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1997.6.9 作成      2008.6.15 改定  執筆者 渡辺 巌(1991年アゾラの研究で日本農学賞受賞、国際稲研究所でアゾラを研究)
利用と性質  ニュース  導入指針  一部特定外来生物として規制 

count番目の訪問者です


アゾラの英語版もあります。写真が沢山あります。
English version here
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(特定外来生物法)が2005年6月から施行になりました。
法で規定された外来生物の飼育、輸入は厳しく規制されます。
外来アゾラ(オオアカウキクサ)のうちアゾラ・クリスタタが この法律でいう特定外来生物に指定されました。
(アゾラ・クリスタタ-Azolla cristata-は従来のA.microphylla, A. caroliniana, A. mexicanaをひっくるめたものです。 導入指針で使用をすすめている交雑種は別の種ということでこれの使用は従来通り可能。 施行は2006年2月1日)
環境省関連サイト-外来生物法
アゾラ導入指針
 いきさつの詳細
 アゾラの分類

最近のアゾラニュース

18 NEWアゾラの和名が提案されています。   詳細

17  長野県臼田高校農業クラブの地元のオオアカウキクサの保全と利用についての研究活動に第10回水大賞農林水産大臣賞が授与されました。(2008.6.13)
2008年6月12日 秋篠宮殿下.妃殿下ご臨席のもとで授賞式が行われました。

16 あちこちの池に交雑種と思われるアゾラの繁茂が観察されています(2007.3月)。琵琶湖西岸高島市乙女ヶ池、東岸湖北町、大阪城の濠 などで  

15  外来アゾラ(オオアカウキクサ)のうちAzolla cristataがこの法律でいう特定外来生物に指定されました。 詳細
14  日本国内のオオアカウキクサの分布とその種類の調査結果によると、在来種以外に導入種とおもわれるのが3種類見つかっています。 詳細

13 混乱していた、 section Azollaの分類の新しい提案が Van Hove (ベルギー)によってなされ、 A. microphylla, A. mexicana, A. carolinianaは統合されて、 A.cristataとされました。
このホームページでの分類も以後これに従います。

12 第4回アジア”アイガモ水稲同時作シンポジウム”が中国江蘇省鎮江で開かれ、アゾラを組み込んだシステムも展示されました。

その他のニュースはアゾラのニュース にあります。

追加ページ情報

アゾラをめぐる植物遷移 新規 (2007.3.25)

日本のアゾラの分布詳細 (2005.7.17)

section Azollaの分類法詳細 (2005.7.17)

中国でのアゾラ利用が戻ってきました (2004.7.25)

掛川のため池でのオオアカウキクサの大発生(2003年5月)

アゾラによる水田雑草抑制の三重県農家の実践例を紹介しました。

アゾラ利用についての質問と回答を用意しました

 特集ーーベトナムのアゾラ利用の過去(1979年)
 1979年当時の北ベトナムでのアゾラ水田緑肥使用状況を示す歴史的記録

   はじめへもどる


アゾラとその利用

A.microphylla Incorporation
左 Azolla microphylla 右 アゾラを鋤こんでいるフィリピンの農民


1・1  アゾラとは

アゾラ(Azolla)としてすでに名が通っているが、日本名はアカウキクサで、属の名前である。水田・小さな池や運河、潅漑路などの水面に浮いて生育している大きさ1ー3cmほどの 水生シダである。 日本産のものは中部地方より南に分布しているアカウキクサAzolla imbricataとこの種よりやや北のほうに分布している(北限は関東地方北部,北陸地方南部)オオアカウキクサ A. japonica  の二種である。 かってはかなり広く排水の悪い水田に分布していたが、排水の改良と除草剤の利用で分布はかなり稀になってしまった。それでも山間の湿田に見られることがある。
<新規追加>最近の研究により,オオアカウキクサには遺伝的に区別できる二つの型(大和型と但馬型)があることが判明した。 (分布図はここをクリック)
。  
このことを報告する論文発表されました。
WATANABE Iwao, Manami SAWAMOTO, Akiko NAKAGAWA, Yasuo KOWYAMA and Takeshi SUZUKI (1999) Diversity of Azolla japonica in Japan, analyzed by random amplified polymorphic DNA. Journal of Japanese Botany 74{3):142-149
 
