ECL805cspp アンプ






  前章のCSPPアンプは、一応の完成を見

 たのですが、貴重なバイファラートランスの

 性能をさらに見極める為に、出力管を変更し

 てより高性能を狙ってみました。今回採用の

 球はECL805ですが6GV8の欧州名の

 同等管で、五極管ユニットの内部抵抗が低く

 1次側インピーダンスが本来は4kのOPT

 にも適していますし、さらに三極管ユニット

 も低rp管なので、電源電圧を下げても十分

 なドライブ電圧が得られるようでした。

 出力管を変更してみようと思ったのは、めのさんが出力管に6CW5、ドライバー管に6BQ7を使っ

てCSPP回路のシミュレーションをしたのですが、このような低rp管同士の組み合わせなら電源電圧

が多少低くてもドライブは可能なようでした。そこで複合管でもECL805/6GV8ならば、どちら

のユニットも上記の組み合わせと似た特性なので、14GW8のセットをECL805/6GV8に組み

直して、上記のシミュレーション結果を追試して見ようと思ったのでした。

 定数はめのさんの提示した値を参考にしたのですが、電源電圧は出力管の最大定格に余裕があったので

少し上げました。また配線の変更はなるべく少なくしたかったので初段はやはりカスコードとしたのです

が、シミュレーションに倣って2mA流すと2SK30では動作点が合わないので、これも2SK170

に変更しました。カスコードのグリッド電圧は14GW8の時より電源電圧が下がったので大幅に下げ、

バイアスのマイナス電源も出力管に合わせて倍電圧整流としています。さらにFETの変更により利得が

上がったので、NF量も大幅に増え負荷解放では発振してしまったので対策の補正を掛けています。

 という事で以下のような回路になりました。




 出力管は当初は18GV8を使おうと思ったのですが、電源トランスのヒーター巻線では電圧不足なの

で6GV8を使う事にしました。ただ最近はどういう訳か6GV8よりもヒーターの使い難い18GV8

の方が高値で売られているようで、どうにも不思議な値付けになっているようです。

 それに比べ2SK170は、秋月で10本一袋の300円でしたが、どうせ選別が必要なので最低でも

10本位は要りますから、とにかく安い買い物でした。

 話を戻してヒーターですが、この電源トランスのヒーター巻線は一つしかなく、ここからバイアス電圧

も取っているので、片側のヒーターは6.3Vだけアースから浮いてしまうのです。そこで電源トランス

から遠い右chを浮いている側として、左右のノイズ量を合わせようとしたのですが、それでも右chの

方が残留ノイズが少なかったので、残留ノイズの中身としては誘導ノイズが多いようでした。


諸 特 性


 前章のセットとの大きな違いは

中出力域での盛り上がりが無く右

肩上がりに素直に上昇している事

で、これは電源電圧が下がった分

だけアイドリング電流を多く流し

た成果ではないかと思います。

 高帰還のおかげで全体に歪率が

低いですしDFも十分で、自画自

賛ですが、音質的にもかなり良く

なったように思います。


無歪出力15.0W THD2.0% 1kHz

NFB  18.4dB

DF=12 on-off法1kHz 1V

利得 23dB(14.1倍) 1kHz

残留ノイズ 0.15mV


 次に周波数特性で、高域にかなりのピークが見られるように負荷解放の状態では発振を起こしてしまい

ました。そこで補正を入れてピークを抑えると共に発振を止めようと思ったのですが、初段プレートに入

れた積分補正以外では、例えば終段に入れるとかあるいはNF抵抗に抱かせた微分補正などでは、どうし

ても不安定な状態のままでした。さらに初段プレートに渡した22Pは、容量を増やしてもピーク周波数

が下がってくるだけで、どうしても小さいピークが残ってしまうのです。

 そこで、このピークを消す為にFETのドレインに820Pを渡してみたところ、以下のグラフのよう

に素直な高域特性を得る事が出来ました。その代わり最終的な帯域はやや抑えられていますが、それでも

10Hz〜110kHz/-3dBという広帯域な特性が得られました。




 最後に方形波応答をみると、補正無し波形のオーバーシュートはさほど高くはないのですが、負荷解放

では発振してしまうので、初段プレートに積分補正22Pを入れたところ、負荷解放でも発振しなくなり

波形のオーバーシュートもかなり低くなりました。




 それでも周波数特性のグラフのように小さなピークが残ってしまうので、微分補正を追加してNF抵抗

に22Pを抱かせてみたところ、負荷解放で寄生発振のような微少発振を起こしてしまいました。




 そこで微分補正は諦めてFETのドレインに820Pを渡してみたところ、下の波形のように負荷解放

でも整った波形が得られたので、これをもって最終特性としました。




 というような方形波応答だったので、完全にオーバーシュートを取る為には二重三重の補正を掛けなけ

ればならなかったのですが、そのときの回路は以下のような状態で赤丸のところが補正になります。


 しかし、諸先輩の助言では補正を掛け過ぎると音が悪くなるという事ですし、私の試聴でもそのように

感じました。さらに、これらの補正の効果を一つずつ考えてみると、例えば初段プレートを小容量のCで

接地するのは全段差動でよく見られる補正方法ですが、これは出力段のカソードにCを入れられない回路

故の苦肉の策で、CSPPではあまり意味のない補正方法です。また出力管のG1に入れる抵抗も電極間

容量の少ない五極管ですから、入れるなら10kΩ位入れないと効果がないと思います。しかし初段に補

正を入れているのに、出力段のカットオフも下げるような補正では余計に不安定になるだけで、実際に私

のセットでも逆効果のようでした。

 そこで本機では、補正は初めの回路図のように初段プレートに渡した積分補正だけとしました。その結

果、超高域での盛上りが少々残るのですが(F特図の緑色の特性曲線)、試聴してみたところ実際の音に

さほど影響はないようでした。


 雑 感

 このようにCSPPアンプとした場合に、補正に苦労するのはMT複合管を採用したからで、両ユニッ

ト間のシールドが五極管のカソードに接続されているのに、そのカソードがKNFによりアースから浮い

てしまいシールドの役目を果たさないからではないかと思います。当初のシミュレーションのように6B

Q7と6CW5の組み合わせで組めば、苦労せずに素直が特性が得られると思うので、もしも追試を計画

する場合には、こちらの組み合わせの方が良いと思います。




最 新 情 報


待望のバイファラー巻きトランスが染谷電子から発売となりました。

染谷電子のページへ

前章でも触れましたが、今回のECL805や6CW5、あるいは6L6GCとか6CA7など

通常のPPで負荷3.5KΩから5KΩ程度を最適負荷とする出力管に広く適合するトランスです。



 一つだけ注意が必要なのはCSPP用のOPTですから通常のPPには使えません。ただ上下の巻線を

並列にすれば、SEPP出力のマッチングトランスとしても使えると思うので(未実証)、これは少々勿

体ない使い方ですが、CSPPは荷が重いと思われる方でも後々の応用範囲は広いと思います。

 さらには、体裁の良いケース入りなのも嬉しい限りで、私の場合は自前のケースを用意したりしますが

取り付け金具の加工とか外装塗装とか、かなりの手間が掛かるので、このケース入りというだけでも値段

以上の価値があると思います。このようなOPTが他のメーカーから発売される事は今後も無いと思いま

すので、ぜひチャレンジしてみて下さい。



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14GW8 cspp アンプ



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