丸帆亭 萬釣報 #53 2000.12/24 更新                    
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てんぷら食ってひと休み!っと
[異議アリサイト] 更新休止
  

もう一年、やっと一年
当サイトの活動も一年の時が流れてしまいました。
今年は十六万坪もお台場のハゼも、食べるほどは釣れずに、江戸川のハゼで我慢です。こんなはずではなかったのにと、感慨無量也・・・。
 一年間のサイト来訪者の皆さん、ご支援をどうもありがとう。
今日をもちまして、当サイトの更新を休止いたします。
以降は”江戸前の海十六万坪を守る会”の公式サイトの更新に励む所存です。

 理由は、いくつかあるのですが、ほとんど個人的な問題です。個人サイトとして報道を続けるには、独自の取材が必要なのですが、運動に専念できるほどの時間がとれない現実をご理解して下さい。所詮は夜の時間を利用したデスクトップ活動ですので、その限界と言ったところです。
 同時に、この運動に関わる皆さまにも、やっとWeb報道の重要さがご理解いただけた事とも思い、そういった意味での一つの役割は終えたものと考えております。

 会の公式サイトでは、私個人の意見の発信はひかえねばなりませんし、また他の運動団体に関しての報道は、会の立場からの報道として判断しなければなりません。
 そういった事から個人サイトを続けて、言いたい事はコッチに書こうとの意図でしたが、さすがに2つのサイト運営は無理があり、更新も遅れがち、何故2つもサイトがあるのかも、わからないとの御指摘も多くなってきました。
 他の報道メディアと違い、Webサイトでの発信は基本にアクセス数があります。誰も見ないサイトは存在価値はありません。こういった問題のサイトとしては、ある程度のアクセスをいただく為にはかなりの更新頻度を要求されますから、「疲れた」というのが本音でもあります。

 しかしきっと、またいろいろ言いたくなるときが来ると信じ、発信停止も閉鎖もせずに更新休止というかたちにて1年の区切りとしておきます。とりあえずは公式サイトからのリンクもそのままに残し、公式サイトの更新情報だけをUpし続ける予定です。


 運動の総括をする立場にはありませんが、以下一年間の雑感を書いておきます。

 まず、運動を立ち上げるのが2年は遅かったというのが実感です。
今年9月の強行工事着工によって、今年の反対運動は事実上の敗北を見た事実。
運動の具体的成果は、工事着工を5ケ月ほど遅らせただけで、事業計画の図面どおりの埋立工事が進んでいること。
 現時点までの事実を素直に認めることと、運動から撤退することは違います。
今現在の時点でなら、工事中止に至ればまだ十六万坪の自然は守れる状態にありますので、もっと早急な運動の展開が必要なのですが、反対運動の動きはあまりに緩慢です。
 つまり、運動を広げるにはもっと長い時間が必要だということです。個人がこの運動に関われる時間は限られたものですし、専業できる環境を持ちえる方もいない現実では、たかだか1年間程度の運動で成果は得られなくて当然かもしれません。
もし、2年前ぐらいから運動を展開していたならと、あまり意味のないことを考えてしまいます。

 基本的にこのような公共事業は止められないとする意見も多く、それは都民、国民全体にしみ込んでいます。600万人が公共事業関連の仕事に従事し、その家族や派生する需要を受ける方まで含めれば、1.000万人以上の方が利益を享受しているのが我が国です。そこには、自然保護とか地球環境とかの概念が入り込むことは非常に困難です。
 個人としては自然を愛し、環境問題にも興味ある方も、明日の生活の糧とそれをハカリにかけることは普通はしません。
 この経済構造自体が自然保護の観点なしに考えても我が国の最も大きな病巣であること、そしてやがては日本経済の破綻に繋がることには、行政サイドならずとも気づいてはいるのでしょうが、もはや誰にも止めることは難しく、厭世観が蔓延し、将来に何の希望も持てない世紀末の世相となっている昨今だと思っています。

 国は敗れるかもしれません。それなら山河だけは残しておかないと、この国はなくなります。四季の美しいこの国の基本はやはり山河であり海です。それを破壊し続け、人間の大切な構成要素を破棄した結果が、今の日本の現実だとすれば、自然破壊を止め、再生に力尽せば、と、唯一の光明を目指した上の十六万坪の運動でもあるのです。

 
正視に耐えないこの光景を目に焼き付けておこう。
現在の十六万坪の姿です。
 
 
 そもそも、お台場でハゼを釣っていただけの私が、この十六万坪の埋立計画の実態を知り、「お台場でハゼが釣れなくなったら嫌だなー。」「十六万坪の価値を誰にも知られないうちに埋立してしまおうとする計画を、放っておいていいのだろうか?。」の2つの原点から始めた活動ですし、今でもその気持ちはとても強いものです。
 