通常は栄養繁殖で増える。ときには生殖繁殖もする。
世界中には7種のものが、温帯・熱帯に広く分布している。 種名とそのおもな分布地、特徴などは表に示した。

    
A.nilotica Hybrid
A.nilotica
      中央アフリカ産の大型アゾラ、長さ15センチにもなる。
右 アゾラ雑種MI4030
    図の左、母親A. microphylla (高温耐性) 右、父親A. filiculoides (低温耐性)、中央、雑種(高温耐性)生育よく窒素含量高い。


アゾラの種類
アゾラの種とその特徴ー1
節(section)種名原産地雌(大)胞子のう雄(小)胞子のうその他
RhizospermaA. nilotica中央ー東アフリカFloat 9枚、Massulaeの突起わずか胞子のう果4個組み
RhizospermaA. pinnataアジア、オセニア、アフリカFloat 9枚Massulaeの突起にかぎなし胞子のう果2個組み、茎にも突起あり
AzollaA.filiculoidesラテンアメリカFloat 3枚Massulaeの突起にかぎあり、隔壁はないか1つ胞子のう果2個組み、葉の突起は細長く1細胞
AzollaA.rubraオセニアFloat 3枚Massulaeの突起にかぎあり、隔壁はないか1つ胞子のう果2個組み、葉の突起は小さく目立たない
AzollaA. cristataラテンアメリカFloat 3枚Massulaeの突起にかぎあり、隔壁は2つ以上胞子のう果2個組み、葉の突起は細長く2細胞以上

葉の突起の写真
  A. niloticaは他の種の染色体数2n=44と違って2n=52なのでTetrasporocarpia niloticaとする提案がある.
A. rubraをA. filiculoidesの亜種とする提案もある。
A. pinnataはA.p. subsp. asiatica (アジア原産)、.p.subsp. pinnata (オーストラリア、ニュウカレドニア原産)、A.p.subsp. africana(アフリカ原産)に分かれる。

 
A.cristataは区別が困難で混乱していたA. microphylla, A.mexicana, A. carolinianaを統合した (2005年)


日本産アゾラのの特徴
和名種名対応種名分布特徴
オオアカウキクサA.japonica 大和型A. filiculoides 関東以西(分布小)大型、重なって生育でき、そのとき上に向かって立ち上がる
葉の突起は細長く1細胞
 ” A.japonica 但馬型A. rubraに近い関東以西葉の表面の細胞の毛状突起わずか。ややずんぐり
アカウキクサA. imbricataA. pinnata subsp. asiatica静岡以南、沖縄葉序は三角形で互生

葉の突起の写真


これなら、ただの水草であるが、”水田のダイズ’ともいえる特徴をもっている。上下2枚重なった小葉の上の葉の下側にある小さな穴に空中の窒素ガスを同化できる窒素固定性らん藻(シアノバクテリア)が住んでいる。
アゾラはらん藻から窒素同化産物であるアンモニアを受け取り、窒素栄養をまかなっている。 そのためアゾラは窒素栄養分の少ない水生環境でもよく生育することができる。大豆が根の根粒の中にいる細菌の窒素固定能力のせいで、窒素の供給能力のすくない土壌でも育つと同じこと。
 アゾラの窒素固定能力は条件のよいところで1日10アールあたり300-500グラムくらいになる。熱帯の記録では1年間に50-100キログラムにもなる。 条件良ければ、2ー3日で倍になる速度でどんどん増殖する。 水面をびっしりおおった時には、新鮮重は10アールあたり3ー8トン、乾物重で150ー400キログラム,窒素で5ー15キログラムに達する。アゾラは普通,栄養繁殖で増殖するが、系統によっては時には生殖繁殖をする。 共生らん藻はいつもアゾラに住みこんでいる。生殖繁殖するときも、共生らん藻は母親の大胞子のう果から次の世代へ移る。したっがってマメ科植物の共生根粒菌のように接種する必要はない。
またマメ科植物では根粒ができて,さかんに窒素固定を始めるまでに発芽から時間がかかるのに,アゾラにはいつも共生らん藻がいるので,いつでも窒素固定ができる。

