《東京ライブ》江東・江戸川

汚染発覚から25年

続く六価クロムへの不安
『地表漏出』今も

跡地は広場に

住民グループ 地道な調査で警鐘

汚染規制の法律実現を目指す

有害物質・六価クロムの大量投棄が25年前に社会問題となった江東区大島と江戸川区小松川一帯の処理地で、いまだに六価クロムが地表などに漏出する事態が続いている。都は「住民への健康に影響はない」とし、地元でも「六価クロム」の記憶は風化しつつある。だが、不安が完全に払しょくされているわけではない。地元の主婦らでつくる市民グループ「公園のクロムを考える会」は、今も地道な調査を続け、警鐘を鳴らしている。
(石井 敬)


 都営新宿線東大島駅のそばに、「わんさか広場」「風の広場」と名付けられた2つの都立公園が広がっている。この地下一帯に大量の六価クロムが埋められていることを知る人は今、どのくらいいるだろうか。
 公園の周囲を毎月、リトマス試験紙を手に調べて歩いているのが「公園のクロムを考える会」のメンバーたち。
 「微量の六価クロムに長期間さらされる『微量暴露』の健康への影響は、世界保健機関(WHO)にもデータがない。私たち自身がモルモットのようなものです」。代表の中村雅子・江東区議は、問題の深刻さをこう説明する。
 汚染は過去の話ではない。
 風の広場では、住民の調べで2年前、地表に基準の数百倍と推定される六価クロムが流出していることが確認された。都が汚染を認めたのは、担当者が代わった昨年のこと。今年の夏、都が原因究明のために地下を掘ったところ、地中に放置されていた集水管の端から水が噴き出し、クロム漏出の原因になっていることが分かり、応急処置を施した。
 風の広場のそばの橋脚にはいまなお、しみ出した六価クロムの結晶が黄色く現れる。風の強い日にはその紛が飛散し、空中に舞う。
 わんさか広場では、六価クロムを処理する過程で生じる三価クロムが基準を超えて下水に流されており、都も下水道法違反の実態が続いていることを認めている。

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 現場一帯では日本化学工業(本社・江東区)が、戦前から半世紀にわたって大量の六価クロムを未処理のまま投葉。1975(昭和50)年、都が地下鉄用地に買った今の「わんさか広場」が汚染されていることが発覚し、社会問題化した。
 都と同社の裁判などを経て、風の広場は91年、わんさか広場は96年にオープン。ともに、六価クロムを還元剤で無害化処理した後、上を粘土層などで覆い公園にした。
 ところが、風の広場ではすぐに土壌から高濃度の六価クロムが漏出。不安を覚えた周辺の主婦らが92年に発足させたのが「考える会」だ。クロムの処理方法をめぐる都などを相手にした法廷闘争の傍ら、3年ほど前から公園周辺で毎月の定期調査を続けている。

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 現状について、都環境局の小松秀明・土壌地下水担当課長は「住民の健康に影響を与えるようなレベルの汚染はない」と強調しつつも、「急務なのは、処理工法が古い『風の広場』の恒久処理対策。子どもが遊ぶ場所でもあるので、地面の上に六価クロムが染み出さないように、日本化学工業に集水管設置などの再工事を指導している」と話す。同社も「処理についてはすべて都の指導に従う」(総務人事部)としているが、多額の費用がかかるせいか、対応は遅れがちのようだ。
 「考える会」の中村代表は「六価クロムの上を公園にすること自体が大きな間題だった。今後もしっかりとした処理がされているか監視を続けたい」と話す。

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 「考える会」の最終的な願いは、市街地での土壌汚染を規制する国の法律を実現させることだ。
 都は、15日の都議会で可決した改正公害防止条例で、全国で初めて開発業者に対して汚染の調査や早期処理を義務付けた。環境庁も19日、法規制の導入を視野に入れた土壌汚染対策の検討会を設置する。
 「国がつくる法律の内容をじっくり見ていきたい」と中村代表。会の活動が、立ち遅れていた行政の土壌汚染対策を後押ししていることは間違いない。

六価クロム クロム鉛の製造工程などで出る有害物質。鼻の軟骨に穴があいたり、皮膚に潰瘍(かいよう)ができるなど、工場労働者の被害が報告されており、発がん性も指摘されている。

2000年12月17日付 『東京新聞』より転載


※ なお、記事中に「リトマス試験紙」とあるのは、「クロム試験紙」の間違いです。


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