裸足で散歩 ★★☆
(Barefoot in the Park)

1967 US
監督:ジーン・サックス
出演:ロバート・レッドフォード、ジェーン・フォンダ、シャルル・ボワイエ、ミルドレッド・ナトイック

左:ロバート・レッドフォード、右:ジェーン・フォンダ

ニール・サイモン戯曲の映画化であり、「裸足で散歩」と同様にジーン・サックスが監督した「おかしな二人」(1968)とともにサイモン映画の中で最も成功した作品です。ニューヨークに舞台が設定されるサイモン映画としては、「おかしな夫婦」(1970)や日本劇場未公開の「The Prisoner of Second Avenue」(1975)が挙げられますが、それら70年代の作品には大都会批判が多分に含まれていたのとは異なり、60年代に公開された「裸足で散歩」や「おかしな二人」には、無理矢理捜さなければそのような要素はほとんど見出せません。というよりも、そもそも「裸足で散歩」は、ロバート・レッドフォードとジェーン・フォンダ演ずる新婚夫婦の雨降って地固まる式の笑いと涙(はないかな?)とペーソスの、日本流にいえば吉本コメディのような作品なのです。実をいえば、このようなタイプの作品は、主役よりも脇役如何によって出来の良し悪しが決まることがよくあります。その点に関しては、屋根裏部屋の住人を演ずるシャルル・ボワイエ、ジェーン・フォンダの母親を演ずるミルドレッド・ナトイック、電話工事人を演ずるハーブ・エデルマンが実にユニークなタッチを加えていて作品に大きく貢献しています。主演二人に脇役三人が微妙に交錯して随所に楽しいシーンを見出せますが、その中でも殊に、二人が夫婦喧嘩中に運悪く電話工事にやって来たエンジニア(ハーブ・エデルマン)が、二人の間に挟まれてオロオロしているシーンは傑作です。「おかしな二人」のレビューで実例を挙げたようなニール・サイモン独特のセリフ廻しも健在であり、たとえばテネシー・ウイリアムズやハロルド・ピンターのようなシリアスなライターや、ベケットやブレヒトのような学校の教科書に登場しそうな劇作家の作品とは違った俗化された題材が軽快に捌かれていく様を見るのは、それはそれで大きな快感なのです。また、「裸足で散歩」は、現在でも現役のスーパースター、ロバート・レッドフォードの最も初期の頃の作品の1つであり、彼の初期の作品には「おかしな二人」以外にコメディはないことを考えてみると、その面でもかなり貴重な作品と見なせます。ダテ男レッドフォードが、酔っ払ってセントラル・パークの中を裸足で歩き廻り、ゴミ箱を頭から被っている様は確かに見ものです。最後に内容とは全く関係ありませんが、英語の表現に関してオヤといつも思う箇所があります。それは夫婦喧嘩中、ジェーン・フォンダがロバート・レッドフォードに

Six days doesn't a week make.

と言っているところで、恐らくこの意味は「6日間なんて1週間にもならないわ」というようなところであるように思われますが、一般的な英語の語順から考えると少し妙に見えます。これと似たような言い回しは他の映画(何であるかは忘れてしまいました)でも聞いたことがあり、日常会話でも本当にこのような言い方をするのかいつも疑問に思っています。


2002/11/24 by 雷小僧
(2008/11/04 revised by Hiroshi Iruma)
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