窒素固定については英文のサイトを参照してくださいBNF.HTM


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1.2 アゾラの増殖条件

アゾラを上手に育てるにはその好適な増殖条件を知る必要がある。
(水分)水草であるので,水のないところでは長く生存できない。アゾラという名は実は乾燥で死ぬという意味である。
土の表面に数センチの水があったところで良く生育する。 土が水で飽和している土壌では土の表面にへばりついている。 水田では排水後,土が乾くと死滅するので,非潅漑期では庭先の池かなにかで保存する必要がある。 逆に水が深すぎると水面に浮いたアゾラは稲の幼苗の先端にからみついて稲をいためる。
(風)これはアゾラの大敵である。 水田の片隅に寄ってしまう。 そのままにしておくとアゾラの密度が高すぎて,むれてアゾラの生育が落ちる。 台風のような強風では波でゆすられてアゾラは小さくちぎれてしまう。
(温度)日平均気温15ー30℃の範囲で増殖する。最適温度は大体25℃前後。 A. filiculoidesと日本産オオアカウキクサは高温に弱く,低温を好む。最適温度は大体20℃前後。日最高気温が30℃を超えると生育低下するが,A.filiculoidesとA. rubra以外は33℃くらいが生育最高気温。 生育の最低気温は10℃くらい。 零下5℃くらいまでは耐えられる。
  従って真夏と真冬の生育が問題。 暑いときは日除けをし,寒いときは温室かハウスで育てて保存する必要がある。 A. filiculoides,日本産オオアカウキクサは高温に弱く,低温を好む。 従って春先の生育には適しているが,7月以降の生育は落ちる。この時期にはA. microphyllaや日本産アカウキクサA. pinnataがよい。

temperature 図 アゾラの生育(一日あたり増殖率%)と日最高温度(三重県津市)との関係, FFI:A. filiculoides, MI:A. microphylla, HYB: Hybrids of A. microphylla with A. filiculoides

(光) 栄養が不足している条件では,強光下でアゾラはアントシアンによる赤い色になる。野外で生えている場合は大抵赤い。アカウキクサの名はこのことから来ている。 日陰や栄養状態の良いところでは緑色となる。真夏や真冬には赤くなる。
(無機栄養)アゾラは水中から養分を吸収する。 従って土から水への養分の供給がおそい場合は,それが生育の限定要因になる。燐酸の供給が一番問題になる。野外で生えているアゾラは大体燐欠乏になっている。
  したがって燐酸肥料を施すと生育が促される。土に燐酸肥料を施すと効き目が減るので,アゾラ植物に与えるようにする。 アゾラを接種する直前にアゾラの表面に水溶性燐酸肥料(重過燐酸のような)を平方メートル当たりP2O5で10ー30グラムやればよい。
(pH) pH4くらいまでの弱酸性がよい。アルカリ性では鉄欠乏で黄色くなる。
(害虫)ミズノメイガの仲間が主な害虫である。幼虫が絹糸状のトンネルをつくってそのなかにいるWebworm という Elophylaと蓑虫みたいな袋のなかにいる Case worm というEpheosispsis(いずれもPylarid-ミズノメイガに属する)。それ以外に中国ではユスリカも害虫とされている。  害虫被害は高温ほどひどくなる。ひどい場合は水面全面に生えていたアゾラが2ー3日でなめつくされてしまう。 熱帯でのアゾラ利用を難しくしているのは,主にこの害虫被害である。
(病気)リゾクトニアによる被害もみられるが,害虫によって傷んだものがやられるようだ。
 (健康なアゾラ)大きさが1 cm以上(生育悪いと3ー5ミリに細かくなる)で,横からみて二枚重なっている葉の厚さが1.0-1.5ミリくらいで二枚の葉が上下に口を開けている状態がよい。 根の長さは1-2cmでまっすぐ。 色は赤くてもよいが,枯れた褐色でないこと。


