とある冬の寒い夜、とある場所で

ライブを終えたわたしたちは
ホテル替わりに空き家を貸して下さるかたのお家に宿泊。
歩いてそう遠くないところに
遅くまでやっているとてもいい銭湯があるというので
帰りはそこで車を降ろしてもらった。
いいお湯につかって、
そのままぽかぽか宿まで歩いて帰る算段。
ビルになっている銭湯の入り口をまたぎ
男女別の入り口でフナトさんとじゃあ後でと声をかけあい
女湯の受付にいくと人がいない。
おかしいなと思いながらも券が買えたので
服をぬいで浴場に入ったのだがなんと、掃除がはじまっていた。
しかしもうハダカになっちゃってるしすみませんすみませんで、
おばさんも仕方ないねえで、
超特急で入浴。
フナトさんもさぞかし大変だったろうなあと思いながら
閉館なので建物の外で待つ。
が待てどくらせどフナトさんは出てこない。
男湯はのんびり入れたのかなあ、
そう思いながら待っているうちにものすごく冷えてきた。
限界だ。
男湯の電気が消えた。
フナトさんは何処に?
あ、携帯携帯、とかけてみると通じない。
うあああ、寒いよう。
さらにこのタイミングで電池切れ。
宿までの道順を実はいい加減に記憶、
鍵はフナトさんが持っているし、さいあくだ。
とりあえず充電… コンビニ! と歩き始める。
車生活のまちは、歩くと角から角までがとても長い。
人が歩いていない。次の灯りがとても遠い。
泣きそうになりながら10分ほど歩いてやっとコンビニ発見。
電池を携帯に差し込みフナトさんに電話。出て。お願い。

「なに?」
フナトさん、全く慌てていない。
な、なにって、わたしは湯冷めしてコンビニを探し歩いてもう…

「GEOにおる」
ゲ、ゲオ?な、なんだそれは?
「あったやんか、宿の近くに」
し、しらんそんなもん。
「そやからGEOやんか」
だ、だからなんなのそのゲオは!!!

フナトさんはゲオにいた。
ゲオはツタヤみたいな店で
宿と銭湯のあいだくらいにあり、
男湯でハダカになる前にフナトさんは入浴を断られ
わたしはどうやら湯に入れたものと判断して
ゲオで待とうと考えたのであった。

人は同じものを見ても
見るところがそれぞれ異なる。
フナトさんは宿の次にGEOを覚え、
わたしの目にゲオは映らなかった。
というかわたしはいままで、
世の中にゲオがあることを知らなかった。
そして忘れていたのだ。
フナトさんがまちを
CD屋と本屋から覚えていくのを。

勉強になった。