴァージョンらしいですね。ロンドンで3回、オックスフォードで2回見てきました。ロンドンは昨年「王の帰還」を見たのと同じレスタースクエアのオデオンで見るつもりだったのですが(昨年12月に行われたプレミアの会場でしたし)、なんとそこではやっていなかった! 集客力によって会場が変わるのだと思うのですが、そんなに入ってないのか・・・と思いつつまずは元旦の18:40からの回に。場所はトッテナム・コートロードから徒歩3分くらいのオデオンです。

前日に着いていた友人があらかじめチケットを買っておいてくれたのですが(昨年同じ時期の「王の帰還」のときはチケットを買うにも長蛇の列で、早く買わないと最悪の席しか残っていなかったりした)、客の入りは5割くらいかなあ。別に前もって買っておく必要はなさそうです。

いよいよ場内が暗くなり上映が始まったのですが、広告と予告編が多い! 映画1本分くらいやってるんじゃないかというほど(大袈裟)で、いい加減あきました。ただし、真ん中あたりに出てきたO2の広告は「どこかで聞いた声だな」と聞き耳を立てたら、ショーンの声でした。ちょっと得した気分(^.^)。

やっと本編が始まると、とにかく1回目なので話の筋を必死で追うだけであっという間に終わってしまいました。2時間30分というのはこの手の映画(家族連れ向け冒険映画)としては長いと思うのですが、長さは感じませんでした。とにかくショーンの出番が多いんですもの〜(*^.^*)。心の中でキャアキャア言ってるうちに終わっちゃった感じです。「トロイ」では、ショーンの出番は意外に多かったものの、出ていないときの展開が私的には見ているのがつらいものだったのですごく長く感じたのですが。この映画の場合はニコラス・ケイジがよほど嫌いな人でなければ気にならない長さだと思いました。

ひとつだけ、これはネタバレにはならないと思うし、知らないで見ると見過ごしてしまう可能性が高いので(私も一緒に見た友人から指摘されて気づいた)書いてしまいますが、ショーン演じるイアン・ハウが黄色いメモ用紙に文字を書いて謎解きをするシーンがあって、このときメモ用紙の右上にシェフィールド・ユナイテッドのロゴマーク(二つの剣がクロスしていて上にバラの花がのってる)がいたずら書きしてあります。映画をご覧の際にはご注目ください。

翌日はレスタースクエアの vue という映画館で見たのですが(値段がきのうのところより2ポンドくらい高く10.5ポンドだった!)、このときは昼間だったため客の数は20人くらいでした。で、ここではO2の広告はなし。あとからイギリスに住んでいる人に教えていただいたのですが、イギリスの映画館では上映映画の種類だけでなく上映場所、時間帯などによって付随する広告や予告が変わるそうです。子供向け、カップル向け、家族向けなど。

キャンディ袋どうせだったらショーンの声をもう一度聞きたかったので、ロンドンでの最後の鑑賞はトッテナム・コートロードのほうにしました。このときは昼間の回だったのですが、なんと5.8ポンドでした。観客は私のほかに3人(^_^;)。開場まで時間があったのでうろうろしていたらキャンディ売り場のセルフサービス用の紙袋が「ナショナル・トレジャー」模様なのを発見。この映画館で夜7時からの「ブリジット・ジョーンズ2」も見たのですが、こっちは12ポンド。そのわりには客も少なく(5人)、内容もお粗末でした。

オックスフォードには徒歩5分の圏内にオデオンが2件あって、最初に見たときは Magdalen Street のオデオンで、次に見ようとそこに行ったら George Street のオデオンに変わっていました。どちらもシネコン方式で収容人数もそれほど違うようには見えなかったのですが、どういう仕組みで回しているのが不思議です。

2度目に見たときは帰国する日の午前中でスーツケースを持って入ったのですが、日曜の午前中に映画を見る人なんていないらしく、客よりスタッフのほうが多いという状態でした。暇そうな案内係りのお兄さんが「この映画はインディアナ・ジョーンズみたいで面白いよ」と言うので、「実はこの映画を見るために日本から来て、もうこれで5回目なの」と言ったら呆れられました(^_^;)。でも、ショーンのファンだと行ったら、「彼はかっこいいよね。ハンサムだけどヒュー・グラントみたいに posh(お上品に気取った) じゃないのがいい」って。シャープの話とかしてすっかり意気投合しました(^_^;)。おかげで見ている間スーツケースを預かってもらえて大助かり。これもショーンのおかげです。←違う(^_^;)

