● (No.214) WiSPでデジタル信号を送受信する時のコツ (2000年6月18日) ----------------------------------------------------------------- 地上のBBSでは、コネクト要求をすると混信がない限り、ほぼ100%近く送受信 が連続的に行えますが、衛星通信の場合は、過酷な宇宙条件の中を秒速 7km/s という高速で宇宙空間を飛ぶ移動物体を対象に、諸々の条件の関係で、極めて 信号の送受信が困難な状況にあります。 これらを考慮して、衛星FO-29を除く 他の諸外国のデジタル衛星では、信号の転送プロトコルとして、アップリンク には FTL0プロトコル、そしてダウンリンクにはブロードキャスト(Broadcast) プロトコルを採用しています。その代表的な衛星通信ソフトが WiSP です。 衛星通信では、今までの経験では衛星への信号の通りは 5%くらいに感じてい ます。一回のパスで、2〜3回、自局のコールサインが通れば良い方です。昼間 は、衛星が中国大陸や東南アジア上空を飛んでいる時は、信号の通りは極めて 悪いです。衛星が太平洋の上空を飛び、しかも衛星の AOS(見え始め)、または LOS(沈む寸前)の時しか信号が通らないと言っても過言ではありません。 実験 をする際には、衛星がこのように太平洋上を飛ぶ時を選んで実験を繰り返して みるとよいと思います。 また、周波数をドップラー偏移を考慮して設定し、変化させていくこともコツ の一つです。例えば、衛星KO-23の場合、アップリンク周波数は 145.900MHz、 ダウンリンク周波数は 435.175MHzで、ともに 9600bpsのFSKモードとなってい ますが、仰角の高いパスでは 最大で、2m帯 +/- 4kHz, 430帯 +/- 10kHz ほど のドップラー偏移が生じます。衛星のAOS時には アップリンク周波数は低い方 に、ダウンリンク周波数は高い方に設定します。LOS時は逆です。 具体的には 次のように無線機の周波数を設定し、連続的に変化させていきます。 Uplink Downlink AOS 145.896 435.185 145.898 435.180 TCA 145.900 435.175 145.902 435.170 LOS 145.904 435.165 では、送受信の実験です。自局から衛星へディレクトリ要求が、きちんと通る ことを確認します。この '通る' というのは、上で述べたように極めて確率的 に低い状況にあることに変わりありません。一度その要求が通ると、その瞬間 に、MSPE画面の左下の PB:欄に赤く自局のコールサインが表示され、衛星内部 のディレクトリ内にあるファイル群のヘッダーが、数キロバイトのレベルで、 自局のコンピュータ内(View-Dir)に取り込まれます。 ディレクトリ要求の場合は JE9PEL/D 、特定のファイルのダウンロード要求の 場合は、JE9PEL とコールサインのみが赤く表示されます。 ディレクトリ要求 のみ行いたい場合は、View-Dir画面上に取り込まれたファイル群の S欄の P、 あるいは A の表示を、G ボタン(grab 捕捉)を押して、G に変更して下さい。 もし、以前に自局のコンピュータ内に取り込んだ衛星のディレクトリが古くて 既に衛星のディレクトリから削除されてしまったファイルをダウンロード要求 している場合は、MSPE画面上の右上欄に NO-2 のように表示されます。このよ うな時は View-Dir画面上で、そのファイルの S欄に E と表示されているので 画面上で N ボタン(Never)を押して、N に変更して下さい。 特定のメールや画像ファイル等をダウンロードしたい場合は、View-Dir画面上 に取り込まれたファイル群の S欄を、P(priority) あるいは A(auto)ボタンを 押して、P または A に変更して下さい.(いくつでも可)。すると優先的にその ファイルのダウンロード要求が、MSPEにより自動的に開始されます。その衛星 のパスでダウンロードが完了しなかった場合は、次回以降のパスで、その続き を継続的にダウンロードの動作を MSPEは行います。 さて次に、いよいよアップロードの実験です。アップすべきファイルは事前に 所定の手順を踏んで、Massageg-Maker を用いて作成しておきます。 その際、 注意すべきことは、上で述べたように、衛星へは極めて厳しい送信状況にある ので、作成するファイルサイズは極力最小にして作ることです。実験段階では わずか数行の 300バイトほどのサイズで十分です。 アップロード用のファイルを作成するには、Message-Maker を用います。まず MSPE画面上で Message-Maker を立ち上げ、To:欄は、とりあえず ALL宛にして 衛星を指定して、Editボタンを押しエディタに移ります。メッセージの内容は 'Hello, de JE9PEL' などとします。エディタ上で保存し、いったんエディタ を終了します。 Message-Makerに戻ったら、Sendボタンを押して完了です。 衛星が飛来すると、MSPEは自動的にアップロードを開始します。アップリンク 信号が通った瞬間に、MSPE画面の右下の Open:欄に、赤く自局のコールサイン が表示されます。 そして、Open:欄の 1 または 2 の数字のいずれかが消えま す。これは、衛星側の受信機番号の 1 あるいは 2 が使用されたことを意味し ます。これから、アップロードが実際に開始されます。 上で述べたように信号の通りが悪いことが多いので、ここで何度もリトライを 繰り返すでしょう。それまでは、Upload-Status画面の全ての項目は 0 を表示 しています。そして信号が通った瞬間に、アップロードされたバイト数が下段 の Bytes Uploaded欄に表示され、あと 残りのバイト数が Bytes to Upload欄 に表示されます。ここで、もし衛星が LOSして沈んでしまった場合は、次回の パス以降、残りのバイト数を継続して自動的にアップロードを再開します。 作成されたファイルは 自局のコンピュータ内の衛星ディレクトリに、拡張子 .out の 'Je9pel01.out' のような、自局のコールサインと通番号が合体した ファイル名で自動的に保存されます。 そして、アップロードが 一部行われた 場合は、その拡張子が .pul に自動的に変化し、アップロードが完了した場合 は、その拡張子は .ul に変化して、その動作を終了します。 この衛星通信ソフト WiSP(最新バージョンは 3215)の入手方法と初期設定につ いては、次の URLを参照して下さい。(numbr189:新WiSP3214と初期設定手順) http://www.asahi-net.or.jp/~EI7M-WKT/numbr189.htm 《参考》 The 70cm frequency is a maximum doppler of about +/- 10kHz, and the 2m frequency is a maximum doppler of about +/- 4kHz. [Example J-Mode for KO-23] In case of elevation over 60 deg: Uplink Downlink AOS 145.896 435.185 145.898 435.180 TCA 145.900 435.175 145.902 435.170 LOS 145.904 435.165 In case of elevation about 30 deg: Uplink Downlink AOS 145.898 435.181 145.899 435.178 TCA 145.900 435.175 145.901 435.172 LOS 145.902 435.169 In case of elevation under 5 deg: Uplink Downlink AOS 145.899 435.177 145.900 435.176 TCA 145.900 435.175 145.900 435.174 LOS 145.901 435.173 [Example B-Mode for SO-35] In case of elevation over 60 deg: Uplink Downlink AOS 436.281 145.829 436.286 145.827 TCA 436.291 145.825 436.296 145.823 LOS 436.301 145.821 In case of elevation about 30 deg: Uplink Downlink AOS 436.285 145.827 436.288 145.826 TCA 436.291 145.825 436.294 145.824 LOS 436.297 145.823 In case of elevation under 5 deg: Uplink Downlink AOS 436.289 145.826 436.290 145.825 TCA 436.291 145.825 436.292 145.825 LOS 436.293 145.824
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