確度表記について
±0.5% of Reading + 10mV
これは確度仕様の一例です。%のあとにいろいろ文字がかいてあってなんか複雑そうで、はじめてみる方には混乱するかと思います。ここでは、このような確度表記の内容について説明をします。なお、確度と誤差は、見方が違うだけで、数式上は同じ物です。誤差と確度に違いを言葉で説明すると
誤差 : 「測定値」と「真の値」の違いをいいます。
確度 : 製造者業者が明示した誤差の限界値をいいます。
となります。誤差は次式で求めることができ（JIS C 1002-1975で規定）、カタログに載っている確度は、この式の中の百分率誤差というものになります。
|
（１） |
絶対誤差 |
= |
[測定値] - [真の値] |
|
（２） |
誤差率 |
= |
（[測定値] - [真の値]） / [真の値] |
|
（３） |
百分率誤差 |
= |
（[測定値] - [真の値]） / [基底値] |
なお、製造業者が示す確度というのは、実際の回路設計の段階で、回路から理論上の最大誤差を計算し、その誤差をもって確度とします。そして実際に機器を組み立て、確度試験を行い、その結果が理論によって得られた最大誤差内に十分収まっていることを確認しているわけです（完成した製品のいくつかを実測して、その結果から確度を規定しているわけではありません。ちゃんと計算と実測の両方からみているのです）。
さて、最初に出した確度の表記、(3)式における基底値をどうするかによって、%の後の文字、% of Reading とか % of F.Sとか、% of 8divが変わってくるのです。
% of reading
テスタやデジタルマルチメータなどで表記されます。規定値に読み値を用いたもので、たとえば 1% of reading と表記されているのなら、
測定値が5Vとなった => 最大、5Vの1%である誤差50mVをもっている
測定値が1Vとなった => 最大、1Vの1%である誤差10mVをもっている
測定値が10mVとなった => 最大、10mVの1%である誤差0.1mVをもっている
となるわけです。ところがこの表記方法ですと、測定値が小さければ誤差も小さいということになりますし、0Vなら誤差は0ということにもなってしまいます。測定器を作る上では、残留ノイズなどの絡みもあり、どうしても読み値にかかわらず残留誤差というものを持ってしまいますから、これを考慮して、実際には
1% of Reading + 5 digits
というように表記します。これの意味は
[1% of Readingという誤差]＋[表示の一番下の桁において5digitは誤差]
ということです。3桁のデジタルマルチメータを例にしてみると、
1.23V という表示は、1% of Reading という規定で0.0123Vの誤差、それに加えて5digitsである0.05Vの誤差を持つことになり、結局 最大
1.23V * 0.01 + 0.05V = 0.0623V
の誤差を持つことになります。
なお、digitsではなく値そのものがかかれるときもあり
1 % of Reading + 10mV
という表記もあり、この場合、先の1.23Vを例にすると、
1.23V * 0.01 + 10mV = 0.0223V
が誤差ということです。
もちろん誤差は必ず持つというわけではなく、最大これだけの誤差が発生する可能性があるというだけですのでご注意を。
% of F.S
F.Sはフルスケールの略です。規定値に、このフルスケールの値を用い、主にレコーダなどの測定器で用いられる確度表記です。計算式は
誤差 = ( [測定値] - [真の値] )/ [フルスケール]
となります。しかるに、測定値のいかんにかかわらず誤差の値はフルスケール値で決まり、たとえば200mVフルスケールのレンジにおいて、
測定値が200mVとなった => 最大、200mVの1%である誤差2mVをもっている
測定値が100mVとなった => 最大、200mVの1%である誤差2mVをもっている
測定値が10mVとなった => 最大、200mVの1%である誤差2mVをもっている
と、測定値にかかわらず、誤差の値は変わりません。
% of Range
% of F.Sと似ておりますが、基底値にフルスケールではなくレンジの値を用いたものです。
困った問題
確度の計算方法はJISで規定されている計算式を用いているのですが、最終的にカタログに載せるとき、会社によって、ゼロ点と直流振幅確度を別規定にするか、いっしょくたにするか、±表示にするかしないかと、表記方法が異なるため、同じ性能であっても数字上では違いがでてくるという問題があります。そのため、測定器を購入しようとするとき、カタログスペックを比較しようとしても、このような表記方法の違いから、単純に数字だけを見比べただけでは正しい比較ができないという状態になっております。ちなみに、以下の仕様は数字の大きさは違えど全て同じ性能です。
① 直流確度 1% of F.S
② 直流確度 ±0.5% of F.S
③ 直流振幅確度 ±0.4% of F.S
ゼロポジション確度 ±0.1% of F.S