さすがに5回目となるとそろそろ2時間半がこたえてきます。ショーンが出てこないとわかっている部分ではちょっと寝ちゃったりして。「旅の仲間」の踊る仔馬亭のシーンまでの状態と同じです(^_^;)。きのうインターネットカフェでメールをチェックしたときに、先に日本に帰った友人からショーンとニックが着ているパーカの メーカー がわかったので、商品を確定するためロゴの位置を確認するようにとの指令が入っていましたから、その部分だけは目を皿のようにして見ていましたが。ちなみにショーンは左胸、ニックは右腕です。

細かいところも色々と見えるようになってきます。どこでショーンが「舌出し」するかとか、アクションシーンでスタントマンの顔が映っちゃってるとことこか、フィルムのつなぎがおかしいとことか。

そういえばアメリカでの撮影が全部終了して、公開間近になってからイギリスで追加撮影をしましたが、あれはどこなんだろうと海外のMLで話題にしたところ、おそらくラストのほうのシーンではないかということで大方の意見が一致しました。ご覧になったあとで皆さんのご意見もお知らせください。

「ナショナル・トレジャー」とは全く関係がないのですが、今回ユーストンの駅でこんなポスターを見かけて、ちょっとニヤッとしてしまいました。おそらくそんな人は私だけだと思いますけれど。ガラスが光ってしまって見えにくいですが、The Return of the Trainと書いてあります。もっと電車を利用しようよ、という国鉄からの必死のアピールなんでしょうね。ひょっとして丸いトリミングは指輪のつもり?


LOTR三部作一挙上映

バービカン・センターのパンフから日本でもお台場で開催された三部作一挙上映に行ったのですが、それと似たようなものを予想していったらかなり違っていました。

日本では『旅の仲間』と『二つの塔』はSEE版の上映で、ロンドンでは3作とも劇場版というのがまず違うんですが、もっと違っていたのは観客。日本では圧倒的に映画から入ったと思われる若い(20〜30代中心)観客、しかも女性が圧倒的で、コスプレをしている方たちもたくさんいました。

バービカン・センターのパンフからロンドンのほうは、このイヴェントがトールキンの『指輪物語』が世の中に出てから50年というのと、この日がトールキンの誕生日であることを記念してのものだったためか、会場に来ているのは圧倒的に原作ファンと思われる年配(50〜60代)の方たちがメイン。まあ平日の昼間を1日つぶしての鑑賞ですから、働いている人は仕事を休まなくてはならないわけで、そのあたりも関係していたのかもしれません。

そういう観客層だったせいか、妙に新鮮な反応が多くて驚きました。日本の場合はすでに何十回、何百回と見ている人たちが多いので、まあ泣くところでは泣く人がいますけれど、笑うところで笑う人ってほとんどいませんよね。どんなに面白いギャグだって100回聞けば笑えません。ところがロンドンではほとんどの場所で笑う人がいるんですよ! こちらまで初心に返って見ることができました。




パントマイム「Aladdin」

このポスターが貼られていたのは一昨年ショーンが「マクベス」をやったアルベリー劇場の外壁。どうやら同じ劇場グループに属しているようです パントマイムというのは無言劇だと思っていたのですが、違うのですね。イギリスに古くからあるジャンルで元々は無言劇だったらしいのですが、今ではサーの言葉を借りると「パントマイムには劇的なものがすべて含まれている − 歌、踊り、詩、どたばた、独白、観客参加、スペクタクル、女装・男装、モラルとロマンスを重んじたいい話。家族で出かけるのにこれ以上何が必要だというのかね?」というもので、最大の特徴はステージからと客席からとの双方向で声に出しての掛け合いがあること。

劇場外観まさにその通りでした。話そのものは私たちが知っている『アラジンと魔法のランプ』よりもっと単純で子供向きになっていました。中国を舞台に平民の若者であるアラジンが皇帝の娘と恋に落ち、魔法のランプの助けを借りて結婚にこぎつけるまでのお話です。このアラジンの母親であるツワンキー夫人を演じるのがイアン・マッケラン。

劇場内部ネット上にステージ写真が出ているのでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、七変化どころか10回以上は着替えてるんじゃないかというくらいめまぐるしく衣装が変わり、そのどれもがよく似合っていました。私が気に入ったのはプッチーニ風の柄のミニワンピースとお揃いの帽子姿と、フィナーレのときの宝塚スターみたいな白いドレス。衣装を変えるごとに髪形(かつら)も靴も変えるのですから大変だと思います。私は3列目の席だったので美しい脚もよ〜く見えたのですが、きれいに脱毛してすべすべでした。黒のミニワンピで脚を上げて踊ったときには下着もちゃんと黒にしてるのが見えてしまいちょっとドキドキ。また、ドロップショルダーのベビードール風パジャマのときには右肩にある刺青(フェローシップでお揃いにいれたエルフ語の9)がよく見えました。

