第二章:カードデータの設定

 カードデータの設定は、オリカ作成の作業の中でも最も楽しい作業の一つである。

 作成するキャラクターの性格やエピソードなどを思い返し、能力値はどれくらいが順当か、特殊能力はどんなものがふさわしいか、そういったことを考えているだけでも楽しいものだ。
 だが、バランスの取れた、製品版に混ぜても問題の生じないカードを作るにはそれなりのコツというものが必要となる。

 この章では、私がさほど多くもない量のオリカを作ってきた間に身につけた、そのコツについて書き記しておくことにする。

2.1:能力値の設定

2.1.1:能力値設定のセオリー

 能力値の設定方法にはいくつかのセオリーがある。

 これは多くのオリカ製作者が経験則的に身につけてきたものであり、このセオリーを守っておくと比較的簡単にバランスの取れた能力値設定ができるという便利なものだ。
 セオリー自体は簡単なもので、

 1:能力値の合計は13以下になるようにする。
 2:能力値の最大値は4以下になるようにする。

 と、たったこれだけである。

 1に関しては、製品版に能力値の合計が13を超えるキャラが少ないという事から来ている。
 具体的に例を挙げるとベーシックセットでは能力値合計が13を超えるキャラクターカードは柳川祐也(能力値合計14)と来栖川綾香(能力値合計16)の二枚しかなく、しかも、綾香は「マネージャー」というマイナスの特殊能力によってその高い能力値の使用機会を制限されている。

 オリカ作成の初心者は、原作のイメージや、作成するキャラクターに対する愛着に引っ張られてついつい高めに能力値の設定をしてしまいがちであるが、ここはぐっと我慢して13以下に抑えてみると後から見てうまいバランスになったと感じられるカードができるものである。

 2の方は製品版のマルチのカードを見てもらえれば一目瞭然であろう。
 マルチは根性の値こそ5であるが、その代償として残りの能力全てを1に設定されている。
 LFTCGのバランス的に素の状態で能力値5を持つということは、それだけ大きな代償を払わなければならないことなのである。

2.1.2:能力値設定の決定指標

 セオリーといえるほど一般的な了解が取れていることではないが、能力値の設定に関しては他にも細かなコツというものが存在する。
 能力値設定の決定指標というものもその一つだ。

 これも内容自体はさほど難しくはなく、

 能力値0=壊滅的に苦手、万年ビリ
 能力値1=苦手とする、平均以下の能力
 能力値2=平均
 能力値3=得意とする、クラスで一番〜学校で一番くらいの高さの能力
 能力値4=非常に得意とする、県代表〜日本一レベル
 能力値5=人外
 それ以上=ジョークカード限定

 といった指標を元に能力値の決定をするというだけのことである。

 この指標は製品版の数値と原作の設定などを比較して割り出したもので、例えば能力値4はエクストリーム学生チャンピオンの綾香の力、早が4であることなどから来ている。

 あと、これは全くの好みの問題であるが、私はキャラクターカードの能力値にはわざとばらつきを持たせるように意識している。
 そうした方が長所と短所(*)がはっきりしてカードとしてのメリハリがつくからだ。

*:
イベントカード「ダメージ返し」の登場により、必ずしも能力値が低い=短所とはならなくなったという意見もあるが、それはあくまで限られた状況での話。一般的な対戦を考えるとやはり能力値が低いことは昔と変わらず短所である。

2.2:特殊能力の設定

2.2.1:特殊能力の内容

 使っていて面白く、バランスも取れていて、なおかつキャラクターの特性に合った特殊能力をつけるようにする。

 ――と、一言で書くと簡単ではあるが、まあこれは理想論である。実際にはそうもいかず、試行錯誤させられるのが常であろう。
 特に問題となるのは特殊能力の内容の考案である。
 オリジナリティのある面白い内容で、ルール的にもバランス的にも問題がなく、なおかつキャラクターの特性に合っている特殊能力などというものがそうぽんぽん出て来るようならば苦労はしない。
 となると、やはり元ネタになるようなものを探したくなるのが人情である。
 そう考えて元ネタとして使いやすいものを順番に挙げていくと、

 1.製品版に存在する特殊能力の流用
 2.製品版に存在する特殊能力のアレンジ
 3.製品版のイベントカードなどの内容の特殊能力化
 4.他のTCGからの流用

 といった感じになるであろうか。

 どれを元ネタにするにせよ、特殊能力としてのバランスさえ取れていればそれで良いのだが、流用するにあたって元ネタ毎に長所、短所、注意点などがあるので、それをここでまとめておく。

1.製品版に存在する特殊能力の流用
長所: 製品版の特殊能力と同じものだけにルール的に問題が生じることがなく、またバランスも取れている。カードテキストの流用もそのまま利く場合が多く、テキスト表記について悩むことがない。
短所: オリジナリティに乏しい。
注意点: 複数の特殊能力を装備する場合には、製品版のキャラクターカードのお株を奪うような組み合わせは避ける。
例えば、「召喚」互換の能力と「超能力」互換の能力を同時に一枚のキャラクターカードにつけたりすると、芹香と琴音の存在意義が失われてしまう。
同様に製品版の特殊能力と内容的には同じであるが、コスト的にはずっと軽いなどというものも避ける。

2.製品版に存在する特殊能力のアレンジ
長所: 元が製品版の特殊能力だけにルール的に問題が生じることが少なく、またバランスも取れている。カードテキストの流用も利く場合が多く、テキスト表記について悩むことが少ない。
短所: オリジナリティに乏しい。便利すぎる能力にしてしまいがち。
注意点: 「1」と同様の注意点の他、アレンジと称して製品版の特殊能力を製作者にとって都合よい形に強化してしまいがちなので注意しなくてはならない。
特に「獣の力」などのブースト系の特殊能力をアレンジをしたものにこの傾向が強いので、ブースト後の攻撃力の上限は6まで、といったような自分なりの制限事項を設定しておくと良い。

