経済的自立、今から備えを 


 金融データシステム代表取締役 角川総一氏記 
(日経新聞1997年3月17日記事)


 老後の経済生活が不安なのは先行きが見通せないからだといわれる。であるなら、可能なかぎり 見通すための努力をすべきだろう。そのためのは家計の運営にも定量的アプローチが不可欠だ。 まず自分の経済活動の基盤をバランスシートのレベルで把握することから始めるといい。資産、負 債などの確認だ。  次に今後10ー20年にわたって自らの家計の予想される支出、収入ならびに貯蓄、負債金額 (残高)をとりあえずケイ線用紙やコンピューターの表計算ソフトに書き出すことだ。一年単位でい い。これでたとえば「7年後(私62歳、妻57歳)の年金の収入は270万円、支出は350万円、 年末の貯蓄額は2100万円、ローン残高は450万円」といった家計運営における最も基礎的な予 測値が得られる。


 もちろん収入についていえば、給与、退職金、厚生年金、個人年金保険、退職企業年金などの
別を、貯蓄については金融資産の種別に分けておくべきだろう。  この作業を通じ、現在加入中の個人年金保険の契約額が過剰であることに気付く人も多いだろう。 また逆に、医療保険特約を付加する必要性に思い当たる人もいるだろう。  いまや法人企業の財務運営が高度に計量化されているのに比べて、おおむね家計経済に対す る認識のあり方が「何となく不安」といった定性的なレベルにとどまっているのは奇妙なことだと 思う。  一方、今後政府が行う年金、健康保険など社会保障政策には依存できず、企業年金も万全では な。60歳までの雇用保障が怪しくなりつつあるなかでは、家計経済の自立が従来以上に求められ る。


 
つまり、家計マネーをいかにコントロールするかの能力が家計に求められる。にもかかわらず、我 がの家計の金融資産の62%が「ノーリスク・ノーリターン」ではなく、昨今の超低金利下では「ノ ーリスク・マイナスリターン」の預貯金に依存していることは何を物語るのか。  昨年10−12月期の全国消費者物価指数(総合)の前年比での上昇率は0.5%、今年1月は 0.6%の上昇と、銀行などの1−2%スーパー定期を上回ってきている。つまり、預貯金はすでに 目減りしつつあるのだ。  さらに4月以降、消費税率のアップだ、インフレ率はこれに1.5%程度上乗せされるだろう。一 方、預貯金金利は容易には上がらない。つまり今後しばらく実質金利マイナスが続く公算が大きい。




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