劇場ロビー舞台出身だけあって声にメリハリがあってよく通り、歌も上手でした。セリフの中に「ひとつの指輪がすべてを統べる」というLOTRからの一節を入れ込んで笑いをとるシーンも。ほかにもアドリブがいくつもあって大人の客に受けていました。

観客参加はとにかく多くて、おそらく客席のあちこちにこうしたパントをよく知っている人がいて先導しているのだと思うのですが(日本の歌舞伎でもそうですよね)、そうでなくても客席から自然に必要なときにはブーイングや掛け声が飛んでいました。初めはちょっと恥ずかしいのですが、まわりじゅうが一緒に叫んでいるので黙っているのはかえって目立つと、途中からは私も思い切り叫んでしまいました(^.^)。

プログラムの中から稽古風景主役のアラジンは日本の子供向けTV番組で司会をしているようなお兄さんで、アクがあまり強くなく、サーを引き立てるほうに徹しているような雰囲気でした。ちょっと抜けた道化役を男装して付け髭をした女性が演じていたのですが、この人がとても上手で可愛らしく、すっかりファンになってしまいました。パンフを見るとモーリン・リップマンというベテラン女優さんのようです。あと皇帝役を演じた男性も存在感があってなかなかでしたが、彼はTVで有名な俳優さんのようです。

カーテン・コールのときに上記のモーリンさんが「私たちの劇をご覧になった皆さんが幸せと喜びを胸にお帰りになれたら幸いです。そして世界の別の場所で苦しんでいる人々のために皆様の善意をお願いいたします」と津波被害者のための寄付を呼びかけ、彼女を初め出演者の何人かがポリバケツを持って出口に立ち、そこにお金を入れてもらっていました。モーリンさんのバケツにお金を入れたらにっこり笑って「Thank you for your generosity」と言ってもらえたのでうれしかったです(^.^)。

Old Vic 劇場の案内から最後に Old Vic Theatre の芸術監督であるアメリカ人俳優ケヴィン・スペイシー(経営難にあった劇場を彼が買い取って立て直した)によるイアン評。 「イアンはいまだかつて例のないほど偉大な俳優のひとりだ。彼が40年近く前にステージに立った劇場に再び戻ってくれたことを喜んで歓迎している。彼は新しい挑戦に対する心構えができていてパントマイムをやりたいと決意してくれた。それも Old Vic の伝統の一部である『Aladdin』で、これは最初に上演されたのは19世紀にまでさかのぼるものだ」




フットボール

生まれて初めてプロのサッカー試合を見てきました。おそらく一生で一度のことだと思います(^.^)。なんてったってルールも知らないほどのサッカー音痴の私がどうして行く気になったかというと、対戦がウェスト・ハム対シェフィールド・ユナイテッドだったからです。ロンドンで一緒だった友人が元々ウェスト・ハムの大ファンで、この試合があることがわかった途端に折角買ったLOTR三部作一挙上映を途中で抜けて見にいくことにした、というのを聞いて便乗しました。だってショーンがあれほど入れ込んでいるSUの試合なんて、一度は見てみたいじゃないですか。

ショーンより昔から好きなミュージシャン、ジョー・エリオットもこのチームのサポーターで、なのでチームのユニフォームも4〜5枚は持っているのですが、今回は席がウェスト・ハム側。同行する友人から「SUのユニフォームやマフラーは持ってこないように。まだ死にたくないから」と釘を刺されました。

さて、当日はバービカン・センターで『旅の仲間』を見たあと会場を抜け出してスタジアムに向かいました。乗り換え駅にはウェスト・ハムのマフラーを首に巻いた親子連れなどもいて気分が盛り上がります。目指す駅に近づくにつれ車内には小豆色と水色の数がどんどん増えていきました。

当日のプログラムUpton Park の駅を降りるとすぐ構内に店を出していたプログラム売りから当日のプログラムを購入。これはその日の試合のために作られ販売されるもので、あとから手に入れるのはかなり難しいのだそうです。映画『ドリーム・ゴール』(ショーン・ビーン主演のサッカー映画で原題は"When Saturday Comes")でショーンの弟役が集めていたのがこれですね。

スタジアムに向かう道の両側には食べ物を売る屋台がたくさん出ており、警官の数も多い。騎馬警官もいます。道を行く人たちはみんなこれからの試合への期待と興奮ではちきれんばかり。こちらまで妙に高揚した気分になってきました。

