カビールの詩篇から
野坂政司
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- わたくしたちが
どのような神のことを語ってきたのか
わたしは知らない
呼びかけるものが
夕暮れに
大声で
聖なるものに呼びかける
どうしてだろう
もちろん 聖なるものが耳を傾けないわけではない
かれには
虫が歩くとき
その足で鳴る繊細な足首の飾りの音が聞こえる
おまえの数珠を 念入りに調べなさい
おまえの額に 奇妙な模様を描きなさい
おまえの髪をもつれさせ 長くして みせびらかしなさい
けれども おまえのなかの深いところに危険な武器があるとき
おまえに どのように 神がありうるだろう?
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学ぶ人よ
わかりやすい純化をしなさい
クリの木の内側に その種子があり
その種子の内側に
その木の花と クリと そして木陰とがある
それで
人のからだの内側には その種子があり
その種子の内側には また人のからだがある
火 空気 大地 水 そして空間
もしおまえがあの秘密のものを欲しくないのなら
こうしたものも おまえは手に入れることができない
考える人よ 聴きなさい
魂のなかにはないものについて何をおまえが知っているか
言ってくれ
水がいっぱいに入っている水差しを取って
それを水に入れなさい
そうなると
それは内側に水があり 外側に水がある
愚かなものたちが
からだと魂について再び語り始めるから
それに名前を付けてはならない
もしおまえが真実を欲しいのであれば
わたしがおまえに真実を語ろう
あの秘密の響き
あの本当の響きに耳を傾けなさい
それはおまえの内側にある
だれにも語られることの無い人が
その秘密の響きを自分だけで話している
そしてそのひとがそれをすべて創った人である
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わたくしたちに
聞こえていても
いなくても
無限の笛が鳴っている
わたくしたちが愛と言っているものは
流れ来るその響き
溢れ出たいちばん遠い端を
愛が越えるとき
愛は 智慧にたどりつく
ひろがるそのかぐわしさ
それには
終わりがない
それは
壁をとおりぬける
その旋律の形は
百万もの太陽のように輝いている
このヴィーナには真実の音がある
この響きを
おまえはどこか他のところで耳にしたことがあっただろうか
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- わたしは
水と波との違いについて
ずうっと考えてきている
高まりながら 水はやはり水であり
落下しながら それは水である
どうやって区別するのか
わたしにそれとなく教えてもらえるだろうか
だれかが 「波」 という言葉を 作り上げてしまったから
わたしが それを 水と 区別しなければならないのだろうか
わたしたちの内側には
至高のブラーフマがいる
その手の中を
星雲のすべての惑星が
数珠のように通り抜ける
そのひと続きの数珠を
ひとは輝く目で見つめなければならない
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- 35
- 聞きなさい
ともよ
このからだは
かれのダルシマ
かれが 弦をぴんと張ると
そこから 内宇宙の音楽が現われる
その弦が切れ
駒が倒れると
塵でできたこのダルシマは
塵に帰る
カビールは語る
ブラーフマが
そこから音楽を引き出せるただ一人のもの