少女はグラマー・スクールに
(前頁より)
「同感ですねえ。ところで中高卒の就職はどうですか?」
「中卒の場合Oレベルを取れない者が約7割いる。かれらはブルー・
カラーになる。いくつかOレベルを取った者は、クラーク(事務員)に
なるのが多いようだ。
繰り返すようだが、高卒(内容では大学教養課程終了程度)で就職
する子も多い。その場合も、Aレベル、Oレベルの科目や数、すなわ
ち人物能力が評価されるのであって、どこの出身かというのはさほど
問題にならない。
『学校差はあっても学校差別はない』ということかな。
大卒就職者の指定校制度などというのは、英国民には理解しがたい
だろうね」
「なるほど。裕福な上流階級子女の通うパブリック、堅実な勉強好き
の通うグラマー、大衆的なのんびりしたコンプレヘンシブという棲み
分けは、Aレベル、Oレベルという科目別国家試験制度で、うまくカ
バーされているようですね。
ここらあたりは、いかにも実態に即した対応をする英国らしいですね。
先輩今日はいいお話を伺いました」
「じゃ、もうワンラウンド飲もうか」
「では私のターンで・・・」
二人は新しいジョッキをあげた。
「小百合さんが入学されたら、つぎは学校の様子など教えてください。
グラマー・スクールに通っている派遣社員の子女は少ないでしょうから」
「ああいいとも。今日はビジネス談義ではなく、小市民レベルの教育論
で愉快だったね。また飲もうよ」
「そろそろ御輿を上げましょう」
窓から見えるテムズ河の川面には、夜の帳が忍び寄っていた。
(数年をロンドンで過した憶良氏一家が、帰国後遭遇したのは日本の
公立中小学校教育の歪みや受験制度など、様々な問題であった。
が、それは神のみぞ知る。この時期、憶良氏はまだのんびりとビール
を飲んでいた)
これは25年(1/4世紀)前の話ですので、日英両国とも若干変化がある
かもしれません。少なくとも日本の公立中小学校の教育が成功している
は思いません。
UKの教育にも問題があるでしょうが、少数クラス制度や複線制度はもっ
と参考にしてよいのではないかと思います。
皆さんはどうお考えですか。
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