3.製品版のイベントカードなどの内容の特殊能力化
長所: 元が製品版から来ているだけにルール的に問題が生じる可能性が少ない。また、カードテキストも部分的な変更をするだけでそのまま使えることが多い。
短所: バランス的に強くなりすぎることがある。
注意点: 短所の項目でも書いたように、回数制限+デッキの圧迫という要素のあるイベントカードやアイテムカードは、能力的に強力なものが多く、そのまま流用すると簡単にゲームバランスを崩してしまいかねない。イベントカード「ガセネタ」の使用コストがその他コスト一つであるのに対し、内容的に同じ特殊能力「志保ちゃん情報」の使用コストが自分消耗コスト+味方消耗コスト二つであるのはそのためである。
これを踏まえると、イベントカードなどを元にした特殊能力は使用条件に制限をつけたり、コストを重く設定するなどしてバランス調整をする必要がある。

4.他のTCGからの流用
長所: オリジナリティが高く、LFTCGの製品版では実現できなかったようなスタイルのプレイができる可能性がある。
短所: ルール的、バランス的に問題が生じる可能性が高い。カードテキストをLFTCG風に合わせるのに苦労することが多い。
注意点: 短所の項目でも書いたように、ルールの異なる別のTCGから持ってきた能力はそのまま使えないことが多く、それをLFTCGに合うように改変するためにはLFTCGのルールを細かい部分まで覚えていなくてはならない。
これは元ネタなしで考案した能力の場合も同様で、ルール的にうまく「ならす」ためには詳細なルールの知識が必要となってしまう。
カードテキストの問題も同様で、MTGからLFTCGに流れてきた人間が二人称表記として「あなた」という言葉を使ってしまうのがその好例である。

 このように後の方のものになればなるほど扱いが難しくなるので、初心者の内は無理にオリジナルの能力をつけようとはせず、1か2のパターンの特殊能力をつけるようにした方が失敗は少ない。

2.2.2:特殊能力の数

 一枚のキャラクターカードにつける特殊能力の数は二つ以内に収めるようにする(*1)。

 このセオリーもオリカ製作者の間では不文律的な常識となっている。
 このセオリーは元々、製品版のキャラクターカードの特殊能力が最大二つとなっていることから来ているのだが、それだけではなく、このセオリーに従った方がカードとしてのバランスが取りやすく、また、特殊能力が厳選されるためカードの特徴が明確になり、結果として良いカードができるという経験則からも来ているのだ。

 特殊能力を二つまでに絞れないというのは、まだまだまとめ方が下手であるという証拠。
 どうしてもうまくいかないという人は自分の作ろうとしているカードの性格(*2)を明確にしてから絞っていくとうまくいくだろう。

*1:
 ゲーム上全く意味を持たないジョーク的な特殊能力はこの制限に含まれない。
*2:
 TCG中の役割といった方が分かりやすいだろうか?
 例えば柏木耕一であれば、力、早系バトル専門のキャラになるし、来栖川芹香であれば壁作りメインのサポートキャラという性格になる。

2.2.3:特殊能力のバランス調整

 特殊能力のバランス調整の方法には、使用タイミングの制限、使用条件の設定、コストの重さの増減などがある。

 その中でも最も調整しやすいのは、やはりコストの重さの増減であろう。
 コストは重い順に、指定されたカードをゴミ箱送りにする(倒された扱いになる)、指定されたカードをゴミ箱送りにする(倒された扱いにはならない)、気力値減少、自分消耗コスト、味方消耗コスト、その他コストとなっているので、特殊能力の効果に見合うコストがどの程度であるのかを製品版のカードを参考にして決定すると良い。

 初心者の場合は、製作者の身びいきの分も考えて、最初に考えたコストよりも1ランク重めのコスト設定にしておくとバランスが取れることが多い。

 また、特殊能力のバランス調整は、その特殊能力単体で完結するようにしておかなくてはならない。
 特殊能力は強いけど能力値が弱いから、といったようにカード単位で考えて特殊能力のバランスを取ってしまうと、メイフィアに「複写」された時にとんでもなくゲームバランスを崩してしまうことがありえるからだ。

2.3:その他の能力設定

2.3.1:気力値

 キャラクターカードの打たれ強さを決定する気力値はカードのバランス調整の要となるものである。
 製品版のカードを見てみれば、強力な特殊能力を持つキャラクターカードほど気力値が低く設定されていることが分かるであろう。

 自分なりに満足のいく能力値、特殊能力の設定をした結果、バランス的に若干強く(弱く)なってしまったかな? と思ったらまず気力値をいじってみると良い。多くの場合、それだけでバランスが取れてくる。
 平均的なキャラクターカードの気力値は5であるようなので、バランス的に少し弱くしたいキャラの気力値は4に、逆に少し強くしたい場合は6にしてみると良い。

2.3.2:呼び出しコスト

 気力値を変更する形でバランス調整をしてみたものの、まだ満足ができないという時にはこの値を変更すると良い。
 基本の呼び出しコストを1と考えて、強いキャラは2に、弱いキャラは0に設定するとうまくバランスが調整できることがある。

2.3.3:属性
 属性に関しては特に書くべきことはない。
 作成しようとしているキャラクターカードのイメージに合った属性を割り振るだけの話だからだ。
 複数の属性を持つ方が有利だという意見もあるが、全ての属性を持っているのでもない限り、そう滅多やたらに有利になることもないと思われる。

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