 もう、シーズンも終りですから、書いてしまいますが、今年のハゼ釣り状況、最悪でした。初期のデキハゼの季節にも、お台場で例年みられる水底での行列はほとんどなく、個人的なタイミングの問題と思いたかったけど、船宿さんや水産研究の先生方に確認すればするほど悲惨なものでした。東京湾全体の不漁に輪をかけて湾奥での釣果は例年の1〜2割という感じで、ハゼのてんぷら船にハゼ天が出せないという状況まで起っていました。
 本来なら、港湾局の出鱈目アセスに対抗する為にも、十六万坪で100〜200という釣果を示したかった我々の思惑も、まったく実現できる状況からは遠いものでした。
 これは、研究者の話しでは、「初夏の大雨のせいではないか」「冬場の産卵から孵化の時期の条件で生存率が低かったせいでは」などと分析されていますが、ハゼは1年魚ですから、1度これだけのダメージを受けると、回復にはかなりの時間がかかると思われ、ひょっとしたら、江戸前のハゼは去年で終りだったのかも、と考え込んでいます。
 この運動には、船宿さんたちの参加も多い事を思い、シーズン中にはとても報道できなかった事情をお察し下さい。
 しかし、江戸前のハゼ釣りは十六万坪が埋立てられれば終りですから、もはや繕ってもしかたのない事実です。十六万坪の工事を今中止することが、唯一の江戸前ハゼ釣りの存亡をかけたチャンスだと、あえて言っておきます。


しかたなしに、江戸川放水路にボートを浮かべる丸帆亭 と その釣果、ヘボ釣り師の本領発揮、トホホ。

 運動の反省点と今後の方向についても少し触れておきますが、下手なことを書くと、[反対運動抑止マニュアル]となって利用されそうですので、これも簡単な雑感に留めます。
 こういった運動に必要なものは、基本的には"個人個人の熱い思いだ!”というのが持論です。その上に絶対に必要な"人材”と"活動資金”が加わります。"人材”の基本はやはり個人の熱い思いであり、既成の団体や組織の”人材”の部分とは若干のニュアンスが違うようです。
 "江戸前の会”の発足当初には、その基本の部分はじゅうぶんに満たす構成員が揃いましたが、それを拡大し、運動継続の為に新しい人材を求める事に関しては、まったくの努力不足でした。会は問題拡大のためのイベントとマスコミの取材対応に追われ、一つが成功を見ると、それで疲れきってしまい、本来その成果であるはずの、問題を知って運動に参加を希望する”熱い思いの個人”の声を、拾いきれない実情でした。これはweb担当の私の責任でもあると、深く反省する部分です。
 それが、運動の拡大に対応しきれない人員不足の執行部の緩慢さを生み、現在でも引摺っている現状です。具体的には、「丸帆亭さん、気持ちはわかるけど、誰がその仕事をするんだ、みんな手一杯じゃないか!」と。特に若い世代の執行部への参加が不可欠と思っていた私には、自分の努力不足も含めて、大いに反省し、今からでも、熱い思いを持ち続けられる人材の確保が急務であると、江戸前の会には苦言しておきます。
 資金についても同じことで、この運動に賛同し、自分は動けないけど、カンパや会費ぐらいなら協力できると言う方は、もっともっと拾っていけたはずなのに、その努力を怠っている事実にも、反省をしなければなりません。資金不足の為に、どれだけのアイデアが闇に消えたか、もう一度考えるべきだと思っています。

 今後の運動の方向ですが、まず工事中止を訴える事が中心です、まだまだ現地の保全の可能性はありますし、生態系が回復可能な状況はしばらく続くと思います。
そこに全力を注ぐことが急務です。
しかしながら今後、「どこまで工事が進めば諦めるのか」という問いに答える事の難しさを思います。

諌早の故山下弘文さんは公共工事について「ダメでもともと、止まればおおごと。」と、あるいは「計画中も反対、工事中も反対、埋ってなお反対!」とおっしゃっています。個人個人の熱い思いは決して揺るがない事を基本としています。全国でこのような崇高な精神で自らを支え、運動を続けている方はとても多いのです。
 岐阜の徳山ダムの開発で水没する村の写真を撮り続けている増山たづ子さん、貴女の写真を見て何人が心奮わせた事でしょう。継続は本当に力です。

では、自分もそう出来るかと言うと、これはなかなか難問です。
「インターネット上で自分が出来る最大限の事を」と始めた運動ですが、現場には取材以外は行かない、会の集まりも休日以外は不参加という条件では、かなりの無理があります。
まして、Web発信の場合、アクセス数の維持ができないと、よく事業推進側に揶揄され「運動のための運動、反対の為の反対」と批判されるものになりうることも考えられ、更新情報の少ない昨今のWeb発信をとても不安に感じているこの頃です。

 今でも自分の持ち場を守る事で、少しでも継続できる運動を、と考えてもおりますが、今後必要なのはそういった個人の守りの姿勢ではないことはもちろん、私個人の問題でもないですよね。
それは、更に多くの方々との運動の連帯をつくり、この十六万坪の問題を基点とした、もっとより広い自然の保全に関わる運動の展開に繋げることが、
この運動に関わるすべての方々の今までの努力が、実り豊かなものとなる全てではないかと、そんな事を考えております。

簡単にとの前置きながら、長文になりました。
いままでの当サイトへのご支援の数々、本当に有り難うございます。
皆様、また、そんな呼び声が聞こえたら、すぐ始めるからね〜。

2000. 今世紀最後のクリスマスイブに  自室にて。    

                          -- 丸帆亭 --



2000.12/24 校了