“ラモックス 〜ザ・スタービースト〜”
ロバート・A・ハインライン
(創元SF)
ジョン・トマス・スチュアートのペットは、
ご先祖が宇宙探検で見つけてきた、なんでも食べるラモックス。
最近、飼い主が外に連れていってくれないので退屈している。
そこで、飼い主が留守の隙にこっそりと(?)つまみぐいに出かけた。
当然、街はパニックになるが、それは騒ぎのほんの一端にすぎなかった。
宙務省の頭を悩ます一大事件が…?!
ハインラインのユーモア溢れる (ジュブナイル) SF です。
前半だけだと単純にジュブナイル (子供向け) っぽいですが、
後半はけっこう (初期の) ハインライン的要素が入ってきます。
もちろん、ストーリーは単純明解です。
宙務省次官キク氏のキャラクターがよいです^^。
邦題は、カバーの背表紙やカバーを外した本体表紙には“ラモックス”
とだけ書いてありますが、
カバー表や本体には、小さく“ザ・スタービースト”
の文字もあってややこしいです (カバー表のは位置的に見落としそうだし)。
ちなみに原題は“The Star Beast”です。
(4/20)
“イリーガル・エイリアン”
ロバート・J・ソウヤー
(ハヤカワSF)
アルファケンタウリからやってきたトソク族とのファーストコンタクトは順調だった。
しかし、殺人事件が起こった。
惨殺されたのは地球人、そして容疑者はトソク族の一人。
状況的にそのトソク族の男が犯人であることに間違いはないように思われる。
そして事件は (事件の起こったアメリカの) 法廷に持ち込まれた。
彼には名うての弁護士が付き、
人類と異星人との関係を左右しかねない前代未聞の裁判が始まった。
異星人の外交使節団の一人を裁判に掛けちゃうあたりがアメリカっぽいかも^^;
(ソウヤーはカナダの人ですが)。
裁判の経過は面白く読めますが、
最後のほうの急展開はちょっと唐突かなという気もします。
ソウヤーの作品を読むといつもそう思ってしまうように、これも、
面白く読めるんだけれども何か足りないような気がする、
という感じです。
(3/5)
ワンポイント
やっぱりそういう危ないものは迂闊に持ち歩かないほうが… ^^;。
“20億の針”
ハル・クレメント
(創元SF)
「捕り手」は犯人を追っていた。
犯人の宇宙船は地球へと突っ込み、
「捕り手」の船もその後をほぼそのまま突っ込んだ。
熱帯の群島の浅瀬に落ちた「捕り手」は宿主を見つけなければならなかった。
「捕り手」や犯人は、高度な知性を持つゼリー状の寄生生物だったのだ。
少年の身体を借りた「捕り手」は少年の協力を得て、
同じく人間の身体に潜んだであろう犯人を探そうとするが、
それは藁の山の中から針を見つけ出そうとするようなものだった。
1950年に書かれた「古典」SFミステリです
(ウィルスというものがまだよく解っていなかったりするところが時代を感じさせます。
もちろん、世界の人口が20億というのも^^;)。
探偵コンビの片方が少年なので、ジュブナイルっぽい感じでもあります。
犯人の潜伏先に関しては、ミスリーディングしつつ、
というか撹乱情報を散りばめつつ、しかもちゃんと伏線は張ってあります。
まあ、こんなもんかな、というところです。
話の筋とは関係ないのですが、訳文の古くささが凄まじいです^^;。
子供の言葉遣いが戦前の少年小説のようだし、
人名地名の音訳が今の普通の表記とは大きく違っています。
少年の名前 (愛称) がバブ→ボブというのはすぐ判りましたが、
アメリカ西海岸のシャートルというのは、
そんな街あったっけなと一瞬考えてしまいました
(はっ、「シアトル」かっ! ^^;;;)。
他にもありますが、略。
なお、邦題の“20億の針”というのは本文中で出てくる言葉ですが、
タイトルとしては“20億”というのはふっ掛け過ぎです^^;;
(ちなみに原題は“Needle”)。
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