周比利(ビリー・チョウ)

香港映画で最もイカした悪役俳優と言えばこの人しかいない。その上背の高さといい、鈍そうに見えるのに繰り出すキックのスピードと破壊力といい、インパクトの大きいコスプレといい、現在の香港映画の悪役の中では存在感ではチャンピョンなのではないだろうか。

この人はジェット・リーとかなり共演しているので顔だけ見れば「あ、知ってる」っていう人はかなりいるだろう。若い頃はカナダでキックボクサーとして活躍し世界チャンピョンにもなっている。その後、「初代香港映画界の人さらい」こと呉思遠によって香港に連れてこられ、数々のA級、B級香港映画で悪役を演じてきた。中でもオレの印象が深い映画を挙げてみよう。

まずは誰が何といっても『フィスト・オブ・レジェンド/精武英雄』での藤田剛長官。その冷酷無比な鉄仮面ぶりや、スーパーキックの嵐でジェット・リーを追い詰めるその迫力は「これぞ悪役!」という見本!間違いなくビリー・チョウのベストだ。

次に挙げなければいけないのは、異論はなかろう『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地覇王』での大力王ある。反清復明を画策する大力王の初登場は巷でウワサの馬殴り!その後もガキ殴り!将軍殴り!馬踏まれ!とおよそ我々が考え付かないような数々のインパクトのあるビジュアルを連発していた。

他にも『バストロイド』での山本竜一役も忘れられないインパクトがあったし(若いしね)、『ペディキャブ・ドライバー』でのサモ・ハンとの激闘も忘れられない。他にも『香港レディ・レポーター』や『ハイ・リスク』などの作品でもこの人のド迫力の蹴りに出会える。デビュー作の『恋はいつも嘘からはじまる』ではサモ・ハンをサポートする二枚目役もカッコ良かった。

映画におけるこの人の役は、ともすればギャグにしかならないモノなのだが、そこに実力の伴った強烈なファイティング・スタイルが妙なリアリティをキャラクターに持たせて、我々に一度観たら忘れられないインパクトを与えてくれる。ファンとしては、何とかもう一本最上級のマーシャル・アーツ映画に最強の悪役として出演してほしい。