| もどる |

阿部謹也


日本におけるドイツ・ヨーロッパ中世史における重鎮。社会史のなかに法制史。政治史、経済史でふくめ、さらに民衆、特に賤民や職人などにも目をむけて、人と人の関係の世界にヨーロッパ宇宙を探ろうとした、独自の歴史観を構築。アジールについて考察が、ハーメルンの笛吹き男についての存在論証など業績は「ものすごい」の一言につきる。

  • 刑吏の社会史
    中公新書(1978年)

  • 中世の風景(上・下)
    中公新書(1981年)
    阿部謹也 網野善彦 石井進 樺山紘一
  • 中世の窓から
    朝日新聞社(1981年)

  • ヨーロッパを見る視角
    岩波書店(1996年)
  • ヨーロッパを読む
    石風社(1995年)

  • ハーメルンの笛吹き男
    平凡社・ちくま文庫
  • 中世を旅する人々
    平凡社
  • 中世の星の下で
    ちくま文庫
  • ヨーロッパ中世の宇宙観
    講談社学術文庫(1991年)

  • 甦える中世ヨーロッパ
    日本エディタースクール
  • 中世賤民の宇宙
    ちくま書房
  • 自分の中に歴史を読む
    ちくま書房
  • 西洋中世の男と女
    ちくま書房
  • 西洋中世の罪と罰
    弘文社
  • 世間とはなにか
    講談社現代新書


  • 刑吏の社会史

    中公新書(1978年)

    阿部歴史学の代表的な著作の一つ。

    賤民として差別された中・近世の刑吏。もともとは高貴な行為としての処刑から汚れたものとしのて刑吏の職業への大きな転換があったことを探ることは、単に法制史の分野だけでなく、民衆のなかにまで踏み込むことを意味する。キリスト教の広がりとゲルマン的文化の変化、国家の成立、都市の成立、ローマ法、それらの流れのなかで歴史の淵におちていった賤民=刑吏の実態を明らかにすることで、ヨーロッパ中世から近世にかけての人と人との関係が浮かび上がってくる。

    歴史を知るということは、歴史的な事件をつなぎあわせるのではなく、そこに生きた人、その人達の関係の変化を探ることである、ということを教えている。

    ヨーロッパ法制史 中世 近世 民衆史 賤民 刑罰 アハト(平和喪失 人間狼) ローマ法継受 都市法 ツンフト

    戻る


    中世の風景(上・下)

    中公新書(1981年)

    阿部謹也 網野善彦 石井進 樺山紘一

    日本を代表するヨーロッパと日本の中世歴史学者によりさまざまなテーマについて論じあっている。ヨーロッパ・日本の中世は異質なものではなく、不思議とも必然ともとれる符号がある。阿部アジールと網野無縁、近代以前には不思議なおおらかさ、豊かさが洋を問わず発見できることに素直に感動にた暖かさを感じる。

    ヨーロッパ 日本 中世 民衆 農業 売買 所有 法 裁判 家 アジール 異端 都市

    戻る


    中世の窓から

    朝日新聞社(1981年)

    中世ヨーロッパ、特にドイツにおける都市の成立は商工業、貨幣経済の隆盛であり、あらたな人間関係の規定の契機となった。すなわち貨幣を媒介として成立する新しい関係が形成されたのであり、それにより新たな倫理、世界観も同時に創出された。そこ都市には職人世界、祭、子供、さまざまな立場、身分の人がかさなりあいながら、生き生きとした世界が展開されていた。暗黒の中世は近代よりもダイナミックな転換期だった。

    これらの様子を人と都市に焦点をあてて探ることにより、ヨーロッパ文化の基礎部分である、人と人との関係の世界について明らかにしようとしている。

    ヨーロッパ 中世 都市 ニュルンベルク オイレンシュピーゲル ドイツ ハンブルク アジール 貨幣 ギルド ツンフト 石工 教会建築 聖遺物 贈与 ユダヤ人

    戻る


    ヨーロッパを読む

    石風社(1995年)

    1983年から1992年までの講演に加筆したもの。阿部歴史学が問題にしてきたことが時系列的に、講演というかたちでダイジェストになっている。テーマごとにすでに他に刊行物としてまとまっているが、それには含まれていない内容や、考え方も収められている。

    死者の社会史 中世賤民成立論 ハーメルンの笛吹き男 ヨーロッパ中世の個人と社会・ 男と女

    戻る


    ヨーロッパ中世の宇宙観

    講談社学術文庫(1991年)

    収められている論文、講演は他の書物として刊行されているが、それぞれを読み比べてみると時間的な変化とともに考え方に変化があるところに気がつく。氏の視点がだんだんと「世間」という枠組みに移って行くことを考えると、本書の端はしにその一端が見られる。

    ヨーロッパ 中世 都市 商人 刑吏の社会史 身分差別 賤民 ゲルマン社会における贈与慣行 ハーメルンの笛吹き男 トマス・プラター ユダヤ人