《くちごもる》

野坂政司



揺れる
揺れる

凍りつく
大地
地吹雪の


意志と
唇の
無限の距離

揺れる
揺れる

わたしと
あなたの
魂の回廊

わたしの意志が
あなたの耳を
欲しがるのだ

わたしの耳が
あなたの唇を
欲しがるのだ

わたしの
あなたの
息が
気道を駆け上り
歯先を
くぐりぬけながら
わたしの
あなたの
唇をそっと押している

わたしの網膜に
はりつく
あなたの唇

わたしの期待は
時間の風を飛び越えて
いまだない
あなたの
声の波動を浴びる

夢が通う
橋を求めて

響きのなかに
あなたが 生まれ
わたしが 生まれる



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