心血管異常を有する選手の運動
  1. 競技の適性に関する勧告

    (第16回Bethesdaカンファレンスより抜粋)

    各論

B.後天性弁膜症
  1. 僧帽弁狭窄症                                        重症度:                      

    軽症

    僧帽弁口面積が1.5C以上、あるいは運動にても肺動脈楔入 圧が                    20mmHg以下か肺動脈の収縮期圧が35mmHg以下

    中等症

    僧帽弁口面積が1.1〜1.4 C、あるいは運動にても肺動脈楔入 圧が25mmHg以下か肺動脈の収縮期圧が50mmHg以下

    重症

    僧帽弁口面積が1.1C未満、あるいは運動にても肺動脈楔入 圧が26mmHg以上か肺動脈の収縮期圧が50mmHg以上

    1. 洞調律で無症状の軽症例はすべての競技運動が可能。
    2. 心房細動を伴う軽症例、洞調律あるいは心房細動を伴う中等症例、安静時あるいは運動時の肺動脈の最大収縮期圧が50mmHg以下の場合は、低強度の運動(class1.B.)なら可能。一部の人では、中〜高強度の静的及び低強度の動的運動(class1.A.2)の中のいくつかは可能。
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    3. 重症例では心房細動の有無にかかわらず競技運動は禁止。
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  2. 僧帽弁閉鎖不全症

    重症度は左心室径と左室収縮機能によって決まる。

     
    1. 左心室径と左室機能が正常な洞調律の無症状例では、すべての競技運動が可能。
    2. 左心室が軽度拡大し安静時の左室機能が正常な洞調律あるいは心房細動の無症状例では、低強度の運動(class1.B.)なら可能。一部の人では、中〜高強度の静的及び低強度の動的運動(class1.A.2)の中のいくつかは可能。
    3. 左心室が明らかに拡大し安静時の左室機能がいくらかでも低下している場合は、症状の有無にかかわらず競技運動は禁止。
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  3. 大動脈弁狭窄症
    重症度:   
    軽症

    収縮期圧較差が 20mmHg以下

    中等症

    収縮期圧較差が21〜39mmHg

    重症

    収縮期圧較差が40mmHg以上

    1. 軽症例はすべての競技運動が可能
    2. 軽症〜中等症の無症状例は低強度(class1.B.)のすべての運動が可能。このうちの一部は中〜高強度の静的及び低強度の動的運動(class1.A.3)の中のいくつかは可能。この際、運動負荷テストによる運動耐容能、ST低下や不整脈の出現などが参考になる。
    3. 軽症〜中等症例で安静時あるいは運動にて心室性不整脈を認める場合は、低強度の運動(class1.B.)に限るべきである。
    4. 重症例あるいは症状のある中等症例は競技運動は禁止。
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  4. 大動脈弁閉鎖不全症
    重症度:

    軽症

    大動脈弁閉鎖不全の徴候が末梢で認められないか、認められて も軽度で、左心室のの大きさが正常

    中等症

    大動脈弁閉鎖不全の徴候を末梢で認めるが、左心室の拡大が 軽度〜中等で収縮機能が正常

    重症

    大動脈弁閉鎖不全の徴候を末梢で認めて、左心室の拡大が 高度かあるいは左室機能異常がある

    1. 軽症あるいは中等症で無症状例は低強度のすべての運動(class1.B.)が可能。このうちの一部は中〜高強度の動的および低強度の静的運動(class1.A.2)のいくつかは可能
    2. 安静時あるいは運動にて左心室性不整脈を認める軽症あるいは中等症例は、低強度の運動(class1.B.)に限るべきである
    3. 症状に関わらず重症例や軽症あるいは中等症でも症状を認める場合は、競技運動禁止
    4. 大動脈洞あるいは上行大動脈近位部に高度の拡張を認める場合は、競技運動禁止
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  5. 三尖弁閉鎖不全症
    1. 原発性三尖弁閉鎖不全症で無症状の場合は、重症度に関わらず、右房圧が20mmHg未満かつ右室機能が正常で右室収縮期圧の上昇がないものは、すべての競技運動が可能

  6. 三尖弁狭窄症
    1. 一般に三尖弁狭窄症はリュウマチ性心疾患(ほとんどが僧帽弁狭窄症)を伴う事が多い。この場合は、僧帽弁狭窄症の重症度に応じて運動の適性を考えるべきである
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  7. 連合弁膜症
    1. 一般的には競技運動に参加すべきでない。基本的には血行動態的に最も重症な部位に基づいてその部分の単独病変の勧告に準ずるべきである
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  8. 弁形成術あるいは人工弁置換後
    1. 僧帽弁術後の場合
      1. 競技運動の適性に関する勧告は、弁形成術後に残存する僧帽弁狭窄症あるいは僧帽弁閉鎖不全の重症度にもとずく。左室機能低下を認める場合は非手術例に準ずる
      2. 僧帽弁逸脱症にて弁輪形成術あるいは弁形成術を行った場合は、重症外傷を受けると修復が不可能なので衝撃を伴う運動(class2)は禁止。しかし低強度の運動(class1.B.)は可能。さらに一部の人は中〜高強度の動的および低強度の静的運動(class1.A.2)の中のいくつかは可能。
      3. 人工弁あるいは生体弁置換例で、抗凝固薬を服用しておらず、弁機能が正常で、左心機能もほぼ正常な場合は、低強度の運動(class1.B.)なら可能。さらに中〜高強度の動的および低強度の静的運動(class1.A.2)の中のいくつかは可能。なお、抗凝固剤を服用している場合は、衝撃を伴う運動(class2)は禁止。
    2. 大動脈弁術後の場合 
      1. 人工弁あるいは生体弁置換例で、抗凝固薬を服用しておらず、弁機能が正常で、左心機能もほぼ正常な場合は、低強度の運動(class1.B.)なら可能。一部の人では中〜高強度の動的および低強度の静的運動(class1.A.2)の中のいくつかは可能。
      2. 抗凝固剤を服用している場合は、衝撃を伴う運動(class2)は禁止。
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