スタジアムへ入るにはゲートで中にいる係員にチケットを見せ、太い鉄棒で出来た刑務所みたいな入り口をひとりずつ入っていきます。パリの地下鉄の出口みたいな感じですが、こっちは上下にまったく開きがないのでどうやっても許可がなくては出入りできません。これならチケットのないファンが無理矢理押し入ろうとしても無理でしょうが、中で何かあって逃げようとする場合には命とりになるかも。

私たちの席はグランドを一望できるスタンドの上のほうで、屋根もあるので雨や雪が降っても安心という位置でした。もっともこの日は晴天で気温も高めだったため、防寒具を山ほど用意していった私としてはちょっと拍子抜けしました(^_^;)。それでも夕方になって日が落ちると冷えてきましたが。

私の隣は親子らしき女性ふたり。母親が50代後半〜60代前半、娘が20代後半〜30代前半といったところでしょうか。後ろの席には小学校低学年くらいの男の子がふたりとその父親たち。あまりコアな感じのファンがいなかったので内心ちょっと安心しました。すぐに暴れたりするような人のそばにはいたくないですもん。

それにしてもスタジアムの席というのは狭いです。体の小さな私にさえ狭いんだからイギリス人には苦痛なんじゃないでしょうか。席の前の空間も狭いので誰かがトイレに行ったり食べ物を買いに行ったりするたびにその列全員が立ち上がって通してあげなくてはなりません。これはかなり面倒でした。寒いせいかけっこう出入りが多かったもので。

試合が始まる前に津波被害者の追悼のために1分間の黙祷がありました。それまでざわざわしていたスタジアムが一気に静かになって、子供ですらちゃんと黙っていたのはさすがです。黙祷が始まる前に特に父親が注意していた様子もなかったのですが。

さて、試合のほうはというと、一緒に行った友人にも回りの人にも気の毒なほど素人目で見てもウェスト・ハムにいいところが全くない内容でした。ミスは多いし、チャンスは外すしで、回りの人たちがどんどんイライラしていくのが肌で感じられました。前の席ではピアスをした若者が頭を抱え、隣からは娘さんが声高に罵る声が聞こえてきますし、後ろの席では子供が「ウェスト・ハム負けるの」と無邪気に聞いたのに対して父親が「こんな試合は糞だ(This is a crap!)」と子供に言っちゃ駄目なんじゃないのお?というような答えを返したりして。

私としてはショーンやジョーがどれほど喜んでいるか(スタジアムに来ていないにしてもどこかで中継を見たり聞いてるしているに決まってます)と思うと心の中でSUが点を入れるたびに喝采してしまいました。怖いので(回りのファンも友人も)表面に出すことはしませんでしたが。

Photograph by Kenスタンドの一角にSUファンだけが固まったスペースがあり、100人くらいが来ていたのですが、その人たちが本当に熱狂的。最初から最後まで声をそろえての応援や歌でがんばるチームを盛り上げていました。出来ることならあの中で試合を見ていたかったです。

試合が終わり、しょんぼりしたりカリカリしたりしている大勢の人たちと駅までの長い回り道(いっせいに人がなだれ込むのを阻止するために警官によって迂回路が設けられていて10分くらい歩かされた)を行き、地下鉄に乗り込みました。車内はほとんどがウェスト・ハムのファンなのですが、なんと髪をピンクに染め、SUのユニフォームを来た若いカップルがいるではないですか。あまりにも挑発的なんじゃないかとちょっとドキドキしましたが、意外や意外、ウェスト・ハムのグッズを持ったおじさんと和やかにお話してました。まあ接戦の末負けたというのでもないので喧嘩をする気にもなれなかったのかもしれません。

ちょうど『二つの塔』が終わり、休憩時間に入ったあたりに映画館に帰着。休憩をとるインテリっぽい年配の方々に混ざってカフェで夕食をとっていると、いまさっきまでスタジアムでフットボールを見ていたというのが嘘みたいに思えました。

How to support a CRAP football team翌日、本屋を見て回っていたら『How to support a CRAP football team(いかにして駄目駄目なフットボール・チームを応援するか)』という本があり、パラパラと中を見るときのうの試合のあとでは実に書き手の心情が身につまされる内容だったので思わず買ってしまいました。

ところでこの日スタジアムの写真を何枚か撮ったはずなんですが、どういうわけか帰国してデジカメの中身をチェックしたらみつかりませんでした。間違って削除したのかとも思ったんですが、画像番号は抜けていないんですよねえ。ウェスト・ハムの呪いか?! なので上に載せてある写真は友人が撮ったものです。

Travelogue Top