呼吸

野坂政司


伸びる
全身が 伸びる
百会から
目に見えない通り道が
伸びる

私の中に
天空に向かい
大地の中心に向かう 
太い道がとおる

からだの深層に
からだの表層に
伸びる 波動が 伝わる

首を通り  
心臓を通り
腹を通り
会陰の底へと抜けていく

静寂の大音響が
からだを 包む

縮む 伸びる
 
縮む 伸びる

幻影の闇を捨て
会陰から
力の種子が生まれる

手のひらと 足の裏が
内と外でつながる

 
縮みながら 伸びる
伸びながら縮む

ことばの 粒が 動く   ことばの 波が 伝わる
こころの 粒が 動く   こころの 波が 伝わる 
 
伸びる 14の通り道を
力の 粒が 進む
力の 波が 進む

ここは
沸騰する  静寂点
通過する粒が 
通過する波が 
加熱される

砦は落ち
鎧は脱ぎ捨てられる
中心は
中心でなくなり
循環する力の潮流に溶解する

波動を内に込めて
軽やかに 動くものの
腰から下は
気の海に沐浴している

はじめに戻り

伸びる
全身が
伸びる



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