中部都市学会都市視察研究会に参加して

 高浜市については、3年ほど前に農協の仕事に係わらせていただいており、親近感を持っておりましたが、それのみならず、まちづくりにおける様々な取り組みには非常に興味をもっておりました。都市視察研究会において、市長さんをはじめやる気のある市職員の方々の発言を聞いて、その源の一面を拝見させてもらったような気がします。

「高浜市の財産は人財」:人口の量よりも質が問われる時代

 研究会の場では「人口5万人以下の市は詐欺だ」というような発言があり、全国でそんなところが一体どのくらいあるのだろうと思っていましたが、人口2万人以下のところも結構あり、 7,000人強というところ(北海道歌志内市)もあるようです。様々な指標の中でこれまで人口指標が最も重要な指標のようにいわれてきましたが、人口減少時代を迎えるにあたって、人口の量よりも人口の質が問われるような気がしています。「高浜市の財産は人財」との市長さんの発言は、まさにそれを象徴しているといえるでしょう。

まちづくりの指標をみる:1人当たり都市公園の増加指数は愛知県下30市のトップ

 都市間競争の時代といわれるようになり、様々な都市ランキングが発表されていますが、その指標の取り方は、まちづくりという観点からみると、どこか実感と離れているような気がします。まちづくりへの力の入れ具合をみるためにはストックではなく、ストックの変化を見る必要があるのではないかと考え、以前、1人当たり都市公園面積の増加指数を1つの指標として見たことがあります。高浜市は、ストックとしては愛知県下 30市の中で25位にとどまりましたが、増加指数では198593年の8年間で3.7倍にも増加しており、ダントツの1位となりました。

注目すべき小都市:残念なPR不足

 多くの都市がバブル崩壊の中で断念してしまった再開発を実現させたり、地域の個性をいかしたかわら美術館を建設したり、公営住宅でいち早くシルバーハウジングを実現させたり、その取り組みは、まさにまちづくりに着実に取り組んでいる市として注目すべき市であるといえるのではないでしょうか。

 ただ、残念に思うのは、このような取り組みがほとんど知られていないことです。高浜市のような小都市で再開発を実現したり、かわら美術館のようなものを作ったことはもっと自信をもってPRすべきではないでしょうか。内井昭蔵氏の作品であれば建築雑誌にとりあげられてもおかしくないはずなのに、掲載されていないのは何故でしょう。高浜市の次の展開は外に向かってアピールしていくことではないでしょうか。

高浜市の個性を生かす住宅施策を

 もう1つ感じることは住宅施策の重要性です。高浜市内を歩いてみると、落ち着いた街並みに出会い、どこか懐かしい感じがします。交通条件から名古屋市のベッドタウンとなり得なかったことが、高浜市の良さとして生きてきているような気がします。しかし、一部には生産緑地法の改正による市街化区域内農地の宅地並課税によって、高浜市内においても、コーポ形式の賃貸住宅が増加しました。全国一律の都市計画によって、高浜市の個性が失われ、名古屋市の近郊にどこにでもあるような街並みを形成させてしまうような恐れもあります。都市の個性を大切にしながら、いかに良質な住環境を形成していくか、大都市にはない良さを見いだし、それをまちづくりに活かしていくかが、これからの時代に要求されているといえるのではないでしょうか。

高浜ファンをまちづくりに活用しよう

 高浜市には、その材料とそれを実現するための人材があるような気がします。さらに、まちづくりの取り組みをPRすることによって、高浜ファンを作り、そのような外部の人の力をまちづくりに活用していくようなことが重要になってくるのではないでしょうか。私もその一人として、高浜市を応援していきたいと考えています。

(1995.12.24)

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