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2・アゾラの利用

2・1 アゾラ利用の歴史

アゾラに住み着いている共生的窒素固定らん藻のせいで,窒素含量の高いアゾラは水稲の緑肥として中国南部,ベトナム北部で長い間利用されてきた。
田植えの前1ー2カ月の間にアゾラを生やして田植え前にすき込むか,田植え後,稲の株の間に生やして,除草時にすき込むかしていた。 こうして10アール当たり3ー6キロの窒素を補給していた。
  しかし1985年ころから中国,ベトナムで市場経済の原則が導入されるにつれ,その緑肥としての利用は急速に減少した。 1980年にはフィリピンのミンダナオ島南コタバト州で水田の緑肥として利用された。 わが国では積極的に利用された例はあまりない。戦後静岡県の農家が水田緑肥として利用されたという報告はある。 日本では雑草としてその防除が試みられたことすらある。
しかしアゾラには単なる窒素肥料としての効果ばかりでなくいろいろな働きがあることが判っているので,もっと総合的にアゾラを利用する試みが中国福健省などでおこなわれた。窒素肥料としての効果以外にどんな効果があるだろうか?
(除草効果)アゾラが水面を覆うと下には光が届かない。 水田雑草の多くは発芽に光を必要とするので,雑草の発生が抑えられる。 アゾラを水田に使ったフィリピンの農民にたいする調査では除草労働と除草剤の使用が減少したという。
(水中の養分集積効果) 田面水中の養分はそのままでは稲に利用されにくい。アゾラは田面水中の養分たとえばカリを吸収して体にため込む。分解後この成分は稲に利用される。中国での試験によれば,アゾラは稲が必要とするカリの3分の1は吸収するという。 またアゾラが覆っているところに窒素肥料を施すと,窒素分はアゾラに吸収されるし,アゾラの下の田面水のPHが低いので,施した窒素肥料のアンモニウムの揮散(アルカリ性で起こる)が抑えられ,窒素肥料の損失が防げる。
(動物の餌としての利用) アゾラは古くから豚,家鴨,淡水魚の餌として利用されてきた。 窒素分・つまり蛋白分(20ー30%)に富んでいるが,メチオニン,シスチンなどの硫黄を含むアミノ酸が不足するので,穀物性飼料の補給がいる。家鴨,淡水魚は田に生えているアゾラを食べてくれるので,動物からの排泄物は稲の栄養分となる。 アゾラの種類と生育状態で栄養価がかなり異なり,A. microphyllaがもっとも良く,動物による嗜好度も高い。 A.pinnataやA.filiculoidesはやや落ちる。 A.filiculoidesは密度が高くなると,茎が上に伸びてくる。こうなるとほとんど栄養価がなくなる。 市販の飼料には乾物で10%まで,湿ったアゾラで倍量まで混ぜても飼養価値は変わらない。
そのはか水質汚染除去,蚊の発生(従ってマラリアの発生も)防止などの効果がある。
(アゾラは雑草か?ーー追加) 雑草図鑑にはアゾラは水田の雑草とされている。 田植え直後の稲が小さいとき、深水となり、田の一方に吹き寄せられたアゾラが厚いマットになって稲の頂部にかぶさると稲の生育を阻害する。アゾラが水面をおおうと水温は1度くらい低下するけれど、アゾラが旺盛に生育するのは20度以上のときなので、この温度なら多少水温が低下しても稲の生育、収量に影響しない。 ただアゾラが大量にかんがい路に流れ込み、取水口や排水口をつまらせることがある。 アゾラの価値を知らない人には雑草と誤解されるので、隣近所の水田にアゾラが流れ込まないように注意したほうがよい。

