小型昆虫の展肢法

photo&text なべ



 小型の昆虫,特に甲虫の展肢は極めて難しい.
大概は展肢を諦めて,そのまま台紙に貼り付けてしまうが,なんとも不恰好で冴えないものがある.
何とかそれなりの形に納められないかと考えていて,思いついたのがこの方法である.
名付けて『ラベル展肢法』である.以下,簡単に紹介してみようと思う.
 展肢に使うラベルは,極普通の文具シール(以下,ラベルと記す)である.
初めは両面テープでも試してみたのだが,粘着力が強過ぎて上手くいかなかった.小型種の展肢には,ラベル程度の粘着力が丁度良い様だ. 大きさも多彩なので,展肢する昆虫や数に合わせて選ぶとよい.
 ラベルの表面には,採集地・日付・採集者などのデータを記入しておく.タトウに仕舞うことが出来ないので,ここに書いて置いた方が無難だろう.
 次にラベル裏面を表にして,展肢台に画鋲等で貼り付ける.
この時使用する展肢台だが、私はスタイロフォーム(断熱材)にポリウレタンを貼り付けた物を使っているが,発砲スチロールでも充分だと思う.
小さな展肢台を用いる事で,実際に虫体を持っている様に展肢が行えるのでとても便利である.
 ラベルの粘着面に,甲虫などは裏返して軽く抑える.こうして,針やピンセットを用いて肢・触角などを適当に整えておく.
 あとは虫体を表に返して,針やピンセットで気に入った形に整えていく.慣れてくると,両手を使って針やピンセットの二刀流で展肢が行える様になってくる.
 隣に写っている画鋲と見比べて頂きたい.
これは小さなカミキリムシだが,脱脂綿を用いた展肢法ではとても難しい大きさである.この小ささになると,綿屑が符節に絡まって,大切な虫体の破損にも繋がり兼ねない.
 初めはラベルの粘着力に物足りなさを感じてしまうが,その弱さが逆に展肢に都合よく作用してくる.虫体を取り外す際、符節や触角を粘着面で破損してしまう様な事がないのだ.
 
 この方法で,コルリクワガタ程度の甲虫であれば,容易に展肢が行える.
脱脂綿の上で,くるくると踊ってしまい上手く展肢出来なかった経験をお持ちの方も多い事だろう.
こうして展肢を終えた個体を,改めて脱脂綿のタトウに収め直すのも良いだろう.私は,虫体が乾燥するまでの間,乾燥剤を入れたポリ容器に入れて保管している.粘着面を利用した展肢とは言え,乾燥時は時折,符節等の修正は施す必用はある様だ.
 今後,アセトンなどの油抜きとの相性も確かめる必用があるだろう.何れにせよ,この方法を用いる場合は,自己の責任に於いて実行して頂きたい.

この方法により,大切な虫体の破損に繋がっても,当方は一切の責任を負いかねる事も付け加えておく.


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