北タイ、チェンセーン警察署に脱北者用支援物資を寄贈

北朝鮮難民救援基金  白浜和歌子

 10月22日、「北朝鮮に拉致された人々を救援する会チェンマイ(ARNKA)」代表の海老原智治さん(パヤップ大学タイ日センター専任講師)のご協力により、北部タイ国境、メコン川のほとりにあるチェンセーン警察署への脱北者用支援物資の手渡し寄贈を実現することができました。


 北京オリンピック後、再びタイへ流入する脱北者数が急増する中、チェンセーン警察署もその対応に追われ、収監される多数の脱北者の食事の確保はもとより、常備薬その他の日用品が不足して困っているとの情報を受け、今回、基金の救援活動の一環として同署への支援物資を手渡し寄贈した上、同警察署の署長さんから色々とお話を聞いてきました。以下、簡単に報告します。

 早朝チェンマイを車で出発、午前11時にチェンセーン警察署に到着。ちょうど脱北者を収監中であるとのことで、先ず脱北者専用の拘置所に案内されました。黒い鉄格子の狭い監房が数個あり、中央の監房には32人もの脱北者がぎゅう詰めで、脚を伸ばすスペースも無いまま皆、無言で膝をかかえて座している光景に少なからぬショックを受けました。

 前日到着した8人も含めて40人もの脱北者が収監されており、大半が20代・30代と思える女性で、男性はわずか3人、子どもが2人(中国人との間に生まれた子どもだとのこと)でした。ただし、監房の扉は開けっ放しにしてあり、数人は監房の外に座っていたりして、留置所といえども緊迫した雰囲気が無かったのが救いでした。署長さんのおっしゃるには、脱北者は犯罪者ではないし、そもそも保護を求めて自ら出頭してくるので署から逃げ出そうとする脱北者はまずいないからだとの説明に納得。

 今月だけで、収監した脱北者数は既に60人に達しているとのこと。タイは雨季が終わり乾季に入り始めているのでこれからさらに脱北者数の増加が予想されるので、今回の支援物資の寄贈は大変有難いとのことでした。

 中国からタイへ脱出するための費用が一人当たり約15万バーツ(約41万円)かかるが、脱北女性は大半が、中国で売春などにより脱出費用を稼ぐケースが多いとのこと。脱北者は殆どが船で来るが、メコン川のどこで降りて同警察署に行けばよいのかを中国人の付添い人(たぶんブローカー)が詳しく事前におしえるので迷うこともなく、チェンセーン警察署に来るとのことでした。

 ところで脱北者の取調べのために雇う通訳の費用(500バーツ)は署長のポケットマネーだそうです。(このような費用は韓国政府から出てもよいのではないかと思いますが。。。)

 一般的医薬品(頭痛薬・胃腸薬・軟膏など)は昨日チェンマイ市内で購入して持参したのですが、署内の担当者が、生理用品在庫が無くなりかけているため、脱北女性たちの間で奪い合いになっているとのことだったので、急遽、警察署近辺の店でダンボール二箱分2,400バーツ(約6,400円)を追加調達しました。また、夜は少々寒くなってきていることもあり、就寝時の毛布が20枚ほどあればよいのだがとのことだったのでこれも近所の店で追加調達して渡しました(20枚で2100バーツ(約5,670円)。

 チェンセーン警察署訪問後、車で45分余りの距離にあるメーサイのイミグレーションに行き、副所長と面談しました(脱北者は警察署から裁判所に送られ起訴・判決(通常は罰金刑)後にこのイミグレーションに移送され、目指す第3国に受け入れられるまで収容されます。韓国へ移送されるまでの収容期間は、現在約2ヶ月となっています)。ここには韓国大使館から毛布・本の差し入れがあり、医者も定期訪問するとのことで、脱北女性が出産するので病院に連れて行ったこともあるとのことでした。

 また、来月にチェンマイで開催される北朝鮮人権国際議員連盟の総会(11月27日〜29日)の最終日に視察ツアーの一環としての同イミグレーション視察を受け入れるよう要請しました。海老原さんによると、一昨年はすぐにOKされなかったのが、今回はその場でOKが出たので対応が改善されたとのことでしたが、今回の面談中に、同副所長は韓国のハナウォン視察にも行ったとの発言もあったので、北朝鮮難民問題に対する理解が深まったという見方もできるでしょう。チェンセーン警察署とは異なり、ここでは中央から予算が出ており、現在はその予算内で足りているとのお話に安堵しました。先週にはチェンマイの米国領事が同イミグレーションを訪問し、米国は脱北者をさらに受け入れる用意があると同所長に直接伝えたとの報告に、これも嬉しい動きであると励まされる思いがしました。

 正味10時間もの長時間運転に加えて通訳もしていただいた海老原さんには大変感謝です。基金は近年、国内外のNGOとの連携をさらに強化していますが、今回も他のNGOとの協働で基金の救援活動範囲を拡げることができた実例といえるのではないでしょうか。

  

警察署玄関に並べた支援物資一式

警察署玄関の真向かいに見えるメコン川