2・2  水田での総合的利用

このようにアゾラは多様な機能があるので,単に窒素肥料として使うのはもったいない。窒素肥料としての利用が急激に減少するに伴い,アゾラの総合的利用が試みられ,一部の地域では試験場や篤農家の指導で成果があがった。
  窒素肥料としてのみ利用するのではせっかくアゾラの体内にたまったアミノ酸・ビタミンなどの栄養素が失われるばかりか,窒素成分の稲にたいする利用率も低く,利用されなかった,窒素分は環境を汚染する。 総合的利用では,まずアゾラが家畜(豚や家禽類)または魚に利用され,その排泄物が水稲に栄養分を与えるという二重の効果が現れるこの方法だと窒素分の損失は少なくなる。中国福建省・農業科学院の15Nで印を付けたアゾラを用いた実験によるとアゾラと稲だけの場合,施したアゾラの窒素の40%が損失したのに反し,魚を組み合わせた場合,損失は15%に減ったという。
 経済的にみると,農家は稲以外に魚や家畜の産物を売って余計な収入を得ることができる。 さらに水面を覆ったアゾラは雑草の生育を抑えるので,除草労力や除草剤の使用量を減らすことができる。 一方,魚や家禽は水中のアゾラの害虫を捕食するらしい。
中国福建省の山間部(建寧チェンニン県)では魚・アゾラ・稲を組み合わせて高収入を得ている。
 フィリピンのパナイ島の一篤農家ファンチラナンさんはアゾラ・家かも・稲の循環栽培を行っている。 アゾラは稲や野菜の肥料になるばかりでなく,家かもや豚の餌として利用し,さらに家畜の糞尿と余ったアゾラからバイオガスを取り,バイオガスプラントからの汚泥は水田にもどしアゾラの栄養を補う方法をとっている。
今日アゾラを単に窒素肥料として利用するのでは,魅力ない。その価値を高度に利用するには家畜,家禽,魚のためにも利用する方法が探られる必要がある。

2・3 アイガモー水稲栽培の実践者

Aigamo 1993年アイガモー水稲栽培の実践者古野さんの記事をある雑誌で読んだとき、すぐにこの農法にアゾラは使えるにちがいないと直感。早速古野さんに手紙を書き、アゾラの利用をすすめてみた。 すぐに返事があって、ぜひ試してみたいという。 早速アゾラを送る。 春先からよく生育し,従来のアイガモー水稲同時栽培にアゾラをもう一枚かませる1994年からの試みはうまくいった。
その後,合鴨ー水稲同時作にアゾラを組み込む試みは有機農法農家の間に静かに拡がりつつある。
どういう効果があったかだろうか。 アゾラのほうからいうと
(窒素供給)アゾラが空気中から取り込んだ窒素成分はカモの蛋白源となり,またイネの窒素となる。
(除草効果)アイガモも除草効果発揮するが,びっしりと水面を覆ったアゾラは除草効果があり,アイガモが小さくて雑草を食べきれないときにアゾラも除草効果発揮する。
一方,アイガモのほうからの効果は,
(害虫防除)アイガモは水生昆虫をよく食べる。おそらくアゾラの大敵のメイガの幼虫をアイガモが食べてくれるだろう。
(アゾラの均平化) 風が吹くとアゾラは田の片隅による。このままにしておくとアゾラの生育は悪くなる。ここにアイガモを入れると,アイガモがアゾラをかき散らして均平化してくれる。
(虫よび)アゾラが一面に生えたマットの上にはいろんな昆虫が止まりにくる。 ここをアイガモがぱくり。
(撹拌)アイガモが土をかきまわすので,土から燐酸がとけてきてアゾラに供給する。 普通水田でアゾラが燐酸欠乏をおこしやすいのは,土に燐酸がないのでなく,田面水へ溶解がおそい空で,土がかきまわされれば,燐酸が溶けやすくなるのであろう。
こういう両方が効果を及ぼしあうのを共生という。

合鴨ーアゾラー水稲同時作の効果

<新規追加>

成分 効果 人工物
合鴨 かき回しによる耕起除草 耕耘機
発芽雑草を食う 除草剤
水が濁る(多分アンモニア揮散防止) 尿素分解阻害剤
稲害虫(ウンカなど)を食う 殺虫剤
アゾラ害虫(ミズノメイガ)を食う 殺虫剤
糞の栄養分(稲とアゾラに) 肥料
アゾラ チッソ固定 チッソ肥料
合鴨の餌 人工飼料
雑草発芽防止(表面被覆) 除草剤

