リリィ・シュシュのすべて

Comment:
　現代を生きる中学生たちの、逃げ場のない青春映画。仲良く入学するも、かつあげ、援助交際、いじめ、不登校、暴力、レイプ・・・、時がたつに連れて、異常な世界へと変貌していく。
　「リリィシュシュだけがリアルだった。」
　この一言が意味するあまりに酷い現実を、観客は決して見過ごすことはできない。だが、全く回答も見つからないのである。岩井俊二は、このストーリーを、リアルでもファンタジーでもなく、ただ淡々と映像におさめる（ハイビジョンを用いた映像は機動力という点で画質よりも優秀であることをこの映画は証明している）。説教臭さもうさんくささも感じない。だから、あまりにサラリと描かれたこの世界を、理解するのは容易ではない。