移住者支えるシニア会(オーストラリア) 
(メルボルン在住エッセイスト 佐藤真知子氏記)


 加齢社会 : 小子化:「ホットライン」:高齢化 
(日本経済新聞1998年1月4日朝刊より抜粋)



 オーストラリア 


 シドニーは、人口四百五十万の国際都市である。豪州全土に居住する日本人おの半分が、この 大都市で暮らしている。その数およそ一万人。気候が温暖で、四季を通じて激しい温度差もない。 そのシドニーで、日本からの長期滞在者や移住者、永住希望者などが中心になって「シドニー 日本クラブ」が発足したのが、十四年前。現在会員数は三百二十家族を数える大所帯だ。その中 に「シニア会があり、五十組を超える夫婦が会員になっている。 メンバーの半数は定年退職移住者である。日本にある財産を処分して、本格的にこちらに落ち 着く人も多く、仏壇を日本から持ってきたり、こちらに墓を買った人たちも珍しくない。殆ど みなが家を購入し、車を持って、落ち着いた生活をしている。

 

  定年退職者は、手持ちの資産と日本から送られてくる年金収入で生活をやり繰りしている。

  オーストラリアであh、車は日本よりは30%ほど高いが、家は郊外の住宅地なら半分の金額
で3−4倍の広さのものが手に入る。生活費は月十五万円ほどあれば夫婦二人余裕で暮らせるの
で、経済的に不自由はしない。

  ビザ(査証)は4年間有効だが、たいていの人が更新を重ねていく。

  最大の悩みは英語ができないことだが、それをいやしてくれるのがクラブの存在だ。発起人で
中心メンバーの一人である保坂佳秀氏は、いまクラブの福祉担当だ。保坂氏夫妻も移住して十七
年。「こちらの生活は夫婦単位でつき合う機会が多く、友人や仲間達のきずなも強まる」という。


 シニア会では月に1回例会を開いている。日本食のお弁当を食べて談笑したり、ゲスト スピーカーを招く。話のテーマは、医療、保険関係、銀行の手続き、投資方法、遺書の書き方、 老人ホームなど、身近な話題が多い。 日本と事情が異なる国に暮らしているから、こうした情報や知識はすぐに役立ち、知って いるだけでも心強い。 会員の平均年齢は、70歳に達していないので、みんな健康には自信がある。だが、中には 入院したり、手術を受けた人たちも数人いる。その際も必要とあれば、州政府が病院に通訳を 派遣してくれる。通訳を手配する時間がなくても電話通訳のサービスがある。多少とも英語が できれば、医師との会話にそれほど不便を感じない。 ただし高齢化が進むのはこれから。「今後が正念場です」と保坂氏は話している。


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