Azolla-effect

アイガモーアゾラー水稲栽培ではアゾラとらん藻の共生のほかに,アイガモーアゾラの共生があるともいえよう。
アゾラが稲の出穂まで田に生えていると,稲は窒素過多になり,倒伏や米質低下を起こしやすいので,アゾラを除去したほうがよい。古野さんはアイガモを放って食べさせて除去した。
鹿児島の福永大悟さんも実践者の一人だが,アゾラの良い点,悪い点をつぎのようにまとめています(NIFTY フォーラムFAGRIC room-5-00267)。
良い点
1、空気中の窒素を固定するから、レンゲと同じ効力がある
2、水面を覆うから雑草の抑制に役立つ
3、アイガモと一緒に入れるとアイガモの餌になる
悪い点
1、繁殖力が旺盛でいつまでも消えないので9月になって
  枯れて、後から窒素が効いてくる。モンガレになりやすい   管理が大変。
2、水面を全面に覆うと水が暖まらない。真夏のアゾラ水田に入ると   足がひんやりとするくらい冷えている。
  新規追加 稲苗が小さいときに水深が深いと、風にふかれたり、合鴨で寄せられたり   して、水田の一方にアゾラがかたまると、稲の葉先にへばりつき、稲を痛める。
3、他人の水田に入ると害草として嫌われ、文句を言われる。
4、霜に弱いので越冬しないと思われたが、意外と根は土中や畦草の下に隠れて   いて、翌年も出てくる。
5、除草剤に弱い 

福永大悟さんのホームペイジ
合鴨水稲同時作掲示板


アゾラが潅漑路に流れないよう注意しましょう。


南アフリカやポルトガルではA.filiculoides(5 cmくらになる)が河や湖を覆って問題になってます。

Aigamo-book
古野隆雄さんの ”アイガモ水稲同時作” が農文協から出版されました。 ここに古野さんのアイガモ水田でのアゾラ利用法が(62ページ「アゾラの能力とその魅力」)詳しく述べられています。


農文協(農山漁村文化協会)へはここをクリック

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3・ まとめ

一枚の田で肥料をつくり,土を耕し,雑草もとり,害虫の退治もやるのが,アゾラとアイガモという生物である。現代農業は生物がやっていたことを機械や化学物質で置き換えてしっまった。これを進歩と勘違いしていたのが,現代の地球環境汚染をもたらした発想であろう。

4・ 主要な文献

アゾラ全般についての解説

Lumpkin T.A. and Plucknett D.L. (1982) Azolla as a Green Manure: Use and Management in Crop Production, Westview Tropical Agriculture Series, No.5. Westview Press Inc., Colorado, 230 pp.
(アゾラの利用の歴史やアゾラの植物生理の基本を述べている)
<新規追加>Wagner G.M. 1997 Azolla:a review of its biology and utilization. Botanical Review 63(1):1-26.
(アゾラの利用の歴史やアゾラの植物生理を述べているの最近の総説)
汐見信行・鬼頭俊治・矢田敏晃(1986)アカウキクサ(Azolla)の利用,生物科学 38(2)66-72
(アゾラを水質浄化に利用する試みの解説)
Anonym. (1987) Azolla Utilization, IRRI, Philippines, 296pp
(1985年福建省農業科学院で開かれたアゾラの国際会議のプロシーディング。アゾラについての基礎から応用までの広い範囲を扱っている。27編の論文を納めている)
劉中柱・張偉文(1989) 中国満紅江,農業出版社,北京,429pp.
(アゾラの基礎・利用について詳しく述べた単行本。著者は福建省農業科学院の人・中国語)
渡辺巌 (1989) 生物窒素固定研究における最近の成果(18) アカウキクサとランソウの共生による窒素固定, 農業と園芸 64,(11)1318-1326
(主としてアゾラ-ラン藻共生系の窒素固定についての解説)
渡辺巌 (1991)アゾラ.ラン藻共生系の窒素固定に関する研究とその応用 肥料科学,14, 85-114
(アゾラ-ラン藻共生系の窒素固定についての渡辺巌のIRRIでの研究の解説)
渡辺巌 ,川島圭子,杉井志穂 (1996) 本邦における導入アゾラの生育について,熱帯農業40(3):123-130
 (日本でのアゾラの生育、とくに温度との関係) 汐見信行・鬼頭俊治・佐野寛 (1992)淡水性シダ植物・アゾラのため池での栽培とその資源化 日本化学会誌,1992,(5),512-516
(アゾラを水質浄化に利用する試みの解説・飼料利用とバイオガス生産についても報告あり)
渡辺巌 (1992)ラン藻とアゾラの共生ー共生的窒素固定の機構とその利用,化学と生物 30, (12), 820-829
(アゾラ-ラン藻共生系の窒素固定についてのその後の研究成果の解説)
Watanabe, I. and Liu C.C. (1992) Improving nitrogen fixing systems and integrating them into sustsainable rice farming. Plant Soil, 141, 57-67
(アゾラの総合利用についての可能性を論じている)
Watanabe I (1994) Genetic Enhancement and Azolla Collection-Problems in Applying Azolla Anabaena Symbiosis.In: Nitrogen Fixation with Non-lLegumes, (Eds. Hegazi N.A., Fayez, M., and Monib M.) ,The American University in Cairo Press, Cairo, PP. 437-450
(アゾラの利用の問題点,遺伝的改良,遺伝資源について)
渡辺巌 (1995) 雑草を抑えて地力もアップ アゾラってどんな植物?, 現代農業1995ー6月号 294-299
(アゾラの水田での総合利用を目指した解説)
汐見信行、鬼頭俊而、渡辺巌 (2000)アカウキクサ属植物の飼料利用と「アイガモー稲作農法」への導入、 農業及び園芸 75(2):287-293R<新規追加>
FAO出版物
Annonym (1988) Bio and Organic Fertilizers: Prospects and Progress in Asia, RAPA publication Vol. 10, FAO, Regional Office for Asia and Pacific, Bangkok, 78pp.
(1988年9月に開かれたアジアでの有機肥料利用についての会議の報告)
Annonym (1988) The" Rice-Azolla-Fish" System, RAPA publication Vol. 4, FAO, Regional Office for Asia and Pacific, Bangkok, 35pp.
(福建省農業科学院の劉中柱氏の筆になる水田にアゾラと魚を栽培・利用する技術についての解説)
Van Hove C.(1989) Azolla and its multiple uses with emphasis on Africa. FAO,Rome, 52pp. ( 特にアフリカでの利用を念頭においた数多くの写真の入ったパンフレット,原著はフランス語で書かれており,フランス語版もある)
汐見信行・鬼頭俊治・矢田敏晃 (1987). アカウキクサの飼料としての可能性, 畜産の研究 41(4):523-526
アゾラの畜産・水産利用(総説)
Cagauan A., and Pullin S.V. (1994) Azolla in Aquaculture:Past, present and future. In:Recent Advances in Aquaculture V. (Eds. Muir J.T., and Roberts R.J.) Blackwell Science, Cambridge, pp. 104-130
渡辺巌はアゾラの700近い文献を所有していて、FileMakerProに記録されてます。文献探索をしたい方はご連絡ください。

IRRIのアゾラコレクション

Watanabe, I. Roger PA, Ladha J.K. And Van Hove C. (1992). Biofertilizer Germplasm Collection at IRRI, The International Rice Research Institute, Los Banos,Philippines, 66 pp.
(500近いアゾラコレクションのリストが掲載されている)

アゾラコレクションの入手法

日本では堺市学園町 大阪府立大学先端技術研究所 汐見信行氏(Tel 0722-36-2221)のところにある程度の数の系統が保存されている。
多数の系統をえたいときはIRRI(E mail: Tventura@cgnet.com またはJ.K.Ladha@cgnet.com ) に問い合わせること。


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アゾラの増殖法

1) まづ小さな池または水田の一画を利用して初期的に増殖。 アゾラの接種源をいきなり広い水田にぱらぱらと播いただけでは うまく育ちません。 まず小面積で増殖させます。
a) ビニールをはった池を使う。
3ー5平方メートルの広さの池を準備します。 それには地面を15センチくらい掘ったものか、地面のうえに四角い枠 (コンクリートブロックか角材で)をおいたもの用意します。 この上に上部なビニールシートを張ります。 ここに肥沃な火山灰土壌でない畑の土(水田の土だと水生雑草を同時に もちこみ好ましくない、火山灰土壌では燐酸を充分施すこと)を3ー5センチの暑さに拡げます。 そして水を張ります。 水深は土の表面3センチくらい。 土が沈むのをまってアゾラを接種します。 池がなく、アゾラの量少ない場合ではプラスチックの箱でもかまわない。
b) 水田の一画を使う。
水田の一画をプラスチックの波板または小さな畝で囲みます。
c) 接種法
まずアゾラの接種源は元気なアゾラを使います。 大きさは1センチ以上。横から見て,上下二枚のフロンド(小葉)の厚さが 1ー2ミリのもの。色は緑かきれいな赤。褐色ー灰色のものはよくありません。 接種密度が大事です。水面が半分以上おおわれるくらいの密度(400-800g/m2)が 最適。これは他の水生植物の発生をおさえるため。 面積は入手できたアゾラの 量にあわせる必要があります。池でも田でもこのような密度を保てるように仮の境を つくるとよい。
接種にあたっては手でほぐしながらまく。まいたあとで水の表面を棒で軽くたたきます。こらは上下ひくり返ったアゾラを正したり,からまったりしているアゾラをばらすためです。 接種後水溶性燐酸肥料(過燐酸石灰または重過燐酸石灰)を燐酸(P2O5)として 平方メートルあたり1-2グラムを施します。このときはアゾラの上にまくようにし, 土の表面に直接まかないこと。これは燐酸の土壌への吸着をできるだけ少なくするためです。
d) 管理法
水深は3ー5センチくらいにたもつ。アゾラ増殖して全面をおおい,さらに盛り上がって きたら密度高すぎます。密度高いと,A. filiculoidesでは茎が上方へ伸長しはじめます。 境の板などをとりもう少し広いところでさらに増殖させるか,半分くらい収穫して 別な池に接種します。燐酸肥料は2週間に1度くらい上記の率で施します。 水田に接種する前2ー3日まえに燐酸をあたえておけば,アゾラはリンを吸収し, 体内にたくわえますので,水田に接種したのちに燐酸肥料与える必要はありません。 夏は高温になり,アゾラの生育おとろえるので,木陰におくのが望ましいです。 あるいはかるくヨシズでおおうようにする。 冬はプラスチックの箱で育てたものをビニールハウスか加温可能なガラス室内で保存する。 5℃くらいまでなら死なない。10℃以下では成長がとまり、赤くなります。
2)水田での増殖
上記の方法で増やしたものを水田に接種する。やはり水面の半分くらいおおう密度が水田に接種。 接種量に応じて適当なしきり囲いをもうけてアゾラの密度を水田に接種にたもつ。 全面をおおうようになったら囲いをひろげる。 水管理がもっとも大切。イネが幼い(10センチ以下)ときに,水かさがふえ,アゾラが 田の一方に吹き寄せられると,イネの葉の先端にアゾラがからみつき,イネの生育をおさえる。 水深は浅くおさえるように注意する。
風で一方に吹き寄せられるとアゾラの生育が鈍るので,風向きに垂直に田をいくつかに 区切りそれぞれにアゾラを生育させるのがよい。 水田からの排水と一緒にアゾラが隣の田や水路に入らないように排水口にネットを張るか、 やや高い波形フェンスをあぜの内側に張ってアゾラが流れ出るのを防いでほしい。

新規(2003.2.13)アゾラによる水田雑草抑制の三重県農家の実践例を紹介しました。ここに増殖上の問題点がしめされています



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らん藻について

Anabaena Anabaena azollae
アゾラの葉の小孔にいる窒素固定共生らん藻

窒素固定らん藻とは

シアノバクテリア(らん藻) は多細胞または単細胞の微細藻類で、藻類の仲間に入っているが、実は細菌の仲間の原核生物である. 葉緑素を持っていて、光合成をして、生活できる点では藻類である.その多くは酸素ガスの低い条件で空中の窒素ガスをアンモニアに還元して、同化できる.この働きを 窒素固定作用 という.空気中でも窒素固定作用を行えるものもいて、その大部分は ヘテロシスト(異型細胞) という大きな細胞をもっており、その細胞でのみ、窒素固定が行われる. 上の図の連鎖状の細胞のなかに形の大きなヘテロシストがみられる(矢印で示したもの)。
らん藻には単独で生活する独立性のものと、宿主植物と 共生 して生活する共生型のものがある.
共生型のらん藻は固定したアンモニアを相手の植物に渡している. そしてヘテロシストの頻度は独立性のものより大である.コケ、シダ、ソテツのなかには窒素固定らん藻と共生しているものがある.被子植物ではGunneraという植物でみられる.シダではアゾラだけが窒素固定らん藻をかかえている.


Azollaという酒(松の司)が販売されています。 Sake AzollaLabel

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